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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で雨にも風にも負けないことを誓います!

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49.これからこうします!

「御形、顔色悪いね」


 水無瀬先輩の質問、答える気力は俺にはない。

 陽碧学園から橋を渡った先、少し開けた広場で皆が集まっている。


「そういえば、生徒会補佐の人達帰ってきてたね」

「双子の猪飼、ですね~」

「だれそれ?」

「生徒会補佐っていう役職に就いてる私達の同期」

「とても面白い子達ですよ~」

「リーダーはあまり興味なかったみたいだけどね」

「確かに。美琴お姉ちゃんから全然話が上がらなかったね」

「他の生徒会メンバーが優秀だから、表立った活動はなかったし」

「それに最近まで海外留学してましたから~」

「じゃあ、優秀ってこと?」

「それなりですね~」

「で、また顔色悪くなったけど、関係あったりする?」

「…………そう、です」

「宣戦布告してやったの!」


 宣戦布告。

 そう、宣戦布告。

 火之浦先輩の滅茶苦茶な発言。

 そのせいで、話題の猪飼先輩達とひと悶着があった。

 それに巻き込まれて、疲れてしまったのだ。


「なにそれ」

「宣戦布告よ、宣戦布告!」

「だから、どういうこと?」

「宣戦布告!」

「御形?」

「次期生徒会長を巡って戦うらしいですよ」

「なにそれ」


 二度同じ言葉を発する水無瀬先輩。

 分かる、分かりますよ。

 俺も火之浦先輩の思考を理解するのに時間かかりましたから。


「また面白そうなことしでかしましたね~」

「せ、生徒会長!? 美琴お姉ちゃんが!?」

「そうよ!」

「……萌揺、今年の生徒会選挙はいつ?」

「え、ああ、ちょっと待ってて」


 土浦がスマホを取り出して、検索を始める。


「例年と変わらないと思う」

「去年は11月の下旬から開始でしたね~」

「そう。でも、リーダー、本気?」

「本気の本気よ!」

「……御形、どう思う?」

「火之浦先輩が本気って言ってるんだから、そうなんだと思います……」


 いつも通り、自信満々な表情だし。

 きっと、マジのマジだ。


「……時間が経てば、興味が無くなる?」

「そんなことがあり得ないってこと、水無瀬先輩が一番分かってるでしょ?」

「それは、まあ、そうなんだけど……」

「それで、作戦とかどうするんですか~!」

「もちろん、凍里が一番の作戦を考えてくれるわ」

「お、お姉ちゃん、かっこいいよ!!」

「……御形、後は頼んだ」

「ダメです」


 ここは幼馴染の出番でしょ?

 水無瀬先輩は数十秒黙って考え込む。


「まだ先の話なんだし、考えておくよ」


 結果、先延ばしを選択。


「凍里、大好き!」

「はあ」


 喜び、抱き着く火之浦先輩。

 火之浦先輩がどうして生徒会選挙に立候補したいと思うようになったのだろうか。


「あ」


 そういえば、体育祭最終日の保健室。

 やけに生徒会補佐のことを聞きたがっていたな。


「原因、思い出した?」

「原因というか、前初衣ねえが生徒会の話をした時に結構食いついていたんで」

「……なんにせよ、生徒会との因縁がもっと増えるんだろうね」

「嫌なんですか?」

「嫌だけど、まあ、リーダーが言うなら従うよ」

「?」

「別に嫌じゃないって、凍里ちゃんは言ってるんですよ~」

「………ふん!」

「痛い!」


 水無瀬先輩に、太ももを蹴られた。


「お姉ちゃんは生徒会長になって、どうするの!」

「もっと、もっともっと楽しい学園行事を考えるわ!」

「凄い!」


 当の火之浦先輩には、具体的なビジョンがないように思う。

 生徒会長になりたいって言うのは、本心だろうけど。

 そんな曖昧な感じだったら、絶対落選するだろうな。


「猪飼先輩達って、評価はどうなんですか?」

「それなり」

「個性的なのが、少しだけ評価を下げてますね~」

「個性的? どんな感じなの?」


 この中で猪飼先輩達に会っていない土浦の疑問に。


「とてもカッコいいわ!」

「今まで見たことのない人種ですね~」

「馬鹿丸出し」


 三者三様の意見が出た。


「でも、萌揺とは相性いいと思う」

「それは私も思いますね~」

「今度紹介してあげるわ!」


 でも、土浦との相性については全員一致だった。

 もしかして、土浦も中二病なのか?


「でも、お姉ちゃん達より学力低いんでしょ?」

「そうですよ~」

「あいつらが私達に勝ったことはない」

「でも、学力だけで全て決まるわけではないからな」


 初衣ねえは別に成績トップじゃない。

 上位なのは間違いないけど。


「御形は絶対無理だろうね!」

「いや、俺は生徒会に興味ないし」

「なんでよ!」

「え、なんで土浦怒ってるの?」

「邪魔なあんたが生徒会に入った方が、私の得だからあ!!」

「…………」

「御形、無視でいいよ、萌揺は」


 相変わらずの土浦。

 

「萌揺。直近で行事とかある?」

「え、う、うん! え、と、七夕祭りていうのがあるみたい」


 七夕祭り。

 先輩三人の様子を見るに、去年はなかった行事っぽい。


「名前的に、七月にある?」

「う、うん。一応その予定みたい」

「やっぱり学校行事で色々試した方がいいかも」


 水無瀬先輩は土浦のスマホを借りて、色々と考え始めた。

 土浦はその補佐役として、忙しなくスマホを触っている。


「七夕祭りかー!」


 火之浦先輩の興味は七夕祭りに移っている。


「去年はありませんでしたから、楽しみですね~」

「去年の体育祭後は何かあったんですか?」

「部活や同好会が色々と催しを開いていた記憶がありますね~」

「その時は青春同好会を作るために色々動いていたわ!」

「ああ~、だからあまり記憶にないんですね~」


 記憶力抜群の新樹先輩でも、あまり記憶にないと。

 

「青春同好会を作るために動いたって、なにしたんですか?」

「なにしたっけ!」

「美琴ちゃん、部活にしたいって言ってたじゃないですか~。何回も何回も部活申請したりとか~」

「そういえば、やったわ! 最近してなかったから、忘れちゃってた!」」

「なんか最初部活にしたいとか言ってましたね」

「そうよそうよ! すっかり忘れてたわ!」


 嬉しそうに俺の両肩を叩く。

 

「私が生徒会長になったら、この青春同好会を部活として承認するわ!」

「わ~」

「で、出来るんですか?」

「最終的には先生達の許可取らないといけないから、無理」


 考えることが終わったのか、水無瀬先輩が会話に入ってくる。


「ま、生徒会選挙は選挙期間が始まらないとだし、今はあんま考えないでいいよ」

「そう?」

「ま、そのまま忘れてくれた方が楽」

「今の感じだと、火之浦先輩忘れそうですね」

「面白くなってきましたね~」

「今まで聞いたことなかったんだけど、お姉ちゃん達はなんで青春同好会を部活にしたがってるの?」

「学園に認められるから!」

「部費」

「なんかいい感じじゃなさそうですか~」

「じゃあ、部活って認められた方がいいんだね?」

「え、今のコメントでなんでそういう結論になるの?」


 曖昧過ぎるだろ、理由。

 土浦も先輩三人のことを妄信しすぎよ。


「生徒会長も青春同好会部活化も全部目指すわよ!!」

「おー」

「じゃあ、今日は何するんですか~?」

「そうねー」


 当面の目標が決まった、とは思えないけど。

 とりあえずこの話題については終わったらしい。


「まだ体育祭の疲れが取れてない」

「水無瀬先輩、別に運動してないじゃないですか?」

「体育祭に参加した時点ですでに筋肉痛」

「どういう……」

「どうせなら、野球でもしますか~」

「それいいわね!」

「体育祭で少し野球熱がですね~」

「若干二名、心底嫌そうな顔の人達が……」


 今日何しようかを色々と話している時。


「久方ぶりだな、青春同好会?」

「ご機嫌いかがでしょうか?」


 生徒会御一行がちょうど橋を渡り終えて、こちらに向かってきた。

 今日は委員長組はいないらしい。

 いつもの生徒会組に猪飼先輩達が加わっている。

 他のメンバーよりも一歩前に立って、奇天烈な服装の二人がこちらを睨んでいる。


「さっきぶりね!」

「貴様はな、陽碧学園の不心得者が!」

「そういえば、見たことのない顔がありますけれど、どちら様? 見たところ、新入生のようですが?」

「ひっ……」


 土浦は新樹先輩の後ろに隠れた。


「生徒会補佐って、生徒会長よりも前に出ていいんだね」

「黙れ! 我はお前が嫌いだ!!」

「姑息な小娘はどこかへ消えてしまいなさい」


 猪飼先輩から水無瀬先輩への当たり強くない?


「なにしたんですか?」

「別に。ついでに虐めただけ」

「ええ……」

「いつも突っかかってくるの向こうだし」

「いっ君、一緒に帰ろ~!」

「伊久留は、私と帰るの!」

「ふ~ん、より親密な私達の間に入ってくる気なんだあ」


 ニヤニヤ、変な笑顔だな。


「どういう意味?」

「知らな~い。いっ君に聞けば、いいじゃない?」

「伊久留?」

「いや、皆目見当つきません」


 より親密?

 学園の中で一番親しい間柄だから、『より』なんて言い方は違うだろうに。


「この思い出はね、私の中で眠っていればいいの~」

「そう。じゃあ、伊久留は貰うわね」

「ちょ、ちょちょちょ、どういう意味!?」

「会長は御形君との思い出だけでいいと、ついさっき仰ったじゃないですか」

「掩ちゃんはどっちの味方なの!」

「まだ仕事は終わってないんですから、ほら行きますよ」

「まだ仕事終わってないのかよ」

「い、いっ君と会ったら、もう仕事は終了なんだよ~」


 駄々こねる、初衣ねえ。

 無視する、大導寺先輩。

 相変わらず、どちらが上か分からないコンビだな。


「ほら、猪飼さん方も」

「ほお。土浦上官の妹気味だったか」

「あまり、似ていませんのね」

「そうなんだよ~。でも、可愛いやつでさ~」

「お、お姉ちゃん離れて!」


 土浦先輩と猪飼先輩達に囲まれて、土浦が揉みくちゃにされている。


「ん~、千遊ちゃんも柚丹ちゃんもいくよー!」

「先導者! ここでこの厄介者達と決着を付けましょう!」

「穢れた不埒者達を今浄化しましょう……」

「千遊。柚丹。そういうのは風紀委員に任せましょう。彼女達も、まだ騒ぎを起こしているわけではありません。それよりもまず、優先するべきことを優先しますよ」

「む。だ、大導寺閣下がそういうなら!」

「大導寺様に従いますッ!」

「あ、あれ~」


 大導寺先輩の言うことには、即座に従うなあ。

 初衣ねえが、生徒会補佐は大導寺先輩を慕っていると言ってたけど。

 初衣ねえと大導寺先輩。

 まさか、ここまで差があるとは。


「じゃ、じゃあ、頑張ってね、初衣ねえ」

「うわ~ん! もっと一緒に!」

「はい、行きますよ。会長」


 大導寺先輩に引っ張られながら、初衣ねえを始めとした生徒会一行は市街地の方へと消えていった。


「生徒会と出会うたびに小競り合い起きるのは面倒」

「私は見てて楽しいので~」

「生徒会と青春同好会。いいライバル関係ね!」

「結構猪飼先輩とは、仲悪そうですね」

「まあ、生徒会の中で一番被害被ってるからね」

「生徒会長とか副会長ではなく?」

「いや、物理的に」


 物理的に?


「ま、御形が気にすることではない」

「気にするというか、気になるんですが」

「さ! 今日は何をする!」

「そういえば、そんな話してたね」

「つ、疲れたから、どこかで休みたいよ~」

「萌揺ちゃんも散々でしたね~」

「そういえば、一昨日伊久留と美味しいお店を見つけたから、そこに行きましょ!」

「ちょっと、御形!!!! 美琴お姉ちゃんと一昨日なにしたのよ!!!!!」

「ちょお!!! 蹴り上げてくるな!」

「うるさいうるさいうるさいうるさい!!!」

「俺の股間を執拗に狙ってくるな!」


 体育祭が終わっても、まだまだ波乱は続きそうだ。

 そう思わせてくれる一日だった。

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