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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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48/81

48.花咲か爺さんです! ③

 開封。


「うえぇっ!?」


 闇鍋の蓋が開けられる。

 鍋の中身は、真っ黒な何かで埋め尽くされている。


 そもそも、鍋なんだから。

 液体は透明に近い何かであるべきじゃん。


 なんで、真っ黒に、なってんだよ!


「なんですかこれ!」

「小豆」


 水無瀬先輩、衝撃の一言。


「結構量多いし、なんだこりゃ!」

「御形、うるさい」

「いい感じの出汁になってますね~」

「……陽乃女先輩の食材は?」

「猪肉で~す」


 猪肉!?

 なぜそんなよく聞かない肉を!?


「ぼたん鍋って美味しいですよね~」

「ぼたん鍋って、小豆汁で作れるもんなんですか?」


 小豆で肉が柔らかくなる、とか?


 いや、ないな。


「私は、白菜よ!」

「普通ッ!!!」


 リーダーが一番普通だったわ!


「いや、でも小豆が一番の害悪でしょ!!」

「酷すぎ」

「これぞ、闇鍋って感じね!」

「うぅ……」

「早くたべましょ~」


 鍋の中。

 そのほとんどを小豆が侵食していた。


「これ、鍋っていうか、ぜんざいに近いな……」


 先輩三人は嬉しそうに。

 土浦はさらに顔面蒼白に。


 闇鍋、もとい闇ぜんざい?

 いざ実食。


「ぶふぅ……」


 あまったる。

 どっろどろで、口の中全体に小豆の味と匂いがぶわっと広がる。

 猪肉の嚙み切れない感じと、白菜のシャキシャキ感。

 しまいに、小豆に紛れてぐちゃぐちゃのグミが歯にへばりつく。

 調理の過程で崩れたのか、キウイの妙な酸味が残っている。


 総評。

 食べられない訳ではない。

 今ここで吐き捨てようとまでは思っていない。

 ただ、まずい。

 一噛みに、数十秒必要。

 飲み込むのに、一分以上はかかる。


「先輩方、よろしくお願いします」

「と、といれいってくる……」


 新人二人はギブアップです。

 あとは先輩三人で処理してください。


「寮に各自持って帰るという案はどうでしょうか?」


 汗だらだらの水無瀬先輩。

 なぜか敬語で、参謀としての責務を全う。

 箸を持った手を震わせながら火之浦先輩に提案。


「ほわあ~」


 新樹先輩はニコニコ微笑んだまま、動かなかった。


「これは、次回リベンジね……」


 リベンジって。 

 闇鍋なんて失敗して当たり前だと思うんだけど。

 どうしてそんな復讐に燃えているのでしょうか?


「リベンジって」


 水無瀬先輩も同じことを思ったらしい。


「と、とにかく残りのお菓子で花見続行よ!」


 バッと、火之浦先輩は鍋に蓋をした。


 闇鍋、封印完了。


 闇鍋は放っておいて、花見は継続なのだが。

 

「ねえ、青春同好会の皆さん?」


 外野から聞こえてきた聞き覚えの声。

 花見は中止せざるを得なくなった。


「いっ君。一応聞くけど、これは盗難品ではないのよね?」


 生徒会長のご登場だ。

 初衣ねえが示しているのは、俺達で作った桜の木。


 どこかで採ってきた本物の桜の木と思っているのだろう。

 

「ごめん。今喧嘩する元気ない」

「ですね~」


 水無瀬先輩と新樹先輩にやる気は感じられない。

 まあ、別にこの桜の木は盗んだわけではないし。


「どうも、生徒会長さん! 何か用?」

「ええ。青春同好会さんが、ここでなにやら騒いでいるという報告があってね」

「あら、風紀委員会じゃないのそういう仕事?」

「ここを偶然通りかかったの。それだけ」


 ちらっと、初衣ねえがこちらを見てくる。

 一つ咳ばらいをして、話を進める。


「で、この桜の木はなに?」

「私達で作ったの!」

「……確かに。というか、流石に精巧過ぎない?」

「だって、青春同好会だもの!」

「……??」


 大丈夫だ、初衣ねえ。

 俺も意味わからん。


「はあ。とりあえず何も悪さをしていないのは分かったけれど」


 初衣ねえは呆れ顔で見逃してくれた?


「勝手に校内の地面に杭を打つのはどうなのかしら」


 うーん。確かに。


「許可いらない」

「いらないけれど、ここまで大々的にやるならあるに越したことはないわ」

「面倒」

「水無瀬さん? あなた、一番常識あるんだからしっかりしてくれない?」

「なにその謎の期待」

「それに、いっ君も。それぐらいはできるでしょ?」

「うぅ」

「なによ! 伊久留は関係ないわ!」


 火之浦先輩。立ち上がって抗議を始める。


「あら? いっ君とは私のほうが付き合い長いし」

「関係ないわ!」

「火之浦さんはそう思っていればいいんじゃない?」


 初衣ねえは強気に言葉を返す。

 ちょっと一瞬即発な雰囲気がある。


 が、先輩二人闇鍋にあてられて助け舟は出さなかった。

 土浦はトイレで、この場にいない。

 それに、まあ、俺もとりあえず助ける元気もない。


 よし。

 ここは休んでおこう。

 

「会長? まだ仕事はありますよ」


 数分の口喧嘩の後、大導寺先輩がやってくる。

 大導寺先輩の言葉を無視して言い合う二人。

 大導寺先輩は初衣ねえの首根っこを捕まえて、その場を後にする。


 引きずられながらも口喧嘩を絶やさない初衣ねえ。

 少し面白かった。


「ふん!」


 火之浦先輩は初衣ねえが見えなくなるんで視線を逸らさなかった。


「ふう。片付け、やろう」

「ですね~」

「これ、どこに持っていくんですか?」

「また橋の下の隠し場所でいいと思う」

「御形君、お手伝いお願いします~」

「了解です」


 何を思っているのか、微動だにしない火之浦先輩。

 他三人で、後片付けを始める。


 封印された闇鍋を見る。

 うん。

 これからは俺も青春同好会の作戦にしっかり関わろうと思う。


 そして。

 土浦は、まだトイレから帰ってこない。

この闇鍋は橋の下の隠し場所に封印されることになりました。

きっといつか、水無瀬先輩が処理方法を考えてくれます。


次回、初衣ねえと何かが起こる!?


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