表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/81

49.お久しぶりの初衣ねえ!

 珍しく、青春同好会の活動は休みになった。


 火之浦先輩は体育祭に向けた作戦会議へ。


「これは機密作戦だから、少数精鋭で行う必要があるの。だから、御形君はまた今度ね」


 小夜鳴先輩の言葉。

 と、俺はお呼びではなかったようだ。


 その去り際。

 小夜鳴先輩は水無瀬先輩に耳元で何かを囁いて帰った。


 直後、水無瀬先輩は血相を変えてどこかへ走り去っていった。

 置いてけぼりにされたのは、俺と土浦、新樹先輩。


「どうします?」

「う~ん。今日はお休みでいいんじゃないですかね~」

「え、ええ!?!?」

「まあ、たまには休みもいいですね」

「え、え、え!?」


 土浦がなんかうるさい。


「私もこの時間にお仕事終わらせないとですね~」

「いつも、活動終わりにやってるんですか?」

「そうですね~。立て込んではいるんですけど、それでもこの活動は楽しいので」

「すごいですね、新樹先輩」

「煽てても無駄ですよ~」

「本心ですって」

「え、うええ!??!」


 土浦はまだうるさかった。


 新樹先輩はそのまま自分の家へと帰っていく。

 で、残されたのは俺と土浦だ。

 日頃、土浦とは口喧嘩をしているばかり。

 こう、二人っきりになることは多くない。

 だから、少し、気まずい。


「……なんか喋りなさいよ」


 沈黙を破ったのは、土浦のほうだった。


「いやあ、喋れと言われましたもぉ」

「ふん。意気地なし」


 相変わらずの口ぶりだ。


「土浦はどうする?」

「……別に。お姉ちゃん達が相手してくれないなら、ここにいる意味もないし」

「ああ、そう」


 うーん。

 言うべきか、言わないべきか。

 まあ、言って後悔するほうがいいか。


「一緒に帰るか?」

「馬鹿!」


 バシンと、差し伸べた手を叩かれた。

 顔を真っ赤にして、土浦も帰っていった。

 叩かれた部分がヒリヒリする。


 断られたか。

 結局のところ、俺は土浦に嫌われているのだろうか。

 まあ、男と帰るなんて普通嫌がるか。


 正直どうでもいいので、俺も帰ることとしよう。


「いっ君!」


 聞き馴染み過ぎの声。

 初衣ねえだ。

 鞄を持っている。

 生徒会の仕事はいいのだろうか。


「初衣ねえ、今日はもういいの?」


 現在、15時。

 結構遅くまで残っている印象があったんだけど。


「今日は他の皆、体育祭のほうに行っちゃったの!」


 確かに小夜鳴先輩も作戦会議と言ってたな。


「全員が行ってるわけじゃないんだけど、仕事も多くはないから、今日は解散になっちゃった!」

「職権乱用?」

「違う! 今回は掩ちゃんの指示だから!」

「……本当?」

「う……なんでいっ君、そんな疑うの?」

「え、だって、ねえ?」

「な、なによ、その目は!」


 初衣ねえの姿を見続けて、一か月経とうとしている。

 高校入学前まで見続けた初衣ねえとは、印象がだいぶ変わった。

 優雅で心豊かな初衣ねえ、という印象だったんだけど。

 意外と、なんというか、我儘な人なんだろう。


「初衣ねえの印象、結構変わったから」

「え、ええ!?」


 顔真っ赤に驚く初衣ねえ。


「うぅ……そんな意識しているわけじゃないんだけど」

「別に迷惑してないけど」

「そういう問題じゃないよ!」

「でも、初衣ねえの新しい一面を見れたのは嬉しいかな」


 正直、高嶺の花というか。

 俺の前をずっと歩いて引っ張ってくれる。

 それが、初衣ねえのイメージだった。


 ずっと幼馴染として隣にいてくれた初衣ねえ。

 隣で俺を引っ張ってくれてきた初衣ねえ。


 そんな初衣ねえが慌てふためき空回りする姿はやはり新鮮だった。

 もちろん生徒会長として働く初衣ねえの姿も好きだけどね。


「こうやって面と向かって、二人で会うのは久しぶりだね」

「お邪魔虫が何度も何度も何度も何度も、いっ君にこべりついていたからね」

「笑顔が怖いよ、初衣ねえ……」


 青筋が浮いてます。


「今日は他の連中はいないの?」

「火之浦先輩と水無瀬先輩がどっかに行っちゃったから」

「どうして?」

「火之浦先輩は小夜鳴先輩に連れられて。水無瀬先輩は詳しく知らないけど、多分同じで体育祭の作戦会議に行ったんじゃないかな?」

「え? そうなの?」

「そういえば初衣ねえ、水無瀬先輩と同じ組じゃなかった?」

「え、ええ? そそそうだった?」

「なんで動揺してんの?」


 聞かれたくないのか。

 隣で歩いていた初衣ねえが、段々歩く速度を上げていく。

 俺も歩幅を広げて、速度を上げていく。


「なあ、初衣ねえ」

「わー! 何も聞こえなーい!」


 耳を塞いで、大声を出して音を遮断。


「初衣ねえ」

「わー!」

「もしかして」

「わー! わー!」

「作戦会議メンバー外された?」

「ぐっ」


 足を止める。

 下唇を噛みしめる初衣ねえ。

 涙目を向けて何かを訴えかけてくる。


「だ、だって、私が考えてきた作戦全部却下されるんだよ!? 酷くない!?」

「はあ。例えば、どんな作戦考えたの?」

「全員の得意な種目を把握して、いい感じに振り分けようとか。宝探しはみんなで仲良く協力しながらやっていこうとか。他の組とは仲良くしましょう、とか……」


 しっかり作戦考案、頑張ったんだろうけど。

 陽碧学園生徒全員で楽しんでほしい。

 生徒会長としての思いを込めて。


 生徒会長という立場から考えれば、正しいんだけど。


「初衣ねえの言ってることを実行すれば、絶対負けるね」

「絶対!? 多分、とかじゃなくて!」

「小夜鳴先輩とか、そういうの逆手に取ってくるタイプじゃないの?」

「る、るるは……手加減してくれるもん!」


 今年は、水無瀬先輩という遊び相手がいるからな。

 本気を出すかどうかはわからないけど。


 少なくとも手を抜くことはないだろう。


「確かに、最近るる、楽しそうだもん……」


 小夜鳴先輩。

 事ある毎に水無瀬先輩へちょっかいをかけている。

 前は麻雀でこちらのイカサマを見破られた。


 小夜鳴先輩は面白がって青春同好会、水無瀬先輩と関わってるんだろうけど。

 水無瀬先輩からすれば、迷惑な話なんだと思う。


 小夜鳴先輩と同じように、水無瀬先輩もこの小競り合いを楽しんでいる。

 とは、普段の水無瀬先輩の態度からは思えない。


「でも、周りの皆も水無瀬さんの作戦には従うみたいだし。問題はないけれど」

「従ってるんだ」

「うん。彼女二年生だし、作戦会議に参加している生徒のほとんどが三年生だから反発もあったけど。作戦内容を聞いている内に、みんな徐々に彼女の指示で動くようになったの」

「凄いな」

「カリスマよね~。私には全然無い才能ね」


 体育祭で勝ちたいと考えている人達が作戦会議に集まっている。

 そんな人たちが目を見張る水無瀬先輩の作戦。

 やっぱり青春同好会の参謀担当は凄かった。


「そんな水無瀬さんが、慕い続けてる火之浦さん。やっぱり恐ろしいわ」


 陽碧学園生徒会長。

 今年度の陽碧学園の方向性を決め、陽碧学園で行われる全ての行事の先頭に立つ。

 そんな初衣ねえの目の上のたんこぶ、青春同好会。

 今回の件でどうしてそこまで厄介なのか、身に染みているのだろう。


 数十秒の沈黙の後、初衣ねえの顔はみるみる赤くなっていき、


「あー! なんかイライラしてきた!」


 堪忍袋が、破裂した。


「ほら、行くよ!」

「あ、ちょ」


 初衣ねえは俺の手を握り走り始めた。

 予想外の初衣ねえの動きに、一瞬転びかけながらもすぐに同調する。


「さ、行くわよ!」

「どこに!」

「遊びに!」

「だから、どこに!」

「いろんなとこ!」


 突拍子もなく、市街地のほうへと駆り出される。

 陽碧学園に入学して、初衣ねえの新しい一面を知った。

 でも、それでも、初衣ねえは初衣ねえであり、

 以前と変わらない笑顔で、俺を前へ引っ張ってくれている。

実は、初衣ねえ、メインヒロインです。

実は、ね。


題名の通り、これは青春同好会メインのストーリーですが。

初衣ねえも全面的に推していきます。


そんな初衣ねえと、次回デート回です。

ブクマでチェック!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ