44.青春同好会とのショッピング!
木の葉っぱを取って枯れ木を用意する。
その案は、先輩二人と一緒に全力拒否。
風紀委員案件というのもある。
加えて、そこに労力を割くのは意味がないという結論。
「じゃあ、行くわよ」
木は、それっぽいものを作るということになった。
ホームセンターなら、それっぽいものが見つかるはずだと。
「そもそも木っぽく見える何かってなんですかね」
ホームセンターにやってきた。
ホームセンター独特の匂いがする。
その匂いで、土浦はどうやら気分が悪くなったらしい。
新樹先輩の肩を借りて歩いている。
「適当にそれっぽいやつを見つけてくれれば、私の知り合いに頼めばそれっぽい感じに仕上げてくれると思いますよ~」
「新樹先輩、そんな凄い人と知り合いって凄いですね」
新樹先輩、しれっと凄いことを言っていた。
どうやらそこまで本格的なものを探さなくてもいいらしい。
とりあえずそれっぽいものを見つければいい。
なければそれっぽいものを作ればいいと。
「ねえ、どうやったら本物の木と間違えられるかしら!」
「え、リーダー。そこまで凝るつもりなの?」
「もちろんよ!」
このリーダー。
やるなら、とことん本気なのだ。
「うぅ……ホームセンターの独特の匂いがぁ」
「そんなにか?」
「萌揺ちゃんは、そもそも長時間外にいられないんですよ~」
「そうなんですか?」
「ごてごてのインドア派ですからね~。私達と会うまで萌揺ちゃんは……」
「こ、こいつに教えないで……」
「だ、そうです~」
「まあ、興味もないですから」
「きょ、興味ぐらいは持ってよ!」
どっちだよ。
青春同好会で一番の虚弱体質らしい土浦。
なんとか踏ん張って先輩達に付いていこうとしている。
悪態をつかれるのは嫌だけど。
それでも体調の悪いやつは放っておけない。
「新樹先輩、ちょっと個人的な買い物行ってきます」
「わかりました~。萌揺ちゃんはお任せください」
「そのまま帰ればいいのに……」
そんな体調悪そうな顔で睨まれても怖くないよ。
気分の悪さを解消できるものを買ってやろうと思う。
水とかお茶かな。
あとはチョコでも買っておこうか。
ホームセンター隅のお菓子売り場へ。
そこで水と一口サイズのチョコがたくさん入ったものを探す。
「なにしてるの?」
水とチョコを見つけて、レジへ向かおうとした矢先。
水無瀬先輩から声を掛けられる。
「いや、ちょっと小腹が」
「萌揺は、クランチチョコだと喜ぶよ」
「分かってるなら、知らない体で話しかけないでくださいよ」
「意外。御形は萌揺のこと苦手なのかと」
「苦手ではありますけど」
凄い邪険な態度取られるし。
先輩三人への対応に比べて酷いことされているなとは思う。
苦手だし、ちょっと嫌いになりそうな部分もあるけど。
「でも、まあ、仲間ですし」
「そう」
「あれでも、青春同好会の新人ですから。俺と同じで」
「御形は優しい。萌揺をよろしく」
ポンと肩を叩かれる。
「結局手作りで、少し大きい木を作ることになりそう」
「それっぽいのはなかったんですか?」
「無かった。これ以上探すより、作ってしまった方が早い」
「それは言えてます」
「陽之女が協力してくれるって言ってるし」
「ああ、それ聞きました。凄いですね、新樹先輩。そんな技術を持ったお知り合いがいるだなんて」
「あれ、知らないの?」
「何がです?」
そういえば言ってなかったっけ。
そんな感じに水無瀬先輩は首をかしげる。
「陽之女は、世界で人気のファッションブランドのお嬢様」
「え?」
「『アマテラス』っていう名前。知ってる?」
「知ってますよ! お手軽な服から高価な服まで、色々なもの出してるやつじゃないですか」
テレビやSNS、コマーシャルとかでよく聞く単語。
ファッションに疎い俺でも知っているブランドの名前だ。
新樹先輩、そんな大会社のご令嬢でしたか。
「しかも、自分でアパレルブランドもいくつか作っているらしい」
「え?」
「かなりのお金持ち出身で、自分自身でもお金を稼いでるんだよ」
「ええ!?」
「青春同好会の活動にも結構出資してるから。今度お礼言っといてよ」
「出資って……」
そんな会社みたいな組織でもないだろう。
部活ですらないのに。
出資なんて面白い単語を使うんじゃありません。
「じゃ、待ってるから。早く来て」
「うす」
水無瀬先輩はそのままどこかへと消えていった。
とりあえず手に持ったものを買いに、レジへ向かう。
新樹先輩、か。
今度からあまり逆らわないようにしようかな。
色々と怖いよ、新樹先輩。
実は、新樹先輩が青春同好会で一番スペックが高いですね。
でも、彼女には唯一足りていないものがあり、
実はそれが結構なコンプレックスです。
そんな新樹先輩の先が気になる方は、ぜひブクマをよろしくお願いします。
新樹先輩も僕も励みになります。




