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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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44.全力です!

「「 止まれ!! 」」


 人ごみに向けて、火之浦先輩と初衣ねえの声が飛ぶ。

 目の前の人達は突然の大声に驚いている。

 聞き覚えのある陽碧学園の生徒達は、普段あまり見ることのない生徒会長の鬼気迫る表情を見てさらに驚いていた。


「はっはっ。早すぎだ!」


 二人の後を追う俺は、痛い脇腹を抑えながら走っている。

 あの二人は全然止まる気配がないのに。


「ご、御形……」


 と、水無瀬先輩の声。

 声の方向を見ると、水無瀬先輩は新樹先輩に背負われていた。

 

「か、顔が青白いですよ……」

「と、途中まで走ったから……」

「凍里ちゃんは本当に体力がないですね~」


 新樹先輩は前の二人同様、余裕でいた。

 ニコニコしながら、俺に合わせて並走している。


「と、いうか、土浦は?」

「……こけた」

「助けてあげてください……」


 どっかで泣いてるんだろうな、あいつ。

 もしかしたら、姉妹で一緒にいるのかも。

 ついてきているのは、俺達三人だけ。

 生徒会組は来ていない。


「あ、蹴らないでお願い!」

「こっちよ!」


 輝くボールは人混みに揉まれ、縦横無尽に飛ばされていく。

 二人は屈んだまま全力疾走。

 俺達からはボールの行方を確認することができない。

 とにかく、二人の走る方向に付いていくしかなかった。


「陽乃女、全部蹴散らして」

「了解で~す!」

「警察沙汰になるんでやめてください!」


 二人が暴走しない様に、監視しなくては!


「でも実際、あれは本物なんですかね?」

「ほぼ偽物だろうね」


 即答だった。


「大方、どっかの同好会が噂を流したんじゃないかな」

「この学園同好会がありすぎて犯人捜しは難しそうですね~」

「一応聞いておきますけど、青春同好会ではないですよね?」

「流石に」

「そんなことしませんよ~」


 本当かあ?

 まあ、火之浦先輩も水無瀬先輩も体育祭に躍起になってたし。

 もし青春同好会がやっていたとしたら、火之浦先輩は自分たちの罠に引っかかったことになる。

 それは馬鹿馬鹿しいし、この線はないか。


「案外、あの保健委員長かも」

「小夜鳴先輩?」

「そういうの、よく考えるやつだし」

「やつって」


 一応は先輩だし、委員長ですよ委員長。

 水無瀬先輩は小夜鳴先輩相手には結構無礼だな。


「ねえ、あれ生徒会長?」

「隣にいるのは、あの青春何とかって人じゃない?」

「何か追ってたみたいだけど」

「なんかキラキラのボールがあったぞ!」

「もしかして掲示板で噂になってた!?」

「えー、でもあれガセなんだろ? 先生達にも確認したって」

「でも、生徒会長が追ってるってことは」

「本当なの?」


 陽碧学園の生徒達は、目の前の事態に騒ぎ始めていた。

 関係のない通行人達も、何かのイベントかと言い始めている。

 そんな騒ぎが広がっていることも知らず、火之浦先輩と初衣ねえは輝くボールだけに集中していた。


 二人の走る速さが一段と早くなる。

 ボールは下り坂へと突入したからだった。


「この道って」

「この先、陽碧学園で~す」

「あのボール転がりすぎ……」

「ちょっと欲しいね」


 人ごみに放り込まれて、蹴り蹴られでどんどん遠くへ行ってしまう。

 しかも、運動神経の良い二人でさえ追いつけない速度で。

 あとどれくらいで、二人の決着がつくのか。

 決着がつく前に、俺の体力がなくなりそうだ。


「御形、顔色悪い」

「そりゃ、走りっぱなしですから……」

「頑張れ」

「ただ背中に乗ってるだけじゃないですか!」

「あなたが乗るのはお断りで~す」

「絶対乗りません!」


 そもそも、新樹先輩に担がれるなんて悪い思い出が蘇ってしまうだろ。


「そ、そろそろ限界なんじゃない、火之浦美琴!」

「全然そんなことないわ! とっても楽しい!」

「もう! デスクワークのせいで体力落ちた!」

「言い訳なんて情けないわ!」


 ボールは人混みを突破して、二人も数秒後に人混みを潜り抜けた。

 人混みの中にいた生徒達は、生徒会長と青春同好会の競り合いに興味を持ち、二人の向かう先へと進み始めていた。

 その中には大掛かりなカメラを持っている人もいる。

 恐らく広報委員会。


 二人の決闘は、時間が経てば経つほど規模が大きくなっていく。


「はあ、こ、これって反省室行きですかね……」

「あの風紀委員長のことだし、反省室行きにしそうだけど」

「その時は、生徒会長も一緒ですね~」

「前代未聞ですよね、それ」

「多分ね」

「あ!!!」


 そんな前代未聞の生徒会長が大きな声を上げる。

 ボールの転がる先には、陽碧学園を囲む海へと続く川があった。

 初衣ねえが驚いた理由は、それだけ見えれば十分わかった。


「川に落ちたね」


 水無瀬先輩の言葉通りだ。

 二人は転落防止用の柵から少し身を乗り出して下を見ていた。

 川に落ちれば、ボールは海へと流されていく。

 どうやら、決着はここで決まったらしい。

 

「これぐらいの騒ぎだったら、反省室はないですかね……」

「ふう、疲れた」

「担がれていただけじゃないですか」

「いや~、私も参加したかったですね~」


 二人が足を止めたので、俺達三人も足を止めた。

 もうそろそろ限界だったから、ありがたい。


「だあ、はあ、ばあ! ど、どうなりましたか……」


 どこからか、芽出先輩がカメラを構えたままやってきた。

 さっきの水無瀬先輩並みに顔が青白かった。


「ど、どうしても、この目で見たかったので……」

「ああ、多分ボールが川に落ちて……」

「そ、それじゃあ、もう終わりですか!?」

「二人も呆然としているので」


 川を眺めながら呆然とし続けている二人を指さす。

 さっきからピクリとも動かない。


「うぅ……他の方がしっかり動画で残しておいてくれれば」

「さっきカメラとかを構えてた人がいましたけど」

「じゃ、じゃあ、一応は、はい、大丈夫ですね」


 自分の目で見たかったんだろうな、芽出先輩。

 

「まあ、しょうがないですよ。こればっかしはう……」

「「 とお!!! 」」

「はあ!!??」


 火之浦先輩と初衣ねえが川に飛び込んだ。

 何かに着替えてから、というわけでもなく。

 何か話し合いが行われていた、というわけでもなく。

 突然、二人が川に飛び込んだ。


「ス、スクープです!!」

「何してんだよ、あの二人!!」

「やっぱりリーダーは凄いね」

「ぷ、ぷぷぷ。もっと面白くなりましたね~」

「ちょっとは心配してあげて!」


 笑いを堪えている二人を置いて、俺は二人が落ちて行った川まで向かう。

 芽出先輩も、ヒイヒイ言いながら俺に続いた。

 火之浦先輩と初衣ねえは、ビショビショになりながらも流れていくボールを追いかけるために全力で川を進んでいる。

 

「冷たい! 冬じゃないのに、冷たいよ!」

「凄く気持ちいいわ!」


 幸い、深さはそこまででもない。

 腰まで水は浸かっていない。

 でも、こけたりとかしたら、本当に危ない。


「諦めて、上がって来いよ!」

「伊久留、頑張るわ!」

「いっ君、任せて!」


 応援してねえって!!!


「別に上から追えば良かったじゃん!」

「それじゃあ、先に取られるんだもん!」

「伊久留、私頑張るわ!」

「命は大事にしてくださいよ!」


 俺の忠告は無視して、二人はボールの方へと向かっていった。


「しゃ、写真にしましょうか、動画にしましょうか!」

「元気っすね、芽出先輩」


 俺の隣にジッとついてくる芽出先輩は生き生きした表情だった。


「御形はもう諦めたの?」


 後から新樹先輩に担がれてやってきた水無瀬先輩。

 川を下る二人の速さに合わせていたため、いつのまにか全力疾走から早歩きに切り替わっていた。


「俺の話全然聞かないですもん」

「まあ、それで止まるなら、リーダーじゃないよね」

「助けましょう」

「え、なんで?」

「だって、川とか危ないですよ……」

「こ、この川は海に近づくほど深くなっていきますから、危険ですよ」

「ほら、三年生の先輩がこう言ってますから!」

「一応準備はしておこうかな、陽乃女」

「分かりました~」


 新樹先輩はスマホを取り出して、どこかに連絡を始めた。

 

「ハプニングに対しては、これで対処できると思う」

「あとは、美琴ちゃんの雄姿を見届けましょうか~」

「ふ、二人がいるなら、信じますけど……」

「お、泳ぎ始めましたよ!!」


 芽出先輩の言葉通り、川の中の二人が水泳を開始。

 

「流石に歩きじゃ追いつけないよね」

「お、泳ぎとても上手ですね……」


 二人の達者なスイミングを見て、観客は大きな歓声を挙げた。

 俺達の数メートル後ろでは、通行人達がスマホやカメラを片手に二人の戦いを見守っていたのだ。

 

「「 いける!! 」」


 二人が顔を水面から出した時、同時に大声を挙げた。

 観客も湧く。

 二人が泳ぎ、ボールまであと数センチというところまで辿り着いていた。

 

「「 あぁ!? 」」


 が、すぐに二人は素っ頓狂な声を出していた。

 泳ぐのを止めて、川の流れに身を任せている。

 

「何かあったんですか?」


 うしろの観客に目を向けていたから、何が起こったのか分からない。


「鳥が、ボールを持ってった」

「え?」

「だから、鳥が、ボールを、持ってった」


 水無瀬先輩が指さす先には、口先にボールを加えた鳥が飛んでいた。

 火之浦先輩と初衣ねえの視線の先も、その鳥だった。


「と、鳥さんが早すぎて写真が撮れません……」

「まあ、これでようやく終わるのかな……」

「どうだろうね」


 水無瀬先輩の不穏な言葉。


「面白い展開ね!」

「なんなの、あのバカ鳥は!」

「陽乃女なら、撃ち落とせるかも!」

「ふん。じゃあ、私はあの鳥を追うからね!」


 初衣ねえが、川から岸に移動し、岩の壁を上へ登り始めた。


「まだやるのね、分かったわ!」


 火之浦先輩も負けじと、反対側の岩壁を登り始めた。

 どうやらまだ終わっていないらしい。


「陽乃女!」


 壁を登りながら、新樹先輩の方を向いて声をかける。


「あの鳥を撃ち落として!」

「分かりました~」

「陽乃女。近くに隠し場所があるから、そこに何かあるかもしれない」

「じゃあ、まずはそこ行ってきま~す」


 新樹先輩は水無瀬先輩を降ろして、どこかへ行ってしまった。

 水無瀬先輩はスマホを取り出し、誰かに電話をし始めた。


「萌揺? 生きてる?」


 電話の相手は、土浦だ。


「え、なに? 死にそう? いいから、今私がいるところの近くに自転車があるかどうか探してくれる? そう、同好会用に取っておいたやつ。え、まだきついから時間かかる? ダメ、早急に探して早急に連絡して」


 凄い早口で土浦に指示を出して、一方的に電話を切った。

 水無瀬先輩の声しか聞こえない会話だっただけど、土浦がまだ回復していないことが伺えたのだが。

 それでも水無瀬先輩にゴリ押しされていた。

 少し可哀そうだった。


「火之浦先輩に自転車を貸すんですか?」

「鳥を撃ち落とすために回り込まないといけないから、移動用の乗り物が欲しいだけ」

「新樹先輩だったら、余裕で追いつけそうですけど」

「持ってきた機械の操作は私がいないと無理だから」


 と、すぐに水無瀬先輩の電話に着信が掛かってくる。

 相手はどうやら土浦らしく、近くにある自転車の場所を教えてくれたらしい。


「というか、色んなところに色んなもの隠してますね」

「教えてあげないから」


 俺も一応青春同好会の一員なんですけどね。

 水無瀬先輩の後を追っていくと、すぐに自転車がある場所へとたどり着いた。

 立ち並ぶ建物の複雑な間を抜けた先、どこの誰かの物かも分からない倉庫の中に大切に保管されていた。

 

「古い。壊れそう。これはもう廃棄かな」

「これ本当に使っていいやつなんですか?」

「ほら。文句言わずに。漕いで」

「そして、力仕事は俺なんですね」


 置かれていた自転車は一つしかなかったから、仕方ないか。

 というわけで、後ろに水無瀬先輩を載せて自転車で移動開始。

 さっきの川沿いに出てみれば、火之浦先輩も初衣ねえも観客も川が流れる先へ結構移動していた。


「ほら、全力全力」

「はあ、はあ、くそ!!」


 水無瀬先輩に煽られながら、観客の波を掻い潜り火之浦先輩達の方へ近づいていく。


「あ、新樹先輩は……?」

「あとで合流する。陽乃女の位置は把握しているから」

「後ろでスマホを弄ってるのはそういう理由ですか」

「なに? 遊んでると思ったの?」


 水無瀬先輩はスマホから視線を外さずに、俺に何度か指示を送ってくる。

 川の道を外れたり、元に戻ったり。

 少し時間が経った後に、新樹先輩が建物の囲いを飛び越えてやってきた。


「陽乃女、こっち」

「了解で~す!」


 新樹先輩がこっちに近づいてくるなり、ジャンプして自転車の後ろ、水無瀬先輩が座っている部分に見事に着地。

 もちろん、その衝撃は運転手の俺に伝わって。


「ちょ、ちょお!!! 転びますから、転びますからあ!!!」

「ナイスバランス、陽乃女」

「曲芸だっていけるんですよ~」


 水無瀬先輩はできる限り俺に密着して、新樹先輩は俺の両肩に手を置いて立っている。


「陽乃女、見える?」

「ん~、スコープ使えばなんとか」

「御形。もっと早く。安定させて走って」

「む、無茶言いますねえ!!」

「 リーダー!! 」

「のああ!!」


 背中から拡声された水無瀬先輩の声が響いた。


「 今から落とすから、しっかり見てて! 」


 水無瀬先輩の言葉に、火之浦先輩はこちらを振り返ってOKサインを出した。

 

「小型拡声器。便利でしょ」

「必死で漕いでるんで、急に大きな音出すのやめてください!」

「あの~、安定した走りでお願いしますね~」

「い、痛い痛い……肩を叩かないでください……」


 俺が全力で自転車を漕いでいる間。

 狙撃手新樹と参謀水無瀬の作戦会議が進んでいく。

 「もっと上」だとか「もう少し距離が必要」だとか「もっと安定した土台が欲しい」だとか色んな言葉が聞こえてきていた。


「うん、そろそろいけそうだね」

「は~い。頑張りますよ」

「御形。踏ん張って」

「は、はい!!」

「打ちま~す!!」


 新樹先輩の一声の直後、さっきの水無瀬先輩の拡声器以上の轟音が背後から響いてきた。

 そして、俺が全力で保っていたバランスが一気に崩れ去った。

 もちろん俺は自転車から投げ出される。

 空中でスロー再生される視界の中で、火之浦先輩と初衣ねえがこちらに顔を向けていることが確認できた。

 さっきの音も結構大きかったから、それでこっちに気を取られているのかもしれない。


「いでええ!!!!」


 痛みが走ったのは、俺の両足だけだった。

 投げ出された後に、奇跡的に直立で着地できた。

 というわけでもなく、


「間一髪ですね~」


 俺は今新樹先輩の左腕でお腹を支えられている。

 上半身は宙に浮いたままで、下半身の膝下が地面についている状態だった。

 水無瀬先輩は新樹先輩の背中にちょこんと担がれていた。

 新樹先輩は自転車のバランスが崩れた直後、足下にいた水無瀬先輩を背中に持っていき、自転車を蹴って宙を飛び、傷一つなく無事に着地をして見せた。


「ん。完了」


 水無瀬先輩は目の前の空を眺めながら、そう答えていた。

 さっきボールを加えていたであろう鳥は、フラフラしながらどこかへ飛び去ろうとしていた。

 恐らくボールは鳥から離れて、どこかへ落下したと思われる。


「急ぎましょ~」

「のわッ!」


 新樹先輩は高校生二人を持ったまま、道の先を走り始めた。

 気づけば、戦いの場所は陽碧学園に続く橋の前までやってきていた。

 道の奥では、ずぶ濡れ二人組がまだ走り続けている。

 

「これ、不味くないですか?」


 フラフラと飛び去って行く鳥を見て、良くない未来が視えた。

 これ、ボールの行く先。


「海に落ちてる可能性が高いね」

「まあ、大丈夫ですよ~。濡れていますし~」

「流石に海に落ちるのは不味い気がしますよ!」


 波とかに攫われて、行方不明になったりしたらどうするんだ。


「そのために、陽乃女に準備させてたんだから」

「準備はばっちりですよ~」

「え?」


 二人の落ち着いた表情を見た直後に、俺の予想通り二人は陸地と海を隔てる柵に足を置いていた。

 

「ここが正念場なんだから!」

「さあ、これで私の勝ちね!!」


 躊躇することもしなかった。

 二人は思い切り柵を蹴って、海の中へと飛び込んでいった。

 綺麗な放物線を描いて、ドボンと澄み切った飛び込み音が聞こえてきた。


「萌揺はまだ?」

「もう来ていると思いますよ~」


 慌てふためく俺とは違い、二人は淡々と何かの準備を始めていた。


「ちょお!! 諦めろよ!」


 俺はすぐさま柵の方に駆け寄り、二人を呼び止めた。

 まあ、聞くはずもなく、物凄い速度で一点に向かって進んでいる。

 偶然にも、そこまで波は強くないから、安全だとは思うけど。


「そこまでするかね」


 今にも「うおおお!」と聞こえてきそうなぐらい、ド迫力のある泳ぎを見せる。

 気づけば、周りにはたくさんの観客達が集まっていた。


「うちの会長は何をしてるんですか……」


 その中には大導寺先輩の姿もあり、呆れている様子だった。

 こちらに近づいてきて、俺に状況確認を求めた。

 ある程度状況は理解していたのであろうが、目撃者である俺に話も聞きたかったのだろう。


「まさか、会長がここまで滅茶苦茶だったなんて……」

「ご、ごめんなさい……」

「御形君の責任ではないですよ。多分、あの会長を制御できる人なんていないんでしょう」


 と、水無瀬先輩達がこちらにやってくる。


「どうも」

「苦労人副会長」

「あの、変なあだ名はつけないでください」

「安全面は確保しているんで、心配はご無用ですよ~」

「はあ、青春同好会の方々ですのに、そういうことも心配するんですね」

「リーダーが死なれたら困るからね」


 土浦が青白い表情でゼエゼエ言いながら、荷物が積まれた荷台を持ってきていた。


「……まずはそちらの一年生を心配されては?」

「うちの一年はそんなやわじゃないから」

「ご、御形……て、手伝って」

「お、おう」


 あまりにも限界顔だったので、手伝うことにした。


「ふふ、でも、必要ないかもしれないわよ」


 突然現れた小夜鳴先輩が、崖下の方を指さしながら笑っている。

 全員でそちらを見下ろすと、火之浦先輩と初衣ねえが海に浮かびながら口喧嘩をしていた。


「私の方がさきに手に取ったんだから、私のでしょ!!」

「違うわ! 絶対私が先に取った!!」

「現に今ボールを握っているのは私でしょ!」

「私が取った後に、無理矢理手を捻じ込んだでしょ!」

「誰かが撮った動画で状況を確認すれば、私が勝ちだって認めるわ!」

「望むところよ!」


 沢山の人に見られているというのに。

 二人はボール一つを巡って、滑稽な言い争いを続けている。


「ちなみに、大量得点を獲得できるボールがあるというのは嘘よ」

「先生方にも確認を取ってあります」

「……本当に何だったんだよ」


 仲間達に引き上げられながらも、喧嘩を続ける二人に。

 俺はとりあえず「お疲れ様」と伝えた。

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