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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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82/105

82.体育祭、最終戦です!

「ふわあ」

 

 大欠伸。

 連日運動し続けているおかげで、よく寝れている。

 部屋に到着するなり、すぐにベッドにダイブ。

 アラームをセットすることもなく、そのまま就寝。

 しかし、いつも設定する時間よりも早く起きることができた。

 

 しかも、超すっきり。

 運動は大事とよく親に言われたが、それを身に染みて実感していた。


「まだ時間はあるけど、二度寝する気分でもないな」


 そのまま起きることはなく、ベッドでゴロゴロする選択をした。

 支度とか、朝食とかやることはあるんだけど。

 今は、そういう気分ではない。 


「伊久留! おはよう!」

「いっ君! おはよう!」


 そういう気分にさせる元凶が、朝早くからこんにちは。


「三日連続寝起きに二人の声を聞いたら、頭がおかしくなるよ……」

「だから、いっ君は私を起こしに行くって」

「リーダーである私の役目よ!」


 『体育祭で勝った方が、御形伊久留を一日独占できる』

 『それまで、御形伊久留と二人っきりになるの禁止』

 二人の間で交わされた約束。

 そのせいで、俺はこの状況に巻き込まれていた。


「二人は一体いつ起きたの?」

「「 一時間前ぐらい! 」」

「息ピッタリね」


 あー、もう。

 頭が痛くなってきた。


「……準備するから、その辺座っといて」

「分かったわ!」

「いっ君、なんか顔色悪くなってるけど大丈夫?」

「初衣ねえが座ってくれれば治るよ、多分ね」


 こういう時、火之浦先輩は素直だよな。

 初衣ねえは心配性だから、まだそわそわしてる。

 

「というか、よく三日連続も休まずこれたよね」

「体調管理はいつも万全よ!」

「いや、体調はどうでもよくて。飽きないね、って」

「伊久留と会えるのに、飽きるなんてことは絶対にないわ!」

「あ、え、そ、それはあ、どうも……」


 満面の笑みで。

 大きな声で。

 当たり前かのようにそんなことを言われると、照れる。


「わ、私も同じ気持ちだから!」


 火之浦先輩に先を越された初衣ねえ。

 少し悔しそうに、焦った表情で続いた。


「それは知ってるよ、初衣ねえ」

「もう! いっ君、好き!」


 初衣ねえは立ち上がり、俺に抱き着こうとしてくる。

 軽く躱しながら、体育祭最終日の準備を始める。

 

「何か飲みたいわ!」

「水かコーヒーしかないですよ?」

「私がコーヒーいれるよ」

「ありがと!」

「コーヒーはこ……」

「キッチン下の棚でしょ? 分かってるよ」

「……?」


 なんで知ってるんだろう。


「あ、この漫画読んでもいいかしら!」

「構いませんよ」

「わーい!」


 実家から持ってきた、昔から読み続けている漫画。

 ラブコメ漫画だけど、火之浦先輩ってそういうのも見るんだな。


「面白いわ!」

「その漫画、最初結構面白いですよね」

「いっ君も、コーヒー飲む?」

「そうだな。ちょっと飲もうかな」

「じゃあ、いつもより少なめにしとくね」

「ありがと」


 トイレに向かい、今日の運動着に着替えて戻る。

 その時にはテーブルの上に、コーヒーが三人分用意されていた。


「ありがと」

「コーヒーも美味しいし、漫画も面白い! 最高の朝ね!」

「汚さないでくださいね、漫画」

「今度私がお菓子買ってくるわ!」

「なんでまた来る方向で話してるんですか?」


 火之浦先輩と初衣ねえの約束があるから、こうなっているわけで。

 体育祭が終われば、気にする必要もないと思うんだけど。

 朝からこの二人がやってくるのは勘弁してほしい。


「朝じゃなくて、放課後に来れば迷惑じゃないよね?」

「迷惑だよ」

「でも、昔はよく家に遊びに行ってたじゃない?」

「家と部屋は違うだろ……?」

「別に掃除とかしてあげるのに」

「してほしくないから、部屋に上げたくないんだよ」


 色々と汚れている時に、突然部屋にやってきたら変な声でそう。


「まるでお母さんね!」

「かっちーん! 火之浦美琴、それは禁句よ禁句!」

「あ、二巻が本棚にないわ!」

「あれ。もしかしたら、ベッドの下とかかな?」

「ちょっと聞きなさいよ!」

「火之浦先輩、読むスピード早いですね」

「面白いもの!」


 火之浦先輩は二巻目を読み始めた。

 俺は一巻目を綺麗に本棚に戻した。

 二人に無視された初衣ねえは、頬を膨らませている。


「ふん! 私も読むから、それ取って!」

「ええ……」


 本棚に戻す前に言ってくれよ。


「ほら」

「……ありがと」


 火之浦先輩と初衣ねえは漫画に没頭し始める。

 さっきとは打って変わって、部屋は静かになった。

 初衣ねえのコーヒーは、いつも淹れている俺のものより美味しい気がする。

 さて、俺は何をしようかなっと。


――ピンポーン。


 チャイムが鳴った。

 これは、寮の玄関のところからのチャイムだろうか。

 俺に朝から会いにくるなんて、火之浦先輩と初衣ねえしかいない。

 ということは、このチャイムは二人の関係者か?

 青春同好会だったら、こんな律儀なことはしない。

 生徒会の大導寺先輩だと予想する。


「御形君。会長いますか?」


 やっぱり、大導寺先輩だ。


「会長のお迎えに上がりました」

「ご苦労様です」

「恐らく、会長は部屋から出ようとしないと思うので、私が直接そちらに向かってもよいでしょうか?」

「大丈夫ですよ、開けますね」


 寮の入り口のオートロックを解除する。

 大導寺先輩の後ろに、小夜鳴先輩と武見先輩の姿があった。

 昨日放課後仕事がなかったから、今日は朝から仕事なのだろう。


 初衣ねえは漫画に集中していて、大導寺先輩達に気付いていないみたいだ。

 都合がいい。

 もしかしたら、初衣ねえ隠れようとするだろうし。

 大人しくしておいてもらおう。


――ピンポーン。


 次は部屋の前のチャイム。

 大導寺先輩達?

 にしては、速すぎないか?


「遊びに来た」

「美琴ちゃん、いますか~?」

「ごら、御形! お姉ちゃんを返せ!」


 扉を開けると、そこにいたのはいつもの愉快な仲間たちだった。

 

「すみません。新聞は間に合ってます」

「疲れて、脳でも溶けた?」

「あ、美琴ちゃんいました~」

「お姉ちゃん、おはよう!!!」


 愉快な仲間たちはズカズカと部屋に入り込んでくる。

 大導寺先輩達とは違い、この人達オートロックを自力で突破してきたのか。

 ダメだろ。 


「ちょっと待ってくださいって」

「なに? リーダーもいるし、いいでしょ」


 水無瀬先輩が指さす方向。

 火之浦先輩と新樹先輩が仲良く抱擁を交わしていた。

 初衣ねえは、まさかの状況に困惑している。


「ちょ、ここがあんたらのたまり場なの!」

「いや。普段は萌揺の部屋」

「いっ君! 女の子の部屋に行くなんて許さないよ!!」

「どっちにしろ、怒っちゃうんですね~」

「お姉ちゃん、パン買ってきたよー」

「ありがと!」

「朝からリーダーと生徒会長が一緒にいるの面白い」

「仲がいいんですね~」

「よくない!」


 初衣ねえと青春同好会の口喧嘩。

 というより、青春同好会からの一方的な弄りが始まった。

 直後、二度目のチャイムが鳴る。


「開けたくねえ……」

「いっ君! まさか青春同好会以外の女の子と会ってるの!」


 そう勘違いする理由も分かるけど。

 初衣ねえは少し黙っていてほしい。


「じゃあ、初衣ねえが出てくれるか?」

「いっ君を奪おうとする奴がどんな顔か拝んでやるわ!」


 ずかずかと玄関まで向かっていく初衣ねえ。


「いっ君! 助けてぇ!!」


 だが、ものの数秒で俺のところまで助けを求めてきた。


「連れていかれるよぉ~!!」

「それが仕事だろ、生徒会長」

「いっ君、いっ君!!」

「だああ、抱き着いてくんな!!」

「すみません。会長がご迷惑を……」

「あら、凍里ちゃん達もいたんだ」

「小夜鳴……」

「先輩をつけましょ~」


 大導寺先輩達も部屋の中に上がり込んできた。

 

「あの、一応まだ朝なんでお静かに……」

「こら、新樹。今日の練習サボろうとしただろ」

「ん~。別に練習しなくても、勝てると思って~」

「会長。体育祭最後の仕事です。シャキッとしてください」

「掩ちゃん~。まだ私はゆっくりしたいのぉ」

「集合時間を決めたのは、会長でしょう。自業自得です」

「あら、萌揺ちゃん、だったかしら。そのスマホのゲームやってるの?」

「は、はい」

「周りの人も面白いと言ってるから、私もやってみようかしら」

「萌揺に絡むな。変な思想がうつる」

「今日の凍里ちゃんは、いつも以上に毒舌ね」

「伊久留! コーヒーのお代わり、貰っていいかしら!」

「静かにしてくれよ……」


 騒音問題で文句言われるの俺なんだから。

 というか、生徒会がこういうことすんなっつの。


「朝方、寮に大人数が集まるのも失礼ですから、早く行きますよ」


 一番の常識人、大導寺先輩の助けの船がやってきた。


「う、うぅ……この人達を連れて行けば、人手が十分に」


 初衣ねえは青春同好会の方を指さしている。


「会長がいるからこそ、現場の士気が上がるんですよ? みんな会長が来てくれることを楽しみにしてくれています」

「うぅ、それは嬉しいんだけど」

「ほら、御形君も何か言ってあげてください」

「え、ええ。俺も?」


 俺の腰回りに抱き着いている初衣ねえ。

 ウルウルと涙目で、助けを呼んでいるように見えた。


「頑張れ、初衣ねえ」


 抱き着いた初衣ねえを引きはがして、精一杯のエールを送った。


「い゛、い゛っく゛んん゛ん!!!!!」


 今まで初衣ねえの口から聞いたことのないほど汚い泣き声だった。


「はい、頑張りましょうね、お姉さん」

「うく゛ッ!!」

「じゃ、凍里ちゃん。最後を楽しみましょうね」

「新樹も練習には来るようにな。気を抜いて死傷者が出たらたまらん」


 生徒会委員長組は、俺の部屋から出て行った。


「大導寺先輩がいてくれてよかった」

「もう少しいい豆がいいね」

「今度コーヒー豆の飲み比べをしましょ~」

「わ、私は甘いのがいいな」

「コーヒーのブレンドとかやってみたいわ!!」


 一方、青春同好会。

 俺の部屋を去った生徒会委員長組のことは気にも留めていない。


「伊久留! どこかにお茶しに行きましょ!」

「御形、今度は紅茶とか用意しといて」

「美味しいお菓子とか置いていてほしいです~」

「というか、御形! なにあんた美琴お姉ちゃんと一緒にいるのよ!!!」

「……はあ」


 この人達も、連れて行ってほしかった。

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