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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で新入生を勧誘することを誓います!

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7.担がれ、拉致され、逃亡劇!

伊久留、また初っ端から叫んでるな……。

「のわああああ!!!」

「この男、うるさい」 


 青春同好会が地面に到達。

 衝撃で揺れる俺。

 青春同好会の三人は、叫ぶこともなく冷静だった。


「さて、どう逃げるの?」

「とりあえず萌揺の部屋に行くしかないね」

()()、使いますか?」

「チョーク爆弾とは違って、あれはまだ試作段階だし、危険性はとてつもなく高いからダメ」


「慎重ね、凍里。私は気にしないんだけど」

「いや、ケガはダメだから」

「おい、とりあえず俺を下ろしてくれ!」

「風紀委員来ちゃいますね~」

「反省室ぐらい別にどうってことないから、捕まるのもありかもね」


「いやよ! そんなの青春じゃないもの!」

「価値基準はリーダーに任せるけど、じゃあここからどうやって逃げるの?」

「それは参謀の役目でしょ!」

「はあ。とりあえず風紀委員が来てるから、校内を走り回ろう」


 青春同好会三人組、と俺はとりあえず校舎の中に。


「いやだから下ろせっての!」

「いいの? このままだと風紀委員会に捕まっちゃうけど」


 俺の声が聞こえたのか。

 三人の中で一番小柄な人が答えてくれる。


「風紀委員会って?」


 初衣ねえがそんな話を聞いて気がする。

 自分には無縁な話だと思って、多分忘れてる。


「警察みたいなもの。悪いことした人を捕まえて反省室に入れるのが役目」

「私達は悪いことはしていないわ! これは青春なんだから!」

「はいはい」


「捕まっちゃうと、三時間みっちり勉強会らしいですぅ~」

「いや、今年の生徒会は反省の内容を変えたはず」

「緩和されたということでしょうか?」

「もっと厳しくなった」


「反省室は本当に嫌なんですよね~」

「じゃあ、悪いことしなければいいんじゃないですか?」


 とりあえず、当たり前の疑問を突き付けてみる。


「そんなの青春じゃないわ!」


 だから、青春って何なんだよ!


「前から風紀委員。上に上がろう」


 奥の方からこちらに近づいてくる生徒が数人いた。

 多分それが風紀委員会。

 彼らを避けるように、一階から二階へ。


「でも、上から下に降りる方法はもうないんじゃないかしら?」

「非常階段」


 非常階段は、校舎の両隣に位置している。


「鍵開けは私ができるから」

「流石凍里ね!」

「陽乃女は体力大丈夫?」

「大丈夫で~す」

「俺は全然大丈夫じゃない! 吐きそう!」


「風紀委員会のほとんどが部活動の監視に行っているはずだから、さっきの奴らをどうにかすれば大丈夫」

「とりあえずビー玉撒きましょうか」

「いいわね! そうしましょう!」


 と、リーダーらしき人物がポケットから袋を取り出す。

 そして、その中身を階段に向けてぶちまけた。


 ジャラジャラジャラジャラ。

 とんでもない数のビー玉が階段全体に広がっていく。


「これで足止めできるでしょ?」

「うん。ありがとう」

「ひ、ひでえ……」


 階段の下から叫び声。

 あの風紀委員の人達、怪我してるんじゃ……。


 そんな心配を余所に。

 非常階段前にたどり着き、小柄な女子生徒がさっそく鍵開けに挑む。


「あ」

「凍里、どうかした?」

「……これ開かないかも」

「どうしてよ!」

「非常階段の鍵の種類が変わってる。生徒会が変更したのかも」


 もしかして以前非常階段を開錠したとか?


「前これやったから対策されてる」


 ずばり、だった。


「本当に抜け目がないわね、生徒会!!!」


 生徒会に怒るなって。悪いのはお前らだ。


「仕方ないですね~」


 と、俺を担いでいた長身怪力女子生徒が扉の前に向かう。

 俺もそのまま移動。


「陽乃女、それは――」

「こうしちゃいましょう!」


 バァアン!!!!!


 一撃。

 俺を担いだ女子生徒が、非常階段の扉を足蹴りした。

 さっきの爆音は、それにより発生したものだった。


 俺は開いた口が塞がらない。


「陽乃女、流石にまずいんじゃ……」

「さっさと帰りましょう、美琴ちゃん!」

「だからどうしてその華奢な身体でこんなことが……」


 飛ばされた扉は、非常階段の柵にぶつかってそのままだった。

 見ると、蹴り飛ばした部分が凹んでいる。


 つなぎ目の部分が経年劣化していた、と言えば理由がつくのだろうが。

 それにしても女子生徒にこんな力があるのが凄すぎる。


 俺の頭の中の選択肢から、『逃げる』という選択肢が消えた。

 俺を担いでいる女子生徒へ反抗の意思を示すのをやめることにする。

 あの扉みたいになるのはごめんだ。


「大人しくしていてくださいね~」


 イエス、マイロード。


「ば、ばれなきゃいいんだから、さっさと下に降りるわよ」

「本当に偶然誰も見ていないみたいだし、自転車で萌揺のところまで行こう」

「陽乃女は、そのままで自転車に乗れるの?」

「私は問題ありませ~ん!」

「……ねえ、これって二人乗りってことになるのかしら?」

「いや、一応荷物扱いになるとは、思う」


 人間ですから、担がれているけどね。


 青春同好会は非常階段を下りていく。

 そして、近くの駐輪場で各自の自転車の準備をする。


 非常階段を降りた近くに、駐輪場がある。

 こっちの非常階段に向かったのは、それが理由だろうか?

 もしかしてこの小柄な人は相当頭がいいのかもしれないな。


「やけに大人しいね?」


 小柄な女子生徒が話しかけてくる。


「いやもう、なんか諦めました」

「蹴とばされるのはいや?」

「まあ、そういうことです」

「ほら、橋は一本しかないんだから、強行突破しに行くわ!」


 青春同好会は自転車で校門に向けて発走した。


 道中の風紀委員が止めようとする。

 が、自転車乗りの青春同好会は止められない。

 難なく、陽碧学園を脱出した。


 初衣ねえと待ち合わせの予定だったというのに。

 どうしてこうなったんだろうか。


 あくまで余談の話だが、数日後に陽碧学園でとある噂が流れだす。

『女子生徒に手足を縛られ自転車で引きずり回されて喜ぶ変態がいる』と。


 本当にとんでもない噂だった。

チョーク爆弾とは違う、試作段階の危険なあれ。

青春同好会周りのものは、出来れば法に触れない範囲でやりたいものですね。


非常階段を蹴り飛ばすのは、ダメ?


陽乃女に蹴り飛ばされたくない人は、ブクマや評価をよろしくお願いします。

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