35.伊久留(いっ君)は、私と予定があるの!
「伊久留は今日、私と遊ぶのよ!」
「駄目よ! いっ君は今日私と予定があるんだから!」
いや、申し訳ないけど。
二人とも事前に何も連絡してきてませんから。
「離しなさい、火之浦美琴!」
「嫌よ!」
二人の女性から逆方向へと引っ張られる。
あっちへこっちへユラユラ揺れる。
ああ、これが青春なのかと。
美人二人からこういうことされるってのは。
全学生の憧れ。
むふ
「んなわけあるか!」
痛いっつうの、放せっつうの!!
「落ち着けよ、二人!!」
ギャーギャー喚き散らす二人に俺の言葉は届かない。
マーズへ入っていく学生達が、こちらを見てくる。
なにこれ?みたいな表情でこっちを見てくる。
そりゃ、生徒会長が喚き散らしているんだからな。
そういう表情にもなるわ。
未だ引っ張られ続ける腕を力尽くで振り払う。
両者態勢を崩しながらも、コケることはなかった。
「いっ君は何をする予定だったの?」
「私達は今から運動よ!」
「別に、火之浦美琴に聞いてないんですけど」
「だって、伊久留の予定は私の予定よ」
「それ、新手のジャイアニズムじゃん」
「ふん。でも、それはちょうどいいわ。私も特にいっ君と何かしようと考えてなかったし」
「え? じゃあ、なんで俺に会いに来たの?」
「じゃあ、火之浦美琴。何かしらのスポーツで勝負しましょう」
「いいわね! 楽しそう!」
勝手に話がどんどん進んでいく。
生徒達をより良い学園生活へと導く生徒会長。
生徒達を巻き込んで混沌とした学園生活へと巻き込む青春同好会リーダー。
いわば、対極に位置する存在の二人。
その実、根本的なところが似通っている。
やりたいと思ったことを見つければ、自分の周りが見えなくなるところ。
ともに組織のトップに立つ人間としてその性格は少々そぐわないのだが。
それでも周りからの信頼は厚い、圧倒的なカリスマ性。
とまあ、いい感じに言葉で表してみたが、
端的に言えば、我儘者だということだ。
そして、そんな我儘二人に振り回される。
これが、青春というものなのだろうか?
次回、なにかしらのスポーツ対決!
ぜひブクマなどをして、更新をお待ちください!
そろそろ分かってきた方もいるとは思いますが、
火之浦美琴と鐘撞初衣の争いがメインになること多いです。




