41.紫組の作戦会議です! ②
体育祭の組にリーダーという枠は存在しない。
だが、今小夜鳴先輩が前に立って仕切っている。
「それでは、まずは体育祭の確認からね」
適材適所というやつだ。
というか、小夜鳴先輩がまとめる以外思いつかない。
それは他三年生も分かっているのだろう。
小夜鳴先輩の仕切る作戦会議。
予想以上にサクサク進んでいく。
「体育祭の競技は、十個」
野球。
サッカー。
バスケ。
バレー。
テニス。
バドミントン。
卓球。
マラソンリレー。
水泳。
宝探し。
書記担当の女子生徒が、ホワイトボードに書いていく。
やはり最後の『宝探し』があまりにも目立ちすぎる。
初衣ねえは何を考えているんだ……?
「十個の内、まあ、九個は説明不要でしょう」
「宝探しのルールを知ってるの!」
「ええ」
火之浦先輩の疑問に、小夜鳴先輩は笑って答える。
「全ての授業が終わった後、掲示板にて詳細が掲載されてるわ。コピーは済ませてありますね?」
「おう。人数分あるから、配るぞ」
一番前の席に座っていた坊主の男子生徒。
参加メンバー全員に一枚の紙を配った。
宝探しのルールが記載されている。
掲示板に掲載された内容をコピーしてきてくれたのだ。
流石小夜鳴先輩、手が早い。
「いいわね! 運動にも良さそう!」
「美琴ちゃんの言う通り。初衣ちゃんも、いい競技を考えたわ」
宝探しのルールは至って単純。
陽碧市全体に隠された、球を見つける。
何個隠されているかは明記されていない。
見つけた玉は本部へ持っていく。
それによって、自分の組への点数加算となる。
「他の競技は一度勝てば五ポイント。そして、最終的な順位でポイントが追加で振り分けられます」
「ありがとう。さて、他の競技に力を入れるのはもちろんだけど、この宝探しもかなり重要よ。全員が全員運動が得意というわけじゃないからね。そういう人も輝ける舞台、というわけね」
「いいわね! そういう考え、とても好きよ!」
火之浦先輩と同意見だ。
初衣ねえ、素晴らしい競技を考えたものだ。
「では、元気な元気な青春同好会のお二人さん?」
「へ?」
「なに!」
「この宝探し、あなた達ならどう攻略する?」
「どう、攻略って……」
突然意見を求められる。
「もちろん! 本部に向かうまでに、他の組の玉を奪取ね!」
俺とは違って、火之浦先輩は即答。
体育祭とはなんなのだろうか。
俺も含めて他のメンバー全員同じ疑問を抱いた。
だがただ一人。
拍手をしてその答えを称える人がいる。
「ええ。だから私はあなた達をスカウトしたの」
小夜鳴先輩も火之浦先輩と同意見らしく。
「紫組が狙うのはもちろん優勝。そのためにはルールの穴を付いていかないといけないわ」
笑いながら、そんなことを言う。
「それって、体育祭的にありなんですか?」
俺の疑問に、小夜鳴先輩は薄く笑って、
「体育祭なんて言葉は飾り。その本質は真剣勝負。三年最後の体育祭を、敗北という二文字の思い出にしたくないのよ。それはね、三年生全員の総意でもあるの」
他の三年生も頷いていた。
ちょっと疑問の表情を浮かべていたけど。
「いいわね! その本気、確かに受け取ったわ!」
「ええ。ありがとう」
「勝つわよ!」
「もちろん」
ガッチリと、小夜鳴先輩と火之浦先輩が固い握手。
途端、沸き立つ紫組メンバー。
この二人が組んだ体育祭、とんでもないことになりそうだ。
色々な意味で。
ふと、麻雀バトルや食堂でのやり取りを思い出した。
「小夜鳴先輩、水無瀬先輩との勝負で勝ちたいだけでは……?」
「それも含めてね」
小夜鳴先輩は、やはり笑みを浮かべるだけだった。
多分、火之浦先輩と小夜鳴先輩は馬が合います。
かなり息の合った連携をしてくれるはずです。
でも、火之浦先輩は水無瀬先輩の方が好きです。
僕も、水無瀬先輩好き。
水無瀬先輩好きな方は、コメントで教えてください。




