51.初衣ねえとデートです! ②
「そういえば」
ふと疑問に思ったことを口にする。
「最初の頃、俺を生徒会に、みたいな話してたけど、無理じゃない?」
陽碧学園の生徒会長の選出は、十二月に行われる生徒会選挙によって行われる。
生徒会長以外の職は、生徒会長の推薦で選ばれるのだ。
生徒会の活動には、風紀・広報・保健の三つの委員会も時々参加する。
が、それぞれの長は各委員会で決められる。
こういった形で生徒会役員やその周りを選出する。
4月に入ったタイミングの新入生が、生徒会に入るには。
「十二月の選挙まで待つ必要があるだろ?」
「ああ、あれね。いっ君でも、生徒会として活動することは簡単じゃないけどできるよ」
「どうやって?」
「生徒会の下部組織にね、生徒会補佐っていうのがあるの」
「生徒会補佐?」
また新しい単語が出てきた。
「そう。生徒会も人数が限られてるから、人数が必要な活動の時とか不便でしょ? 咄嗟に人数集めるなんて結構難しいから、そういう時のために存在する組織なの」
「早急に人数が欲しい時に、その生徒会補佐から招集する?」
「でね、その生徒会補佐って、別の目的もあってね。次期生徒会役員候補を、生徒会補佐として募っているの。生徒会を手伝ってもらう代わりに、自分を全生徒に認知してもらう機会を貰えるって」
「それって誰でもなれるの?」
「やる気次第だよ。申し出があれば、いつでも大歓迎! 私もしてたし!」
初衣ねえは生徒会補佐だったのか。
元々生徒会長になるつもりだったのだろうし。
いい機会だと思ったんだろうな。
「う~ん。でもそれって、いつかは生徒会に入らないといけない訳じゃん?」
「選挙で当選すればだけどね。でも、確かに生徒会選挙には絶対出ないとだよね」
「それを一年から、なんて勇気は俺にはないね」
「わ、私のサポートがあっても!?」
まあ、嫌だ。
初衣ねえには悪いけど。
生徒会とそこまで相性が良いとは思えない。
「別に生徒会に入らないから、って初衣ねえと疎遠になるわけじゃないしさ」
「うぅ! そ、そんなこと言ってくれるのは嬉しいけど」
ちょっと赤らめた頬を抑える。
初衣ねえはジッと俺を見る。
「青春同好会なんかに入った人がいうセリフじゃないよね」
「まあ、それは……さーせんした」
「ふん!」
俺の脇腹をツンツン突いてくるのやめて!
「じゃあ、今は生徒会補佐誰もいないの?」
話題を逸らす。
「むう。生徒会補佐ね、今は二人いるかな」
あ、いるんだ。
「一年生?」
「二年生! 今年度の生徒会ができた時に、すぐに生徒会補佐に入りに来たよ」
「へえ。でも、まだ会えてないな」
良い意味でも悪い意味でも。
俺は生徒会と色々関わりを持っていて。
生徒会面々とは結構な頻度で顔を合わせる。
そんな中に生徒会補佐として紹介された人はいない。
「ああ、あの二人、春休み中留学に行ってるの」
「え?」
めっちゃ優秀なお二人さん。
「そろそろ帰ってくると思うんだけど。こういうの掩ちゃんに聞かないと分かんないな」
「大導寺先輩に管理任せて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。掩ちゃん、ずっと私の隣で頑張ってくれてるんだもん」
「ずっと?」
「掩ちゃんも、生徒会補佐だったんだよ? 私が入って一か月後に」
「あれ、初衣ねえも二年生から生徒会補佐?」
「一年生から!」
「となると、結構な長い付き合いだな」
「ね~。本当に頼もしいよ~」
初衣ねえの中学時代。
大導寺先輩の名前は聞いていなかったから、陽碧学園入学後の友人関係だ。
高校入学一年生で、学園中から注目される生徒会補佐に入った二人。
初衣ねえは何となく目的が分かるけど、大導寺先輩は謎だった。
大導寺先輩も、会長を狙っていたとか?
「掩ちゃんは、最初から副会長志望だったって言ってたよ」
俺の疑問に、あっさりと初衣ねえは答えてくれた。
初衣ねえと大導寺先輩は競い合っていたわけではないということ。
普段の活動を見ている俺からすれば、
大導寺先輩の大立ち回りに感心するばかりなのだが。
そんな優秀な人からも、初衣ねえは最初から慕われていたということ?
「ん~」
「どうしたの?」
初衣ねえのいつもの顔が、俺を覗き込んでくる。
「いや、また知らない初衣ねえだと思って」
「え~。今まで別に隠し事をしてたわけじゃないんだけどな~」
「それはそうだけど」
「ふふ。じゃあ、もっと知ってほしいな。初衣のこと」
少し、ほんの少し。
初衣ねえの笑顔を見て。
あの時の選択を、少しだけ、後悔した。
「まだ、一年もあるんだもん。いっ君には、もっと楽しんでほしいなって」
「一年しかないんだね」
「そうだよ! もお。いっ君が、もう少し遅く生まれてたら、こんなことならなかったのにね!」
「それじゃあ、同じ学校に通えないじゃん」
「そっちの方がマシでしょ!」
「そうかな?」
「そうだよ!」
海岸沿いの道路を二人っきりで歩く。
一緒に他愛もない会話を続けていく。
「またアイス食べたいね~」
「だね」
「今度はストロベリーだね」
「初衣ねえ、今日食べてたし。別のがいい」
「だーめ! 絶対ストロベリー!」
個人的な遊びに連れ出すのは、今のところ初衣ねえぐらいですね。
幼馴染って負けヒロインポジが多いですから。
初衣ねえにも頑張って欲しいなと思います。
少しずつ体育祭を進めていきますが。
それ以外の行事もやっていきますよ!
ぜひお待ちください!




