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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で体育祭で勝ちを狙うことを誓います!

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38/82

38.体育祭に向けての作戦会議です! ①

 陽碧学園の食堂は立派なものだった。

 

 イメージは、ショッピングモールのフードコートだ。

 料理を出す場所が数か所。

 それぞれに和食・洋食・中華など多種多様なメニュー。

 購買も併設。

 ちょっとした小腹を満たすおにぎりやパン。

 色々なものがこの食堂という場所に集まっている。


 もちろん、食堂にはご飯を食べるスペースが存在する。

 特に制限もないため、お昼ご飯の時間以外も人で賑わっていたりする。

 お昼休みは席の取り合い。

 取り合いと言っても、譲り合いの精神は忘れない。

 陽碧学園の生徒達は平和的に食堂での日々を過ごしている。


「今日もいつもの場所が空いているわ!」


 だが、人間には防衛本能というものが存在する。


 熱いものには手を出さない。

 刃物を自分に向けたりしない。

 それが危険なことだと分かっているから。

 それを回避しようとする行動を無意識のうちにしてしまう。


 では、危なそうな人が目の前にいたら? 

 それはもちろん。

 その人を避けるように立ち回るだろう。


「悪名は役に立つことばかりだね」

「気にしなければ、なんら問題ないですね~」


 ならば、生徒達で密集したこの食堂という場所。

 そこで、そんな状況にあったらどうなるか?


「うぅ、周りの視線が痛い……」

「土浦って、幼馴染なのに全然毛色が違うよな」


 食堂、飲食スペースの隅。

 人がごった返している中で、そこだけ何故かスペースが開いている。


 その隅に座るのは、五人の生徒。

 男一人に、女四人。


 近くに座る生徒達はご飯を食べてはいるものの。

 チラチラとそのグループに目を向けている。


「さあ、作戦会議よ!」


 彼彼女らは、青春同好会。

 陽碧学園に悪名轟かせる軍団。


「本当に青春同好会って、嫌われてるんですね」


 周囲の状況を見てそんなことを言う。


 前一人で食堂に来たときは、人が多すぎて席にすら座れなかった。

 なのに、俺達青春同好会の周りのテーブルには誰もいない。


 危険物には手を出してはならない、

 そんな当たり前のことを皆が徹底しているだけ。

 結果そうなるわけだが。


「嫌われているというか、巻き込まれるのが怖いだけ」

「面白そうな鬼、どうして近づいてこないんですかね~」

「喧しい人達がいない方が、お姉ちゃん達の声が聴けるからいいけど」


 土浦は少しビビっているけど。

 先輩二人はあまり気にしてなさそうだ。


「それで、集まった理由は」

「体育祭のことが告知されたからね!」


 どやっと、自分のタブレットを火之浦先輩が見せてくる。

 

 『体育祭開催のお知らせ』

 と、大きな見出しで掲示板が更新されていた。


「去年は障害物マラソン大会」

「今年は」


 自分のタブレットで確認。


 今年の体育祭は、十個のスポーツで勝敗をつける。


 野球。

 サッカー。

 バスケ。

 バレー。

 テニス。

 バドミントン。

 卓球。

 マラソンリレー。

 水泳。

 そして、宝探し。


 宝探し?


「なんすか、この宝探しって」


 スポーツとは?


「全員が参加できるような配慮だと思う」

「そのための対策なんでしょうね~」

「去年は凍里が、ずっっと文句言ってたわね!」

「……言ってない」


 運動が不得意な水無瀬先輩にとって。

 この体育祭というのは面倒くさい行事なんだろうな。

 各スポーツの具体的な内容については、また後日ということらしい。


「でも、体育祭と青春同好会の活動何か関係でも?」

「大ありよ、伊久留!」


 バシンと、両頬を火之浦先輩に叩かれた。


「体育祭はね、広報委員会によって生中継されるの!」

「しかも、後日は編集されたダイジェスト版も公開される」

「青春同好会の宣伝にはばっちり~」

「だから、ここで目立っちゃおうというわけ!」


 三人の息の合ったコンビネーション。


 なるほど。

 よくわかった。


「体育祭で名前が売れれば、同時に青春同好会も売れることになる」

「そうよ! さっすが、伊久留。物分かりがいいわね!」

「有名になったらどうなるんですか?」

「有名になったら、もっと楽しいことができるじゃない!」


 とのことだ。

 流石青春同好会、流石火之浦先輩。


 具体的な案はないようで、漠然と楽しいことができると言い張っている。

 漠然とし過ぎて、理由になっていないように思えるが。

 先輩達の手にかかれば、どんな状況だって楽しくしてみせるのだろう。


「でも、俺達組は別々ですよね」

「そう!」


 俺と火之浦先輩が、紫。

 新樹先輩と土浦が、黄。

 水無瀬先輩は、青。

 五人のメンバーは、三つの組へと分けられた。


 例えば、火之浦先輩がテニスで優勝すれば、同時に名も売れる。

 この体育祭で、青春同好会としてどう立ち回るべきか。


「そこをどうするのかの作戦会議よ!」

「体育祭の、その、広報委員の生中継ってどういうのを映すんですか?」

「盛り上がっているところだよ」

「優勝者とか、そういう特に目立っていた人にインタビューとかしてましたね~」

「私は去年されたわよ!」


 火之浦先輩が?


「カメラの前ではしゃいでいたから、インタビューを受けただけ」

「面白半分ですね~」

「すぐに中断した」

「私、動画保存したよ!」


 そういう目立ち方? 


「近寄ったら色々と不味いことは、広報委員全員周知の事実ですからね~」

「今年は難しいだろうね」


 確かに去年の体育祭時点ではなかったと聞く。

 だから火之浦先輩はインタビューを受けることができた。

 一応、普通の一般生徒だったんだし。


 だが、今年は? 

 絶対無理。

 歩く爆弾に近づく人なんて誰もいない。

 この食堂と同じ状況だ。


「だから、やるなら他の手段ね!」


 そんなことで、青春同好会は止まらない。

 他の手段を考えるまで、だ。

食堂は青春同好会が集まる時に多く使います。

青春同好会も、僕も。


体育祭編、本格的に始まります!

続きが気になる方は、ブクマをよろしくお願いします。

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