6.参上、青春同好会!
「なんじゃこりゃあああああああ」
大絶叫。
チョークの粉で視界が真っ白に。
鼻や口からチョークの粉が入り喉奥を刺激する。
まさに地獄。
生徒会室にやってきたのは、あの青春同好会。
「うるさいハエがいる」
「あら、叩き潰しますか?」
「いや、陽乃女が言うと冗談に聞こえないから」
「ほら、さっさと高級なコーヒー豆を手に入れるわ!」
「いつもの場所にあると思うけど」
「それにしても、この特製毒マスクは一級品ね!」
「チョークの粉塗れの空気を吸っても何も感じませ~ん」
「ねえ、感動するのはいいから、さっさと二人も動いて」
青春同好会を名乗る連中は三人。
リーダーっぽい人。
色々と指示出しをしている人。
俺のことを叩き潰そうとしてた人。
彼女達は生徒会室の中を物色し始めた。
俺はここからどうするべきかを考える。
とりあえず、本来の扉から生徒会室から出るべきだろう。
「ん?」
青春同好会の一人が突然俺の目の前に現れた。
「んー、粉のせいでよく顔が見えないわ!」
女子生徒が思いっきり顔を近づけてくる。
相手は漫画などでよく見かける毒ガス用のマスクを着けていた。
怖い。
生徒会室に窓から侵入してきたマスク野郎なんて。
怖すぎる。
「ねえ、そろそろこの煙邪魔じゃない?」
「うぅ、髪の毛が傷んでしまいます~」
「風が吹かないのが予想外だった。この後処理のこと考えないといけないね、失敗」
「この子の顔がよく見えないんだけど!」
「無理」
「無理って。参謀の役割しっかりこなしてよ!」
「そもそもチョーク爆弾使いたいってきかなかったのはリーダー」
三人の会話的に、目の前にいるのはリーダーのようだ。
「あ、あったあった」
「早く帰りましょ~。このままだと美容に響きそうです」
「この後はどう帰るの?」
目の前の奴含めて。
三人は俺を無視して話を進める。
「何もなければ普通に生徒会室の扉から出るんだけど、そうもいかないみたい」
「というと?」
「萌揺から連絡きた。生徒会が今ここに急いで向かってるみたい」
「本当に行動が早いですよね~」
「も、もしかして、あれを使う時が来たの?」
「不本意だけど。準備始めよう」
初衣ねえ達生徒会が、今ここに向かっているようだ。
なるほど。
初衣ねえが「絶対関わるな」と言っていたのも頷ける。
どうやら生徒会の敵のようなポジションのようだ。
「ん?」
突然、俺の手が自由に動かせなくなった。
紐のようなもので縛られてしまったようだ。
「って、ちょっと待ってくれ!!!」
「うるさい」
誰のせいだ、誰の!
「どうして俺の手を縛るんだ!」
「生徒会への交渉材料にする」
「お、俺にそんな価値はない!」
「入学式後にここにいるってことは、生徒会の関係者に違いないから。それだけで価値がある」
「それに」
さっきまで俺の目の前にいた誰か。
その人が俺にもう一度顔を近づけてくる。
「あなた、見込みありそう」
その言葉を言い終わったと同時に、俺の身体が宙に浮く。
俺が持ち上げられたからだ。
ヒョイっと。
簡単に。
俺の、身体が、だ。
「流石、陽乃女。どうしてそんな華奢な身体で持ち上げられるのか不思議」
「才能、ですかね~」
「おい、下ろせ! 下ろせっての!」
「とりあえず黙らせましょうか」
「ごぼぉ!」
と、口の中に布を押し込まれた。
「よし、それじゃそろそろ」
ドガシャーーーン!!!!
俺を連れた青春同好会たちがベランダに出たのと同時に。
初衣ねえが生徒会室に扉を力強く開いた。
「いっくん!!!!!」
「来たよ、リーダー。陽乃女も準備いい?」
「準備完了で~す!」
「全員、前練習した通りにやるわよ!」
「うん。じゃあ、リーダー。最後に言うべきこととかある?」
「え、と。そうね」
俺は一人の女子生徒に担がれたままで自由に動けず。
初衣ねえはかなり怒っていることは分かる。
顔が超真っ赤っかだ。
「な、いっ君を連れて何をする気よ、青春同好会!」
「会長、あれロープです」
三本のロープが屋上から垂れている。
そのロープはご丁寧に青春同好会三人の背中周りに接続されていた。
ロープの先は地上へと続いている。
「またね、生徒会! また遊びましょ!」
と、また俺の身体は宙に浮く。
俺を担ぎ上げた青春同好会メンバーがジャンプしたからだ。
軽やかに、そして優雅に。
懸垂下降。
テレビで見た。
ロープを使って高い場所から下に降りる時のやつ。
「って、そんなのいきなりやるんじゃないわあああ!!!」
「大丈夫! 実は一か月みっちり本格的な訓練を積んだんだから!」
「ちなみに免許皆伝」
「そういう問題じゃないだろ!!!!」
揺れた拍子に。俺の口から邪魔だった布が取れた。
言論の自由を獲得。
青春同好会たちは慣れた手つきでスルスルと地面まで下りていく。
本格的な訓練を積んだというのは本当らしい。
でも、やっぱりそんなの高校生がやることではない。
――ピンポーン。
その途中、陽碧学園のチャイムが鳴り響く。
『風紀委員会に通達。青春同好会を確保せよ、これは生徒会長直々の命令である』
これじゃあ、お尋ね者じゃないか!
「さあ、青春が始まるわ!」
リーダーらしき生徒が、ようやくそのガスマスクを取った。
ああ、通りで聞いたことのある声だった。
その顔は、朝登校中に出会ったあの女子生徒。
青春同好会のチラシを俺に手渡してきた人だった。
あの時のトキメキが、まさかこんなことに繋がるなんて。
「ようこそ、青春同好会へ!」
ニカっと笑う。
青春同好会リーダー、火之浦美琴。
これが、俺と彼女の衝撃的な出会いだった。
懸垂下降にライセンスというものはないらしいです。
だから、別に法に触れてはいないと思います。
さて、ようやく青春同好会が本格的に参戦してきます。
青春同好会と共に青春を感じましょう!
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