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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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46.花咲か爺さんです! ①

「枯れ木に花を咲かせるわ!」


 聞いたことのあるコメント。

 

 桜のようなもの、の出来はかなり良かった。

 本物と見比べれば流石に劣るけど。

 遠目に見れば遜色ない。


 土日を挟んだ月曜日の放課後。

 行き交う生徒から奇異な視線を向けられた。


「なんかまたやってるよ、青春同好会」

「今度は桜の木でも盗んできたの?」

「犯罪者?」


 と、いろんな噂が聞こえてくる。


「な、なにをしてるんですか!?」


 運んでいる途中に風紀委員に見つかり、事情聴取を受けた。


 桜の木が偽物であることは渋々認められたが。

 道中風紀委員や教師達に呼び止められ続けた。

 その都度同じ説明を繰り返す。

 目的地に向かうまで、かなり時間を要した。


「それほど似てるんですかね、これ」

「頑張った甲斐があるわね!」


 そういう風に本物だと思われるほどの桜の木。

 結局新樹先輩が連れてきた凄腕技術の方々によって完成された。

 青春同好会の皆も頑張っていたんだけどな。


「やっぱり、青春同好会に器用な人も必要よ!」


 綺麗に整った桜の木を見て、火之浦先輩はそう宣言した。

 いつか俺にも青春同好会の後輩ができるのか、と考える。

 ワクワクする気持ちは微塵も湧かなかった。


 中庭で桜の木を立てる場所を探す。


「どう立てるの!」

「そのまま地面に、ですか?」

「いや、それは困難。ここの地面はどこも固い」

「私が一生懸命頑張りますけど~」

「それだと、これが壊れちゃうでしょ」


 水無瀬先輩は新樹先輩が持つハンマーを指さす。

 中身はホームセンターで買ったただの木材。

 新樹先輩が振り上げたハンマーで叩かれたら?


 確かにひとたまりもない。

 

「御形、買ってきてくれた?」

「はい」


 少し大きめの杭と打ち付けるためのハンマー。

 ホームセンターで昨日の夜に俺が購入したものだ。


 この杭を打ち付けて固定。

 そこにこの桜の木をぐるぐる巻きにして固定する。


「壊さないでよ!」


 数日も費やした一品。

 火之浦先輩も壊れることを危惧していた。


「じゃ、陽乃女。あの辺にしようか」


 邪魔にならなそうな場所を指さす。

 中庭の端の方。


 火之浦先輩は誰からも注目される中心に建てたいと言っていたらしいが。

 もちろん、水無瀬先輩は却下。

 風紀委員のお世話になるのはまっぴらごめん、という理由。

 それは俺も同意見だ。


「じゃあ、行きますよ~」

「優しくですよ、新樹先輩!」

「頑張って、陽乃女お姉ちゃん!」


 というわけで、少し隠れた場所で花咲か爺さんの準備。

 水無瀬先輩と新樹先輩で軸となる杭を準備している。

 火之浦先輩は何か準備があるとどこかへ行った。


「作業ないなら、用意してたお菓子とか持ってきて」

 

 水無瀬先輩から。

 で、余りもの新人二人が行くことになる。


「はあ」


 露骨に嫌がる土浦。

 目的の場所を知っているだろう。

 土浦は先をどんどん歩いていく。


 俺は知らない。

 先輩方から話を聞こうとしたんだけど。

 あいつ、文句言いながらどっか行くんだもん。


 だから、ここは土浦に頼るしかないのだ。

 彼女の数歩後ろを歩いていく。

 

「ついてこないでよ」

「そういう命令だったろ?」

「ふん! 私一人でもいけるもん!」

「重い荷物だったらどうするんだ。土浦じゃ、無理だろ」

「で、できるもん!!!」


 強情土浦と喧嘩腰の会話をしながら進んでいく。

 校舎に入り、あっちへいったりこっちへいったり。

 上に上がったと思ったら、急に立ち止まって元へ戻る。

 きょろきょろ、困った表情で周囲を見回す。

 

「うぅ……」


 ああ、これ迷子だ。

 とりあえず、先輩達にメッセージでも飛ばして聞いてみよう。


 数十秒で返信が来る。

 今日使うものは、以前学園に不法侵入した時に替えの服が合った場所。

 あの橋の下の隠し場所にあるらしい。

 土浦は、このことを知らない。

 どうしたものか。


「うぅ……」


 さっきまでは、勝手にしろとは思っていたけど。

 涙目でウロウロする土浦。

 段々可哀そうになってくる。


 だが、ここで俺が指摘すれば、きっと土浦は怒るだろう。

 どうにか土浦のプライドを傷つけない方法が。


「土浦、少しトイレに行くから待ってくれ」

「わ、わかったわよ!」


 とりあえずトイレへ避難。

 水無瀬先輩にメッセージを送る。


 『土浦、目的場所を知らないみたいなので、教えてあげてください』


 そんなメッセージを送った。

 少し待つと、返信が返ってくる。


 『了解。優しいね』


 優しい、は余計だ。


 トイレから外に出ると、土浦は自信満々な表情で、


「遅すぎ!」


 と、自信満々に俺を待っていた。

 ほんと、単純だなあいつは。

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