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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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84/105

84.全力です! ①

「「 止まれ!! 」」


 人ごみに向けて、火之浦先輩と初衣ねえの声が飛ぶ。

 目の前の人達は突然の大声に驚いている。

 聞き覚えのある陽碧学園の生徒達。

 普段あまり見ることのない生徒会長の鬼気迫る表情を見て驚いている。


「はっ、はっ、早すぎだ!」


 痛い脇腹を抑えながら走る。

 今すぐにでも休みたい。

 あの二人は全然止まる気配がないのに。


「ご、御形……」


 と、水無瀬先輩の声。

 声の方向を見ると、新樹先輩が水無瀬先輩を担いで走っている。

 

「み、水無瀬先輩。か、顔が青白いですよ……」

「と、途中まで走ったから……」

「凍里ちゃんは本当に体力がないですね~」


 新樹先輩は前の二人同様、余裕の表情。

 ニコニコしながら、俺に合わせて並走している。


「と、いうか、土浦は?」

「……こけた」

「助けてあげてください……」


 どっかで泣いてるんだろうな、あいつ。

 ついてきているのは、俺達三人だけ。

 生徒会組は来ていない。


「あ、蹴らないでお願い!」

「こっちよ!」


 輝くボールは人混みに揉まれ、縦横無尽に飛ばされていく。

 二人は屈んだまま全力疾走。

 俺達からはボールの行方を確認することができない。

 とにかく、二人の走る方向に付いていくしかなかった。


「陽乃女、全部蹴散らして」

「了解で~す!」

「警察沙汰になるんでやめてください!」


 二人が暴走しない様に、監視しなくては!


「でも実際、あれは本物なんですかね?」

「ほぼ偽物だろうね」


 即答だった。


「都市伝説同好会とかが噂を流したんじゃない?」

「この学園同好会がありすぎて犯人捜しは難しそうですね~」

「一応聞いておきますけど、青春同好会ではないですよね?」

「流石に」

「そんなことしませんよ~」


 本当かあ?

 まあ、火之浦先輩も水無瀬先輩も体育祭に躍起になってたし。

 もし青春同好会がやっていたとしたら。

 火之浦先輩は自分たちの罠に引っかかったことになる。

 それは馬鹿馬鹿しいし、この線はないか。


「案外、あの保健委員長かも」

「小夜鳴先輩?」

「そういうの、よく考えるやつだし」

「やつって」


 一応は先輩だし、委員長ですよ委員長。

 水無瀬先輩は小夜鳴先輩相手には結構無礼だ。


「ねえ、あれ生徒会長?」

「隣にいるのは、あの青春何とかって人じゃない?」

「何か追ってたみたいだけど」

「なんかキラキラのボールがあったぞ!」

「もしかして掲示板で噂になってた!?」

「えー、でもあれガセなんだろ? 先生達にも確認したって」

「でも、生徒会長が追ってるってことは」

「本当なの?」


 陽碧学園の生徒達は、目の前の事態に騒ぎ始めていた。

 関係のない通行人達も、何かのイベントかと言い始めている。


 そんな騒ぎが広がっていることも知らず。

 火之浦先輩と初衣ねえは輝くボールだけに集中していた。


 二人の走る速さが一段と早くなる。

 ボールは下り坂へと突入したからだ。


「この道って」

「この先、陽碧学園で~す」

「あのボール転がりすぎ……」

「ちょっと欲しいね」


 人ごみに放り込まれて、蹴り蹴られでどんどん遠くへ行ってしまう。

 しかも、運動神経の良い二人でさえ追いつけない速度で。

 あとどれくらいで、二人の決着がつくのか。

 決着がつく前に、俺の体力がなくなりそうだ。


「御形、顔色悪い」

「そりゃ、走りっぱなしですから……」

「頑張れ」

「ただ背中に乗ってる先輩に言われるのは癪です!」

「あなたが乗るのはお断りで~す」

「絶対乗りません!」


 新樹先輩に担がれるなんて悪い思い出が蘇ってしまうだろ。


「そ、そろそろ限界なんじゃない、火之浦美琴!」

「全然そんなことないわ! とっても楽しい!」

「もう! デスクワークのせいで体力落ちた!」

「言い訳なんて情けないわね!」


 ボールは人混みを突破して、二人も数秒後に人混みを潜り抜けた。

 観衆は、生徒会長と青春同好会の競り合いに興味を持ったようで。

 二人の向かう先へと進み始めていた。


 その中には大掛かりなカメラを持っている人もいる。

 恐らく広報委員会。


 二人の決闘が、時間が経てば経つほど規模が大きくなっていく。


「はあ、こ、これって反省室行きですかね……」

「あの風紀委員長のことだし、反省室行きにしそうだけど」

「その時は、生徒会長も一緒ですね~」

「前代未聞ですよね、それ」

「多分ね」

「あ!!!」


 そんな前代未聞の生徒会長が大きな声を上げる。

 ボールの転がる先には、陽碧学園を囲む海へと続く川がある。


「川に落ちたね」


 水無瀬先輩の言葉通り。

 二人は転落防止用の柵から少し身を乗り出して下を見ていた。

 川に落ちれば、ボールは海へと流されていく。

 どうやら、決着はここで決まったらしい。

 

「これぐらいの騒ぎだったら、反省室はないですかね……」

「ふう、疲れた」

「担がれていただけじゃないですか」

「いや~、私も参加したかったですね~」


 二人が足を止めたので、俺達三人も足を止めた。

 もうそろそろ限界だったから、ありがたい。


「だあ、はあ、ばあ! ど、どうなりましたか……」


 どこからか、芽出先輩がカメラを構えたままやってきた。

 さっきの水無瀬先輩並みに顔が青白かった。


「ど、どうしても、この目で見たかったので……」

「ああ、ボールが川に落ちたみたいで、二人止まってますよ」

「そ、それじゃあ、もう終わりですか!?」


 川を眺めながら呆然とし続けている二人を指さす。

 さっきからピクリとも動かない。


「うぅ……他の方がしっかり動画で残しておいてくれれば」

「さっきカメラとかを構えてた人がいましたけど」

「じゃ、じゃあ、一応は、はい、大丈夫ですね」


 自分の目で見たかったんだろうな、芽出先輩。

 

「まあ、しょうがないですよ。こればっかしはう……」

「「 とお!!! 」」

「はあ!!??」


 火之浦先輩と初衣ねえが川に飛び込んだ。

 何かに着替えてから、というわけでもなく。

 何か話し合いが行われていた、というわけでもなく。

 突然、二人が川に飛び込んだ。


「ス、スクープです!!」

「何してんだよ、あの二人!!」

「やっぱりリーダーは凄いね」

「ぷ、ぷぷぷ。もっと面白くなりましたね~」

「ちょっとは心配してあげて!」


 笑いを堪えている二人を置いて、俺は二人が落ちて行った川まで向かった。

 芽出先輩も、ヒイヒイ言いながら俺に続く。


 火之浦先輩と初衣ねえは、ビショビショになりながらも全力で川を進んでいる。

 

「冷たい! 冬じゃないのに、冷たいよ!」

「凄く気持ちいいわ!」


 二人とも、下半身全部が水に浸かっている。

 流れは穏やかだけど。

 それでも、溺れる危険は十分にある。


「諦めて、上がって来いよ!」

「伊久留、頑張るわ!」

「いっ君、任せて!」


 応援してねえって!!!


「別に上から追えば良かったじゃん!」

「それじゃあ、先に取られるんだもん!」

「伊久留、私頑張るわ!」

「命は大事にしてくださいよ!」


 俺の忠告は無視して、二人はボールの方へと向かっていった。


「しゃ、写真にしましょうか、動画にしましょうか!」

「元気っすね、芽出先輩」


 俺の隣にジッとついてくる芽出先輩は生き生きした表情だった。

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