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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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73/105

73.体育祭当日です! ②

「ふん!」


 体育祭は最初、陽碧学園の校舎内で開会式が行われる。

 いつもの制服姿とは別で、生徒達はそれぞれの動きやすい服でやってきている。

 俺達も校舎へと向かっている最中だ。


「なあ、なんで怒ってるんだよ」


 俺の前を歩く土浦は、一度も俺を顔を合わせてくれない。

 俺の周りの先輩達は皆体育祭関係で先に行ってしまった。

 残っているのが、俺と土浦のみ。

 昨日の帰り道の土浦の顔が忘れられず、誘ってみたんだけど。


「馬鹿」

「なんでだよ」

「ばーかばーかばーか!!」


 なんでこんな文句言われんといけないんだ。

 ここまで嫌われているとは。


「別に、一人で寂しくない、のに……」

「はいはい。今度からは呼ばないようにするって」

「……そういうことでも」

「ん?」

「そういうことでもないの!!」

「んん???」


 今日初めて顔を正面から合わせた俺と土浦。

 土浦の顔は、真っ赤になっていた。


「その」

「な、なに?」


 真っ赤な土浦は、歯を食いしばって何かを吐き出そうとしているみたいで。

 十数秒そのまま身動き一つせず。


「その」


 ようやく捻りだした土浦の言葉。


「あり、ありが、と……助かった」


 なんと、土浦から感謝の言葉を聞くことができた。

 初めてじゃないだろうか。

 いや、土浦に感謝されるようなことはそもそもしてこなかったからなんだけど。


 でも、こうして面と向かって気持ちを伝えにきたのは、初めてだろう。


「おう。気にすんな」


 ドギマギしてしまって、無難な返答しかできなかった。

 いつも反抗的な土浦の素直な言葉には、驚きを隠せない。

 多分その驚きも顔に出てしまったんだと思う。

 土浦の真っ赤な顔が、数秒後にはいつもの土浦の顔になっていた。


「なにその顔。なんかむかつく」

「いや、だって驚くだろ! 感謝されることなんて今までなかったんだし!」

「ふん! ありがとう、だなんていうんじゃなかった。やっぱあんた嫌い」

「待ってくれって! 嬉しいよ、ありがとうって言ってくれて。連絡してよかったと思うし。俺も結局一人だったから、一緒に付いてきてくれて嬉しいって」

「知らないわよ。じゃあね」


 そう言って、土浦は俺から遠ざかるように校舎へと向かっていく。

 歩くの遅すぎて、結局追いついたけどね。



**********



「俺、バスケでるぞ!」


 舘向が俺の前でそんな宣言をする。

 なんかイメージ通りで特に驚きはしなかった。


「チャラいしな」

「それは偏見だろ!」

「俺にそんな宣言されても、組違うしどうでもいいよ」

「応援ぐらいしてくれよ! 俺達の組が勝つかもしれないだろ!」

「朝から元気だね、舘向」


 校舎に入ってからは、俺と土浦は別々に行動した。

 特にお互い何も言わずに、流れでそういう風になった。

 土浦は今窓際の席で、ずっとスマホを眺めている。

 あいつ、いつもスマホで何しているんだろうか。


「そういや、水無瀬。お前は作戦会議とかに誘われなかったの?」

「いや、別に誘われてないよ。そもそも一年生が会議に呼ばれること自体が稀なんだよ」

「でも、水無瀬は学年上位だろ、成績」

「そういう問題じゃないでしょ?」

「そんなもんかね」

「そんなもんよ」


 水無瀬涼乜は、姉の水無瀬凍里と同じように優秀だ。

 俺は赤点取るかもしれないなんてビクビクしてたのに。


「お姉ちゃんと私は違うのよ」

「あ、そう」

「おい、俺の応援ぐらい来てくれよ!」


 この三人で騒いでいる内に、教室の前の黒板に画面が映し出される。

 その画面には、見慣れた顔。

 生徒会長初衣ねえの姿が映っていた。


『皆さん、ただいまより体育祭のことについてのお知らせをします』


 生徒会長として、今日から始まる体育祭の説明を始める。

 そのほとんどが事前にタブレットで配布された資料に書かれていること。

 だが、それらを初衣ねえは分かりやすく丁寧に伝えてくれている。

 

 こう見ると、改めて初衣ねえの凄さを実感できる。

 俺の知っている初衣ねえは、しっかりと生徒会長をしているんだと。


『それでは、緊急のお知らせなどもありますから、各組からの連絡などは見逃さないようにしてください。何かありましたら、お近くの風紀委員までに連絡を。なお、広報委員の皆様が体育祭の様子を撮影していますので、ご協力お願いします』


 最後にいくつかの注意点を付け加えて、放送は終了。

 直後、体育祭開催の宣言。

 陽碧学園校舎が活気づき、一気に各所が大騒ぎとなる。


「んじゃ、お互い頑張ろうぜー」

「じゃあね~」


 舘向と水無瀬も、それぞれの場所へと向かっていく。

 二人が教室から出て行ったのと同時に、土浦がこちらに近づいてきた。


「ん」


 土浦はこちらにスマホの画面を見せてくる。

 そこには、火之浦先輩から同好会全員に向けたメッセージが表示されていた。


『全員集合!』

「どこに?」

「伊久留! 萌揺!」


 俺のツッコミとほぼ同時。

 火之浦先輩が俺達の教室へとやってきた。

 見た感じ、廊下を全力疾走していたみたいだ。


「お姉ちゃん!」

「風紀委員会に見つかったら、速攻捕まりますよ」

「大丈夫よ!」

「体育祭期間中は、反省室は封鎖されているよ」


 後ろからゆったりと現れた水無瀬先輩がそう答える。


「御形。涼乜はいる?」

「さっきどっかいきましたけど」

「そう。それならいい」


 そしてようやく、教室に足を踏み入れた。

 姉妹仲悪いのか?


「萌揺ちゃ~ん。準備まで一緒に行動しましょ~」

「あーん! 陽乃女お姉ちゃん大好き!」


 ガシッと新樹先輩にハグする土浦。

 クラスメイト達は少しだけ先輩達の視線を向ける。

 が、すぐに教室の外へと出て行った。


 青春同好会への興味よりも、体育祭の興奮が勝っているようだ。


「でも、どうして集合したんですか?」


 体育祭は各組での対戦形式。

 俺達は三つの組に分けられている。


 俺と火之浦先輩。

 土浦と新樹先輩。

 そして、水無瀬先輩。


 体育祭期間中は、青春同好会と言えど敵同士ということになるのだが。


「今日の午後は陽乃女が野球に参加するのよ!」

「それは知ってますよ」


 だから、その試合は全員で集まって見に行こうという話になっているが。

 まだ時間は沢山ある。


「試合始まるまで、遊ぶわよ!」

「え?」

「遊ぶわよ!」

「俺はいいいですけど」


 唐突すぎる。

 体育祭に全力で力を入れると思っていたけど。


 ただ俺は体育祭に関してはそこまで大きなやる気はない。

 結局、火之浦先輩の補佐をするだけだし。

 青春同好会で遊ぶことに関して、そこまで問題はない。


「水無瀬先輩はいいんですか?」


 一応作戦立案の担当をしていたはずだけど。

 実質まとめ役の人がこんなことをしていてもいいのだろうか?


「体育祭三日間あるし、最初はゆっくりするようには伝えてある」

「ゆっくりしててもいいんですか? 宝探しとか、早くに見つければ有利だと思うんですけど」

「初日はそこまで隠されてない」

「それは水無瀬先輩の予想ですか?」

「半分は。残り半分は、生徒会長がポロっと漏らした」


 初衣ねえ……。


「だから初日は宝探しもそこまで点数を稼げない。恐らく三日目が稼ぎ時になると思う」

「私も保健委員長も同じ考えよ!」


 火之浦先輩も、水無瀬先輩の予想と同じようだった。


「そっちの方が面白いものね!」

「理屈は分かりますけど、それ俺にも教えてくださいよ」


 俺は火之浦先輩達が考える作戦を何も知らない。

 一応作戦会議には参加しているはずなんだけど。


「伊久留は隣にいてくれるだけでいいのよ!」


 隣にいてくれるだけで励みになる。

 隣にいてくれるだけで、それ以外に用はない。

 どっちにも読み取れて、少し複雑だった。


「で、何するんですか?」

「体育祭のスケジュールは?」

「はい、凍里お姉ちゃん」


 水無瀬先輩の一言に、土浦は瞬時に反応した。

 土浦は自分のタブレットを持ってくる。

 体育祭全体のスケジュールを画面に表示させた。


「陽乃女の試合は午後からで、昼休憩挟むから前試合のことは気にしなくていいか」

「そうですね~。準備は昼休憩で済ませますから、ギリギリ登場でも問題ないです」

「いいんですか? 主力なんじゃ」

「いいんですよ~。練習が必要なほどではないので」

「すごい自信だ」

「陽乃女だからね」


 水無瀬先輩が少しだけ誇らしげにそういった。

 そういえば、この先輩、扉蹴り飛ばすんだよな。

 頑丈なやつ。

 

「どこ守るんですか?」

「ピッチャーですよ~」

「新樹先輩の球を、誰が受けるんです?」


 受けれる人がいるとでも?


「風紀委員長がいる」

「武見先輩は受けれるんですか、新樹先輩の球」

「風紀委員長に選ばれたのは、武見が陽碧学園の風紀委員の中で一番強いから」

「私もよくあの風紀委員長に投げ飛ばされるわね!」

「……火之浦先輩は、風紀委員相手に取っ組み合いするんですか?」

「でも、風紀委員長が唯一勝てない相手が陽乃女」

「楽勝ですね~」


 そんな因縁があったんですね。

 単純だけど、複雑そうな二人だな。


「で、何するとか考えているんですか?」

「全然!」

「スケジュール見ても、一時間ぐらいしか暇な時間はないかも」

「遊ぶなら、少し中途半端ですね~」

「体育祭って、競技以外に何かあったりするの?」

「あるよ。タブレットで色々と出店情報見れる」


 土浦の疑問に、水無瀬先輩はタブレットの画面に情報を表示させる。


「陽碧市以外からも出店来たりしてる」

「あ、このお店東京で有名なお店ですね~」


 タブレットの情報を見て、新樹先輩がいくつか指さした。

 良い値段で美味しそうな食べ物が沢山売られているみたいだ。

 

「普通に買おうとしたら、結構な値段するものばかりですね~」

「こんな感じで、ちょっとしたビジネスチャンスでもある」

「全部制覇するのもありね!」

「お金がないです」


 俺の言葉に、火之浦先輩と新樹先輩がこちらに顔を向けた。

 新樹先輩は全部制覇を可能にできるほどの財力はあるけど。

 流石に気が引ける。


「そうだわ!」


 俺と顔合わせしていた火之浦先輩が突然大声をあげた。


「陽乃女の登場を豪華にしましょう!」

「登場?」

「豪華って?」


 同好会の新人二人は火之浦先輩の言葉を理解できていない。

 水無瀬先輩と新樹先輩は理解できているらしく、


「具体的にどうする?」

「ハリウッドスターみたいな登場がいいですよね~」


 すでに作戦の考案が始まっていた。


「陽乃女の出番まで時間もないし、凝ったことはできなさそう」

「そうね! 時間はどうしようもないから!」

「やっぱり爆発は外せませんね~」

「いや、流石に突発的に爆発は無理」


 入念に計画すれば、爆発系いけるんだな、この人達。


「じゃあ、技術部のとこでも行ってみる?」

「いいわね! 行きましょ!」

「何か面白いものがあるかもしれませんね~」

「技術部?」

「御形、知らないの?」

「まあ、すぐに青春同好会に入って、それどころでもなくなったんで」


 普通の新入生は、部活や同好会の見学して決めるもんなんですよ。


「面白いところよ!」


 火之浦先輩の面白いにそこまで期待は持てないんだけど。


「え? あそこに行くの……」


 土浦は心底嫌そうな顔をしている。


「しょうがない」

「萌揺が別行動すると逸れちゃうから、一緒よ!」

「ほら、行きますよ~」

「先輩達も言ってるんだから、行くぞ」

「い、行くわよ! 黙ってて!」


 口ではそう言っていたが、土浦は結局先輩三人に引きずられる形で同行した。

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