表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/105

71.体育祭前日です! ②

 逃げ出した土浦を追うことはしなかった。

 

 自分の部屋へと帰る道中、初衣ねえのことを考えた。


 物心がついた頃から、俺は初衣ねえのことを知っている。

 土浦と先輩達のように、俺も初衣ねえとは旧知の仲だ。

 

 もし、俺が土浦と同じ立場だった時。

 俺は、初衣ねえに一緒にいてほしいと頼めるだろうか。

 生徒会長として多忙の初衣ねえに?


「無理、かもな」


 そういうことなのだろうか。

 幼馴染の初衣ねえと、生徒会長の初衣ねえ。

 同じ初衣ねえなのに、違う初衣ねえを見ているように思う。

 普段の初衣ねえには色々言えるけど、生徒会長の初衣ねえには。


「邪魔しちゃダメだって思っちゃうかも」


 同じ穴の狢というやつか。

 土浦のことが、心配になってきた。

 なんとかしてあげるべきか。


「ん?」


 寮の前まで来たら、火之浦先輩がベンチに座っていた。

 深々と座り込んで、空を眺めながら足をプラプラさせている。

 何を考えているんだろう。

 火之浦先輩、美人だから絵になるな。


「せんぱ……ごばぁつ!!!」


 火之浦先輩に話しかけるために走りだそうとした瞬間。

 後ろから思いっきり引っ張られる。

 そして、数メートル後ろの茂みまで引きずられていった。


「ぐ、ぐるじ……」

「ご、ごめん、いっ君! 力加減間違った!」


 初衣ねえが覗き込んでくる。

 そんなに心配そうな表情をしている癖に、やってることは暴力そのものだぞ。

 この人には、遠慮というものがないようだ。


「で、なに? 何かあるなら、連絡くれればさあ」

「約束しても、火之浦美琴に邪魔されるじゃない!!!」

「ああ……」

「最近は火之浦美琴も作戦会議でいなかったから、タイミングさえ合えば会いに行けたのに」

「生徒会も同じように忙しいよね」

「そうよ! もう、掩が行かせてくれないのよ! ひどくない、あの子!!!」


 でも、大導寺先輩がいなければもっと忙しかったと思う。

 

「体育祭はもうすぐ終わるし、そうしたら火之浦美琴は自由になるし、いっ君と関わる機会がもっと減っちゃうし、そうなったら私死んじゃう……」

「体育祭が終わったら、また何かあるの?」

「予定たっくさんあるんだから、忙しくない方が珍しいかも」

「凄いね、初衣ねえ」

「むふ。いっ君に褒められるなら、もっと頑張ってもいいかも!」

 

 たまに褒めてくれ、って初衣ねえの目が言ってるな。


「そんなことはいいとして、どうして俺を襲って……」

「お、襲ってない! 助けただけ!」

「唐突に後ろから引っ張った癖して」


 首回りが、まだ少し痛かった。

 初衣ねえって、結構力強いんだね。


 火之浦先輩が座っていたベンチの方。

 すでに彼女の姿はなかった。

 なんか、ちょっと、残念だ。


「い、いなくなったわね!」


 そんな俺を他所に、初衣ねえはとても嬉しそうだ。

 今日は初衣ねえが火之浦先輩を出し抜くことに成功した。


「甘いわね!!!」

「きゃあ!」


 そんなことはなく、火之浦先輩が茂みの向こうからこちらに飛びかかってきた。

 どうやら火之浦先輩は気づいていたらしい。

 姿を消したのも、ここまで忍び込んでくるためだった。


「どうして気づいたのよ!」

「私が伊久留の悲鳴に気付かない訳がないわ!」


 嬉しいようで、嬉しくない言葉だな。

 そんな覚えられるぐらいの悲鳴上げてましたか?


「なにそれ! 私はいっ君の呼吸で見分けられるんだから!」

「凄いわ! 私もいつかそうなりたいわね!」


 なんちゅう会話してるんや。


「って、そんなことはどうでもいいの! 火之浦美琴、離れなさい!」

「嫌よ! 伊久留は青春同好会のメンバーなんだから!」

「意味が分からない理由を言わないで!」

「いや、事実事実」

「いっ君は生徒会に入れる予定だったんだから!」

「いいわね! 今度の生徒会選挙は一緒に立候補しましょ!」


 唐突のお誘いに、俺は即座にノーを突き付けた。

 一緒に?

 火之浦先輩、生徒会に入りたいの?


「そういえば、凍里はどう! 凄い子でしょ?」


 俺が火之浦先輩に真意を聞く前に、話題は体育祭の話へ。


「み、水無瀬さんなら凄く頼りになるとは思ってるけど!」

「でしょ! 欲しくても上げないわ!」

「別に欲しいとは思わないけど……」

「生徒会には小夜鳴先輩がいるんだし、必要ないだろ」

「それもそうね!」

「るる、か。頼りになるけど、可愛げがないのよね」

「かっこいいじゃない!」

「そうだけど、私としては可愛げがある方がいいな」

「え? 水無瀬先輩って可愛げあるの?」

「るるよりあるわよ! るるなんてね!」


 数分、水無瀬先輩と小夜鳴先輩の話題で盛り上がる三人。


「って、そういう話をしたいんじゃないの!」

「楽しかったわ!」

「仲いいね、二人」

「よくない!」「仲良しね!」


 息ピッタリなんだもんな。


「じゃ、伊久留。行きましょ!」

「ねえ! いっ君は渡さないって言ってるじゃん!」

「明日から体育祭なんだから、帰って休むべきよ!」

「早く寝たい気持ちはある」

「火之浦美琴は、いっ君と同じ寮じゃない!」

「そうよ!」

「ずるい! ずるいずるいずるい!!」


 陽碧学園生徒会長は、強く地団駄を踏んだ。

 周りには人影はない。

 この姿を生徒に見られなくてよかったな、初衣ねえ。

 なんやかんや運がいいね。


「勝負よ、火之浦美琴!」


 何か強い決心を目に宿して、初衣ねえの宣戦布告が行われる。


「明日からの体育祭で、勝った方が一日いっ君を自由にできるの!」

「乗ったわ!」

「乗るんだ……」


 また賭けの景品にされてしまった俺。

 初衣ねえ側からも、火之浦先輩側からも。

 なんか俺の扱いが軽いような気がするんだわ。


「個人の戦績じゃなくて、どっちの組が勝つかどうかよ!」

「体育祭なんだもん、もちろんよ!」

「…………」

「もちろん体育祭が終わるまで、いっ君はどちらのものでもないからね!」

「どういうこと!」

「体育祭以外の時間は、二人だけの行動禁止ってことよ!」

「……分かったわ!」

「青春同好会リーダーなら、約束は破らないわよね?」

「破らないわ! 約束する」

「じゃあ、また明日! 絶対負けないから! いっ君、明日は迎えに行くからね!」

「え、なんで?」

「二人っきりは禁止なんだから、火之浦美琴と一緒に行動しないといけないでしょ!」

「それはそうだけど」

「じゃ、また明日、二人とも!」


 初衣ねえは、何故か勝ち誇ったような顔をして自分の寮へと戻っていった。


「先輩、良かったんですか?」

「なにが?」

「あんな約束勝手にしちゃって」


 あの約束通りにするとするなら、

 体育祭以外の時間。

 恐らく、体育祭が始まる前と後の時間のことを言ってたんだろうけど。


 俺は、火之浦先輩と初衣ねえ。

 どちらか一人と一緒にいることは禁止されたことになる。


 体育祭以外の時間。

 初衣ねえ。

 火之浦先輩。

 どちらか一方と二人っきりになることはできない。


 これは青春同好会にも影響がありそうなもんだけど。


「大丈夫よ。何かあっても、凍里が何とかしてくれるし!」

「先輩がいいなら、いいんですけど」


 個人的には、あんな約束してほしくなかったんだけどな。

 青春同好会とか関係なく、厄介ごとに巻き込まれるのが嫌なだけ。

 ま、火之浦先輩は楽しそうだし、いいか。


「さあ、明日から頑張るわ! 伊久留も、一緒に優勝目指すわよ!」

「そうですね」


 火之浦先輩は約束通り、そのまま自分の部屋へと帰っていった。

 

 明日から体育祭。

 陽碧学園に入って、初めての大きな学園行事。

 いったいどんな楽しみが待っているのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ