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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: KOりおん
我々青春同好会は、全力で新入生を勧誘することを誓います!
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6.意味も分からず拉致されます!

 青春同好会が地面に到達。

 衝撃で揺れる俺。


「さて、どう逃げるの?」

「とりあえず萌揺の部屋に行くしかないんだけど」

()()、使いますか?」

「チョーク爆弾とは違って、あれはまだ試作段階だし、危険性はとてつもなく高いからダメ」

「慎重ね、凍里。私は気にしないんだけど」

「いや、ケガはダメだから」

「おい、とりあえず俺を下ろしてくれ!」

「風紀委員来ちゃいますね~」

「反省室ぐらい別にどうってことないから、捕まるのもありかもね」

「いやよ! そんなの青春じゃないもの!」

「価値基準はリーダーに任せるけど、じゃあここからどうやって逃げるの?」

「……それは参謀の役目でしょう」

「とりあえず風紀委員が来てるから、校内を走り回る」


 青春同好会三人組、と俺はとりあえず校舎の中に。


「いやだから下ろせっての!」

「いいの? このままだと風紀委員会に捕まっちゃうけど」


 俺の声が聞こえたのか、三人の中で一番小柄な人が答えてくれた。


「風紀委員会って?」


 初衣ねえから話は聞いたことあるけど、自分には無縁な話だと思って聞いてなかった。

 確か朝の部活勧誘の時に、風紀委員会と書いてある腕章をつけている人を見かけたが。


「警察みたいなもの。悪いことした人を捕まえて反省室に入れるのが役目」

「私達は悪いことはしていないわ! これは青春なんだから!」

「はいはい」

「捕まっちゃうと、三時間みっちり勉強会らしいですぅ~」

「いや、今年の生徒会は反省の内容を変えたはず」

「緩和されたということでしょうか?」

「もっと厳しくなった」

「反省室は本当に嫌なんですよね~」

「じゃあ、悪いことしなければいいんじゃないですか?」


 とりあえず、当たり前の疑問を突き付けてみる。


「そんなの青春じゃないわ!」


 だから、青春って何なんだよ!


「前から風紀委員。上に上がろう」


 揺らされる視界の中で、奥の方からこちらに近づいてくる生徒が数人いた。

 多分それが風紀委員会。避けるように、一階から二階へ。


「でも、上から下に降りる方法はもうないんじゃないかしら?」

「うん。だから、非常階段に向かう」


 非常階段は、校舎の両隣に位置している。


「鍵開けは私ができるから」

「流石凍里ね!」

「陽乃女は大丈夫?」

「大丈夫で~す」

「俺は全然大丈夫じゃない! 吐きそう!」

「風紀委員会のほとんどが部活動の監視に行っているはずだから、さっきの奴らをどうにかすれば大丈夫」

「とりあえずビー玉撒きましょうか」

「いいわね! そうしましょう!」


 と、リーダーらしき人物がポケットから袋を取り出して、その中身を階段に向けてぶちまけた。

 ジャラジャラジャラジャラ、ととんでもない数のビー玉が階段全体に広がっていく。その中に何個か銀色の玉も混じっているようなんですが、大丈夫なんでしょうか?


「これで足止めできるでしょ?」

「うん。ありがとう」


 三人と俺は非常階段の方に全力で向かう。

 後ろの方から阿鼻叫喚の声が聞こえてくるようだが、怪我だけには気を付けてほしいなと冷静に考えている俺。

 非常階段前にたどり着き、小柄な女子生徒がさっそく鍵開けに挑む。


「あ」

「凍里、どうかした?」

「……これ開かないかも」

「ど、どうしてよ!」

「非常階段の鍵の種類が変わってる。生徒会が変更したのかも」


 そりゃ、たかが一生徒が開けられるようなセキュリティにはしないだろ。


「前これやったから対策されてる」

「本当に抜け目がないわね、生徒会!!!」


 生徒会に怒るなって。悪いのはお前らだ。


「仕方ないですね~」


 と、俺を担いでいた長身怪力女子生徒が扉の前に向かう。

 俺もそのまま移動。


「陽乃女、それは……」

「こうしちゃいましょう!」


 バァアン!!!!!


 一撃。

 ちょうど扉の方に体が向いている状態だったため、さっきの爆音が何を意味していたのか理解できていた。

 俺を担いだ女子生徒が、非常階段の扉を足蹴りした。

 さっきの爆音は、それにより発生したものだった。俺は開いた口が塞がらない。


「陽乃女、流石にまずいんじゃ……」

「さっさと帰りましょう、美琴ちゃん!」

「だからどうしてその華奢な身体でこんなことが……」


 飛ばされた扉は、非常階段の柵にぶつかってそのままだった。見ると、蹴り飛ばした部分が凹んでいる。つなぎ目の部分が経年劣化していた、と言えば理由がつくのだろうが、それにしても女子生徒にこんな力があるのが凄すぎる。

 俺の頭の中の選択肢から、『逃げる』という選択肢が消えた。

 俺を担いでいる女子生徒へ反抗の意思を示すのをやめることにする。あの扉みたいになるのはごめんだ。


「大人しくしていてくださいね~」


 イエス、マイロード。


「ば、ばれなきゃいいんだから、さっさと下に降りるわよ」

「本当に偶然誰も見ていないみたいだし、自転車で萌揺のところまで行こう」

「陽乃女は、そのままで自転車に乗れるの?」

「私は問題ありませ~ん!」

「……ねえ、これって二人乗りってことになるのかしら?」

「いや、一応荷物扱いになるとは、思う」


 人間ですから、担がれているけどね。


 青春同好会は非常階段を下りていき、近くの駐輪場で各自の自転車の準備をする。

 非常階段の近くに駐輪場があるのは一カ所しかなく、この非常階段を使おうと考えたのも計算の内だということだろうが、もしかしてこの小柄な人は相当頭がいいのかもしれないな。

 ま、今んとこ青春同好会全員は馬鹿の集まり、みたいな印象しか受けないんだがな。


「やけに大人しいね?」


 小柄な女子生徒が話しかけてくる。


「いやもう、なんか諦めました」

「蹴とばされるのはいや?」

「まあ、そういうことです」

「ほら、橋は一本しかないんだから、強行突破しに行くわ!」


 青春同好会は自転車で華麗に去ろうとする。

 流れるように風紀委員会の姿が見えるが、追いつけるはずもなく、なんなく警戒を突破していく。

 初衣ねえと待ち合わせの予定だったというのに、どうしてこうなったんだろうか。


 あくまで余談の話だが、数日後に陽碧学園でとある噂が流れだす。

『女子生徒に手足を縛られ自転車で引きずり回されて喜ぶ変態がいる』と。


 本当にとんでもない噂だった。

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