39.体育祭に向けての作戦会議です! ②
青春同好会がどうやったら、カメラに映ることができるのか。
「萌揺の力でハッキングよ!」
初手、物騒な意見が飛び出した。
「……生配信って全国ネットですか?」
「もちろんよ!」
「却下で」
火之浦先輩はダメだ。
やはりここは、水無瀬先輩か。
「仲間割れ」
と、水無瀬先輩の口から出た答え。
言ってる意味が分からず、俺と土浦は互いに視線を合わせる。
「どういう意味?」
「悪者軍団が仲間割れを始めたら、面白いと思ったから」
青春同好会内で戦うということか。
「アニメや漫画も、そういう展開があると面白ですよね~」
「ちょうど組も分かれているんだし、本気で戦う私達を見れば広報委員会も注目すると思う」
「結局やることは変わらず、と?」
当初の予定通り、体育祭を楽しめばいい。
つまりは、そういうことになる。
「でも、戦うってどうやってですか?」
全員が同じ競技に選ばれるようにする、とか?
「体育祭の開催が告知されると、作戦とかそういったことを考える人達が集まる。大体三年生の人が中心になるけど」
「競技で戦うというより、組と戦うみたいな感じですか?」
「そう、合ってるわ。新人君は、筋がいいわね」
小夜鳴先輩が突然やってきた。
近くの椅子を取って、こちらの卓に近づけて座った
周囲の生徒達もどこか安心したかのような表情を見せていた。
ようやく味方がやってきてくれた。
という感じか。
「や、凍里ちゃん」
「どうも」
小夜鳴先輩と水無瀬先輩。
挨拶を交わすだけなのに、なんでそんなピリッとするんだ。
「久しぶり!」
「ふふ。美琴ちゃんはいつもげんきね」
「どうもで~す」
「陽乃女ちゃんも。今度服のサンプル見せてちょうだい」
水無瀬先輩とは違って、火之浦先輩と新樹先輩は仲良さげだった。
土浦は嫌そうな顔をしている。
どうやら土浦も小夜鳴先輩のことが苦手らしい。
大方、青春同好会の活動に茶々を入れる厄介者。
みたいに認識しているんだろう。
「御形君、あの時の伝言、伝えてくれたかしら?」
「え、はい。それは」
「伝わってる」
俺が答えるよりも早く、水無瀬先輩が代わりに答えてくれる。
ありったけの敵意を込めて。
「私、紫組なのよね」
さっきの話、聞こえていたのだろうか?
ただ体育祭での自分の所属組を伝えただけなのだが。
それは、水無瀬先輩にしてみれば、宣戦布告。
「で、なに?」
「実は今日の放課後、紫組の作戦会議があるの。私も中心メンバーに選ばれてね。それでもし良ければ、同じ組の美琴ちゃんにも中心メンバーになってもらおうかなと思って」
「…………」
水無瀬先輩が思いっきり睨む。
「いいわね! やるわ!」
んー、ちょっとは空気を読んでリーダー。
「あら、美琴ちゃん来てくれるの?」
「もちろん! ちょうど体育祭全力で勝ちに行くって話をしたばっかりだから!」
「それは嬉しいわ。私も最後の体育祭、絶対勝ちたいと思っていたから。ついでに、御形君も一緒に来てね?」
「え?」
え?
「それじゃ、保健委員の仕事があるから私はこれで」
「じゃあ、あとでね!」
「凍里ちゃんも、私達の生徒会長をよろしくね」
「……はあ」
小夜鳴先輩は、端正な顔に笑みを浮かべて食堂を後にした。
最後にちらっと言っていたけど。
水無瀬先輩と初衣ねえは同じ組なのか。
不安だけれども。
「青と紫か……」
俺の知る限り、知略に長けた二人が体育祭で激突する。
そしてそれは、生徒会会長と青春同好会リーダーとの激突でもあるわけだ。
ふむ。
なんというか、燃える展開というやつだ。
「御形」
なんて考えている俺の襟を掴まれる。
水無瀬先輩が怒りを滲ませながら詰め寄ってくる。
「生徒会長と知り合いでしょ? 連絡先教えて」
「え……」
「教えなさい」
「あ、はい」
こっわ。
水無瀬先輩、こっわ。
小夜鳴先輩率いる、紫組。
水無瀬先輩率いる、青組。
どちらの組に所属したいですか?
コメント等でぜひ教えてください。
僕は小夜鳴先輩。
お姉さん好き。




