??.青春同好会がゲームにやってきた! ③
雑魚モンスターを狩ること、三十分。
順調にレベルも戦闘経験も積んでいく。
「楽勝ね!」
何度か危ない場面はあったけど。
土浦の助けもあり、全滅は避けられている。
全滅したら、持ち物もお金も全ロストらしい。
「楽勝って。よく言いますね、火之浦先輩」
三十分、ゲームをし続けていただけなのに。
なんかドッと疲れてしまっている。
「火之浦先輩を守る役目を降りたいです、土浦さん」
「ダメ!!!」
縦横無尽に動き回る火之浦先輩。
しかも、盗賊でスピードが速い。
戦士のスピードで追いつくことはできない。
とにかく火之浦先輩の動きを先読むしかなかった。
頭で考え、指でキャラを操作。
今までやってきたどのゲームよりも疲れる作業だった。
「本当に土浦代わってくれよ……」
「前線で戦ってくれる陽乃女お姉ちゃんの回復とかあるし」
「じゃあ、水無瀬先輩が魔術でカバーしてくださいよ」
「攻撃呪文楽しい」
楽しい、じゃないよ。
「でも、そろそろ慣れた頃じゃない?」
「もう攻撃のやり方は慣れました~」
「私も操作バッチリよ!」
先輩三人は、このゲームに慣れてきていた。
「伊久留が守ってくれるから安心ね!」
「御形がリーダーの世話係決定」
「賛成で~す」
「ぷっ、お似合い」
「火之浦先輩、戦闘の基本を覚えましょう……」
まずは、敵のことを知ることから始めてください。
「でも、火之浦先輩はとにかく、戦えるようにはなったんじゃ?」
俺の言葉に、土浦はうんうん唸っていた。
「いけるとは思うんだけどな……」
「何が心配なんだよ」
「やっぱり全ロストしたことを考えると……」
十回以上は戦闘を行った。
結果、道具やお金が結構手に入った。
それが死んだ瞬間、全て無くなってしまう。
「せっかく一緒に遊べるのに、それじゃモチベが……」
土浦はぶつぶつ何か言っている。
「そろそろ雑魚敵ばかりは飽きてくるね」
「なんか歯ごたえのある敵と戦ってみたいですね~」
「色んな場所を探検したいわ!」
土浦の心配を余所に。
先輩達はどんどん先へ行く気満々だった。
まあ、俺もまずは色々と試してみるのもありだと思う。
だが、ゲーム脳土浦。
そういう試みは躊躇してしまうみたいだった。
「萌揺、なんかダンジョンとか言ってみたいわ!」
「え、ええ!? もう少し武器とか揃えた方が……」
「カジノとかないのかな」
「こういうのってありそうですよね~」
「カジノ!? 今あるお金を全ベットよ!」
「そ、それじゃあどこにも行けなくなっちゃうよー!」
こんなに振り回される土浦も珍しい。
というか、先輩三人に逆らう土浦が珍しいか。
いつもは先輩全肯定なやつだしな。
流石の土浦でも、大好きなゲームでは強情だ。
「も、もう少しお金を集めてから、別の場所に移動しようよ!」
「集めたら、何かあるの?」
「ぼ、防具を揃えればもう少し行動の範囲が広がるから!」
「まあ、そこまでは我慢するか」
「一撃で倒せる特技とか身に着けたいですね~」
「盗賊なら暗殺スキルがあるわよ!」
土浦が色々と指示しなくても。
この人達なら勝手に盛り上がるんだろうな、と思う。
元々色んなことに順応することが得意な人達だしな。
「伊久留も一緒に行くわよね!」
「へ?」
自分のステータス画面とか見ていたせいで。
火之浦先輩が何を言っていたかを聞いてなかった。
一緒に行くとは?
「まあ、特に何かしたいわけでもないので」
ゲームなんだし、適当でもいいだろ。
「御形! お姉ちゃんを止めて!」
が、土浦は猛反対していた。
「別に遠くに行くわけじゃないんだったら……」
「そうよ! ここからすぐに行ける場所よ!」
火之浦先輩がマップにマーカーを置いた。
この場所から少し離れたところの、森。
なんか他の場所より黒く表示されているけど。
「そこは初心者狩りの森だからダメ!」
初心者狩りの森?
「強い敵が出るとか?」
「強い敵もでるし、罠も沢山あるんだよ!」
「面白そうですね~」
「でしょ! 陽乃女も同じ気持ちね!」
「ある程度強くなっても難しいダンジョンなんだからッ!」
そんなダンジョンを初心者御用達エリアに配置するなよ。
まあ、遊び心というやつか。
「賛成は三人なので、その森に行くことは決定ですね~」
「ん?」
「馬鹿御形!!!」
俺も、賛成した形になってるわけか。
そこまでゲームに執着していないから。
どうでもいいかな。
「馬鹿御形、馬鹿御形っっ!!」
「そこまで言わなくてよくない?」
「でも、私は反対かな」
と、意外と水無瀬先輩は反対の立場。
「やっぱり、道具屋を襲うのが手っ取り早い。すぐ強くなる」
反対の立場だけど、そもそも別視点だったな。
「お姉ちゃん達、もうちょっと慎重に!」
「土浦、無理だろ」
「無理じゃない、馬鹿御形!」
馬鹿御形に、ハマったのか?
「とにかく、遊ぶならもう少し色々と整えてから!」
「別に全ロストしても悲しむ人はいないと思う」
「私が悲しいの! お姉ちゃん達の努力を水の泡にはさせない!」
強情も強情。
土浦は一歩も譲らない。
「そういえば、このフィールドに強いやつとかでないんですか?」
「たまにでるらしいよ」
「レア武器とか落とすらしいですよ!」
「早く会いたいわ!」
「会っても勝てないから、さっさと逃げるのが鉄則……」
土浦の言葉が止まった。
と、同時に画面に赤い紋様が出現。
「なに?」
「あ、まず」
「見ただけでやばいってわかっちゃいます~」
「れ、レアモンスターだ!?」
「ぜっったいに、倒すわ!!!」
「逃げないとまずいって!」
「伊久留、頼むわよ!」
と、真っ先に火之浦先輩が突っ込む。
直後に新樹先輩が続く。
後衛から水無瀬先輩が呪文を発動。
レアモンスターのレベル。
今まで戦ってきた雑魚敵のレベルに、0が一つついている。
俺達の平均レベルの三倍ぐらいだ。
すなわち、無理。
一応レベル差を覆せる戦い方もあるけれど。
俺達にそんなことできるわけもなく。
「あー」
俺が火之浦先輩を守るために飛び出した頃には。
後衛にいたはずの水無瀬先輩。
レアモンスターのビーム攻撃で即死。
「あら~」
続いて、ビーム攻撃がそのまま方向転換。
新樹先輩を引き裂いて即死。
「ああ!」
そして、俺が間に合わず。
火之浦先輩はレアモンスターの爪攻撃で即死。
「無理じゃん!」
で、俺も同時に即死。
誰も太刀打ちすることができず。
「ほら、私の言った通りだったでしょ!」
リスポーン地点。
何もダメージを負っていない土浦からちょっと怒られた。
というか、こいつはなんでダメージ負ってないの?
「萌揺、先に逃げたでしょ?」
「ええ!?」
水無瀬先輩の指摘に、土浦は反応しない。
俺達はお金や持ち物は全ロストしたってのに。
「馬鹿御形が守んなかったのが悪い」
「全部が全部、俺に責任を擦り付ければいいってわけじゃない」
確かに守るのが俺の役目だけど。
何も準備していないのに、飛び出したお三方が全面的に悪いだろ。
「こういうのが結構あるから、いろいろと準備しないといけないんだよ」
と、土浦がもう一度説明。
なるほど。
運が悪いと、激つよモンスターにあったりするわけか。
「絶対、あいつ倒すわ!!」
火之浦先輩が、強く、そう宣言した。
「また探しに行くわよ!」
ただ、土浦の言葉は響いていないようで。
早速、さっきのフィールドまで走っていく。
「み、美琴お姉ちゃん! もう少し頭使ってよ!」
「楽しそうにしてるから、いいじゃん」
「よくない、馬鹿アホ御形!!」
アホが追加されてしまった。
ミナモトノカミ、一旦終了です。
梅雨の時期なので、多分このゲーム回多くなります。
元ネタ、分かった人いますか?
次回から、この章のメイン【七夕祭り】に向かって進めていきます。
この章も、青春同好会がもっと暴れますので。
ぜひブクマ、よろしくお願いします。




