??.青春同好会がゲームにやってきた!
放課後。
今日は青春同好会の顔合わせはなし。
活動はゲームの中で行われる。
【ミナモトノカミ】というスマホゲーム。
神々が統治する「ミナモト」という世界。
冒険したり。
自分の部屋を豪華にしたり。
チームを組んだり。
かなり自由度の高いゲームだ。
「でも、重いなあ~」
ゲームを起動して三十分。
ようやくゲーム開始のためのダウンロードが終わった。
ちょっと、スマホが熱い。
「邪魔なアプリは消しておこうかな」
このゲームが終わったら、整理を少し。
今後やるとした時、もしかしたらスマホが壊れるかも?
「次は通話アプリかな」
いつものメッセージのやり取りを行っているアプリ。
それでも一応、グループでの通話は可能だが。
土浦の猛プッシュで、別のアプリですることとなった。
ゲームをするときの通話として、かなり優れているらしい。
「これか」
ダウンロード。
これはすぐに終わる。
アカウントを作り、他メンバーをフレンドに追加。
「みんなの準備が完了するまでに、色々終わらせておこう」
ミナモトノカミ、起動。
自分のキャラを作り始める。
この世界には、五つの種族が存在する。
ヒューマン。
エルフ。
ドワーフ。
ビースト。
エクスマキナ。
それぞれの種族に特徴がある。
それによって、初期ステータスが決まる。
「……よく分からんし、無難にヒューマンでいいかな」
そこまでゲームの世界にのめり込めるわけではない。
だからヒューマンの方が、ゲームをするなら楽しめると思った。
あとは無難なキャラメイク。
そして、最後に職業を選ぶ。
その職業だが、なんか滅茶苦茶あった。
「どれを選べと……」
このゲームでは、戦う以外にもやれることがある。
武器を作って、それを売ったり。
部屋の装飾を作る職人になったり。
「一応、後から変更は可能か……」
それなら、適当に選んでもいいと思うけど。
うーん。
「馬鹿にされそうな気がするなあ」
主に土浦から。
あいつ、ゲームに関しては玄人っぽいし。
でも、どんな形でも馬鹿にしてくるだろうし。
「覚悟を決めるか」
キャラメイクでなんで覚悟を決めなくてはならないんだろうか。
というわけで、職業は【戦士】にしておいた。
名前は、【イクル】にしておこう。
「さて、先に触っておこう」
まずは慣れることから、始めないとな。
ログイン。
始まりの町、ホライゾン。
ここから、ゲームが始まる。
『おっそ』
と、すぐさまゲーム内メッセージが飛んでくる。
送り主は、【モエ-kyun!】。
きゅん?
『ごめんなさい。誰でしょうか?』
『は? イクル、のくせに生意気』
ああ、なんだ。
土浦か。
あいつ、自分の名前にキュンを入れてるぞ。
『他の皆は?』
『いる。パーティに招待してあげるから』
と、パーティ招待のメッセージが来た。
パーティ名は、【ブルースプリング】か。
青春、そのままか。
『安直だよね』
続いて、【フリージュ】。
これは、水無瀬先輩か?
続いて、グッドスタンプが送られてくる。
【アマテラース】。
これは、きっと新樹先輩だ。
『もう一人は、まだ入ってないんですか?』
もう一人というのは、もちろん火之浦先輩。
メッセージで個人名を出すのは控えておいた。
『多分どっかに遊びに行ってる』
フリージュがそう答えてくれた。
火之浦先輩らしいな。
『通話のアプリの準備ができたら、私がグループを作るから通話に入って』
と、土浦から通達。
というわけで、通話アプリを起動した。
「なんで、あんたが一番最初なのよ」
初手、嫌がられた。
もう慣れたけど。
この反応も、良く飽きないよな。
「早いね」
「萌揺ちゃん、やる気マックスですね~」
そして、水無瀬先輩と新樹先輩がやってきた。
ゲーム内のメッセージのやり取り。
新鮮でいいけど、文字内が面倒くさい。
通話の方が楽だし、ゲームに集中できる。
「火之浦先輩は?」
「夢中になってる、と思う」
「戦いに行ったんじゃないんですか~?」
「土浦、どうするんだよ」
「呼んでくるから! うるさいわ、あんた!」
俺への暴言を吐いて、土浦は一旦通話から離れた。
火之浦先輩、何してるんだろう?
「御形、種族と職業は何?」
「え、と。ヒューマンと戦士ですね」
「ぷ」
笑われた。
水無瀬先輩の質問に答えただけなのに。
「そういう、水無瀬先輩はどうなんですか?」
「エルフ。黒魔術師」
「え、こっわ」
素直に、そんな反応が出た。
この人の黒魔術、似合いすぎ。
それに、エルフと魔術って。
「水無瀬先輩もテンプレチックじゃないですか」
「陽乃女は、どう?」
「聞いてないし」
「私はドワーフの狂戦士で~す」
狂戦士。
攻撃力特化で戦闘特化の職業。
「まんまですね」
「そうだね」
「褒めないでくださいよ~」
ドワーフは、鍛冶などが得意な体の小さい種族。
だが、新樹先輩のキャラメイクは、なんというか。
身体中傷だらけの、THE・戦闘狂な出で立ちだった。
「やっぱりファンタジーはこうでないとですよね~」
この人、一応服飾関係の仕事をしているんだよな。
新樹先輩が一番キャラメイク凝りそうだったのに。
「意外と水無瀬先輩、凝り性ですか?」
「意外ってなに」
このゲームは、顔パーツの位置も微調整できたりする。
水無瀬先輩のキャラ。
多分、相当凝ってるんだろうな。
この人、もしかしてずっとキャラメイクしてたんじゃないか?
「なに」
「い、いえ、なにもないですよ?」
「御形は絶対助けてあげないから」
黒魔術師がそんなことを呟いた。
「一回死んじゃった!」
火之浦先輩が合流。
「あの森には近づかないでって言ったのに」
「え? リーダー、あそこに突撃したの?」
「なんか意味わからないぐらい、モンスターが強かった!」
「あそこはまだ先のダンジョンなのに……」
土浦はやれやれみたいな声だった。
「おい、その情報俺にだけ届いてないぞ」
「じゃあ、皆揃ったし、早速始めよ!」
「また無視かよ」
今回の俺への扱い。
いつもよりも雑な気がしないこともないんだが。
この章はゲーム【ミナモトノカミ】が主軸になるかもしれません。
というか、なります。
青春同好会なら、ゲームでも一波乱起こしてくれると思います。
ぜひブクマをして、【ミナモトノカミ】の行く末を見守ってください!




