52.また作戦会議です!
「紫に所属している生徒の中で、それぞれの得意分野に特化したメンバー編成だと思うわ。もちろん中には不得意な人もいるでしょうけど、そこは本人のやる気も確認した上での配置。一応ここで意見がないなら、このメンバー構成を中心に体育祭に向けて考えようと思うのだけど、どうかしら?」
小夜鳴先輩の問いに、会議に参加しているメンバー全員納得している。
しっかり本人の意志を確認しているのがポイント高い。
しっかりと裏を取って、確認を行っていたようだ。
抜かりも穴もありやしない。
しかも、各種目の代表となる人物とも密接に相談していると聞く。
完璧な先輩の手腕。
「じゃあ、宝探しの方は火之浦さんと御形君に任せるわね」
んで、俺達青春同好会組は宝探しの方を担当することとなった。
「分かったわ!」
「分かりました」
俺達の返事に、小夜鳴先輩は特に何も言ってこなかった。
ただ、こちらをじっと見ながら、首を傾げている。
こちらに近づいてくる。
一つ咳ばらい。
「じゃあ、宝探しの方は火之浦さんと御形君に任せるわね」
「分かったわ!」
「分かりました」
俺達二人はしっかりと小夜鳴先輩の言葉に反応している。
そのはずなのだが。
小夜鳴先輩は変わらず首を傾げていた。
「もしかして、声聞こえないの?」
画面の先。
小夜鳴先輩の声はこちらに届いていた。
しかし、こちら側の声は画面向こうには届いていないらしい。
現在、俺と火之浦先輩は反省室にいる。
全員の都合が合う日が今日しかなかったため。
生徒会特例でリモート参加をしていた。
未だかつて、反省室でこんな事態は起こったことがないらしい。
大導寺先輩と武見先輩は呆れ果てていた。
土浦先輩と小夜鳴先輩は大笑い。
初衣ねえは顔を真っ赤にして、怒って俺に詰め寄ってきた。
「じゃ、次の会議は来週。各自担当の競技について作戦を講じること。練習期間は体育祭までの二週間だけなのは忘れないように。このメンバーで確定だと思うから、どの競技に決まったかは教えても構いません。が、体育祭の規約に則った行動を心がけてください」
それでは今日は解散します。
と、小夜鳴先輩が今日の会議を締める。
会議に参加していたメンバーは部屋を後にする。
数人の先輩達がこちらを嫌な目線で見ていたような気がする。
冷静に考える。
反省室にぶち込まれた。
挙句にリモートで会議に参加する。
本当に馬鹿みたいだと俺は思う。
だから、仕方ない。
でも、気にしていないということではない。
理由は理解できても、嫌いなものは嫌い。
「どう? 反省室からのリモート会議は?」
誰もいなくなった教室。
小夜鳴先輩は電話越しに語り掛けてくる。
「電波が悪いのは、本当にその通りですね」
「時々聞こえなかった時があったけど、大丈夫かしら!」
「美琴ちゃんは心配しなくても大丈夫。担当のところをしっかりやってくれればいいわ。統括はこちらでやっておくから」
「任せておいて! 凍里には負けない作戦考えてあげる!」
「ふふ。期待してるわ」
火之浦先輩は自信有り気に胸を張る。
すでに反省室の課題はクリア済み。
タブレットを使って色々と作戦を考えていたようだ。
俺?
俺は半分ぐらい。
火之浦先輩が異常なだけで、普通はこれぐらいの速度なんだってさ。
反省室に入る前に、武見先輩はそうアドバイスしてくれた。
学年トップクラスの奴を参考にしてはいけないって。
「そういえば、忙しくて聞けなかったことを最後聞いてもいい?」
「なんですか?」
会議の片付けをしていた小夜鳴先輩。
唐突にそんなことを聞いてくる。
会議が始まる十分前。
俺と火之浦先輩の反省室行きが決定した。
普通は反省室行きの理由は周知されてもいいと思うんだけど。
小夜鳴先輩までは詳しい事情が周知されていなかったようだ。
それも当たり前だ。
だって、小夜鳴先輩は会議の準備があったんだから。
「なに! そんなに聞きたいの!」
「ええ。聞かせてほしいわ」
「はあ」
火之浦先輩は、パッと目を輝かせてグイっとタブレットに顔を近づける。
そんな姿に小夜鳴先輩は満足そうに笑っていた。
そて馬鹿馬鹿しい武勇伝を自信満々に語り始めた。




