45.学園内で仕込みをします!
必要なものを沢山買い、学園へ向かう。
今日は学園側に閉門後の活動の許可をもらっている。
夜の八時までは活動することが可能。
空き教室を一つ借りている。
今日買ったものは荷台を借りて学園へ持っていく。
凄く重かったが、なんとか持っていくことに成功。
これも全て新樹先輩のおかげだった。
本当に、頭が上がりません。
「さあ、桜の木を作るのよ!」
木材とピンク色の紙。
美術用の絵具。ノコギリなどの工具。
一本、俺の二倍ぐらいの高さの木材がある。
これを中心に枝をつけて大きくしていく。
木材同士の接着するのは難しそうだけど。
なんとかするしかないんだろう。
「あ、あとはよろしく……」
水無瀬先輩は、えらく疲れ切っていた。
ちょっとした荷物を持って学園まで来ただけなのに。
体力切れだ。
「わ、私も疲れたぁ……」
土浦も同様。
水無瀬先輩と違うところは。
何も手伝っていないところ。
ちなみに、買ったチョコと水は渡している。
しっかり感謝の言葉も受け取った。
めっちゃ小さい声で。
少し聞き返そうとしたら蹴られた。
現状元気なのは、俺と火之浦先輩と新樹先輩だ。
いつも通りというかなんというか。
「二人とも、もうちょい頑張ってください」
特に土浦。
こいつ本当に何もしない。
「本当に体力ですね~」
「まあ、凍里も萌揺も役割が違うから仕方がないわ!」
と、先輩二人は早速作業へ移る。
疲れ果てて倒れている二人を放っておいて。
俺もそれに続く。
火之浦先輩に何を手伝えばいいかを聞いたところ。
「この木材に絵具で色をつけるの!」
ぱっぱと、絵具一式を渡される。
「どういう色合いで?」
「木っぽくよ!」
「新樹先輩?」
「はいは~い。今から私が言う分量で絵具を混ぜてくださーい」
役に立たない我らがリーダーの代わり。
新樹先輩が木っぽい色の作り方を教えてくれた。
その通り作り上げる。
結果、まさしく樹木!て感じの色が作れた。
「凄いですね、新樹先輩」
「一度作ったことがあるんですよ~」
「木の色をですか?」
「前学園内でかくれんぼした時ですかね~」
「あったわね! 陽之女だけ、結局見つけられなかったの」
「木皮みたいな布を作ったんですよ~」
なるほど。
その経験を覚えていたと。
そんな技術をどこから手に入れたのだろうか。
新樹先輩、謎が深まる。
「じゃあ、私達はいい感じに桜を作るわ!」
「ざっくばらんにしていきましょ~」
俺は樹木部分担当。
火之浦先輩と新樹先輩は花部分担当だ。
身長の倍近くある木材に色を塗っていく。
まずは満遍なく。
次にところどころ色の濃さがでるようにしていく。
作業工程や不明部分は新樹先輩に聞きながら。
おかげか、色だけでもいい感じに仕上がっていく。
ただ素人の腕前なので、お粗末なものなんだけどね。
「参加する」
「わ、私はどうすればいい……?」
倒れていた残りの二人も体力が回復したのか。
作業に参加する。
二人が参加したのは火之浦先輩たちの方だけど。
結局俺は、一人で色塗りだ。
「おい」
そんな作業途中。
七時を回った頃、空き教室の扉が開かれる。
「なんかまた悪さしてるのか?」
現れたのは、風紀委員長の武見先輩だった。
「げ!」
「面倒」
「あらま~」
「……誰だっけ?」
青春同好会、女性陣の様々な反応。
肯定的な反応でもない。
彼女たちの反応を見て、武見先輩もムッとしていた。
「どうしてそんな反応をするんだよ」
「だって」
「そりゃ~」
「めんどくさいもの!」
「……おい、御形。手綱はしっかり握っておけよ」
「いや、それは生徒会や風紀委員の皆様にお任せします」
「ったく。本当に頭が痛くなる奴らだ……」
なんか本当に頭が痛そうだ。
「武見先輩は風紀委員の仕事ですか?」
「そうだよ。担当の風紀委員は、七時に見回りして仕事が終了なんだ」
「風紀委員長でも、そういう仕事をするんですね」
「委員長だからって理由で、楽するわけにはいかないだろ?」
流石は風紀委員長。
上に立つ者であっても。
驕らずに風紀委員としての使命を全うしている。
「大変ね!」
対して、俺達のリーダー。
そんなことどうでもいいと言わんばかりの適当な感想だった。
まあ、これはこれで俺はいいと思うけどね。
「で、お前らは申請してるのか?」
「してるわよ!」
「……どこにも青春同好会って名前はないんだが?」
持っていたバインダーをボールペンで指し示す。
六時以降の活動の許可を得た人達の一覧表か。
確かに、どこにも青春同好会なんて名前はない。
「……聞こうか。お前らは何という団体名だ?」
「桜同好会!!」
なにその団体!?
武見先輩はリストの中から探し始める。
目を数回擦って、再度確認。
そして、ため息。
頭を抱えた。
「先生達も、しっかりしてくれないと」
「しょうがない。私達とは無関係の生徒が申請したから」
「本当に穴を突くのが上手いな、水無瀬」
青春同好会では、申請が却下される可能性が高い。
だから、別団体を作り上げて、申請書を作り上げた。
だが、水無瀬先輩はそこでは終わらない。
偽の申請書を、青春同好会以外の誰かに頼んだ。
申請書に書くべきなのは、代表者名のみ。
その団体に所属する者、全員の名前を書く必要はない。
そんな水無瀬先輩の作戦。
自信満々に説明していたのは、火之浦先輩。
「…いや、規則は守られているから何も言うまい。八時過ぎたら撤収するように。八時半になっても学園内にいるのなら、申請書の件も含めて罰を受けてもらうからな」
十数秒悩んだ末、武見先輩は見逃してくれるようだった。
「どうせ反省室なんて…・・・・・」
「反省室、三回分にお前らはサービスでしといてやる」
そう言い残して、武見先輩は風紀委員の業務へと戻った。
「八時まで一時間切ってますけど、ギリギリまで作業しますか?」
「片付けとか考えると、早めに切り上げないと」
「了解です~」
「え~! もっと遊びたいわ!」
「リーダー。流石に反省室三回分は嫌」
多数決の結果。
二対三で、早めに切り上げることが決定。
流石に反省室三回分は、賢い人達でもきついみたいだ。
というわけで、十分程度作業した後撤退。
空き教室を元通り綺麗にする。
発つ青春同好会は、跡を濁さない。
青春同好会の活動は一旦終了した。
陽碧学園って、実はセキュリティガバガバなんじゃないかと。
書いていて思います。
同好会関係に関して、だけですからね。
次回、桜が完成するのか? いつ春は終わるのか?
続きはブクマでチェック!!




