32.終結! VS 生徒会です! ④
「国士無双よ!!!」
バシンと思いっきり手牌を叩きつけた。
多分マナー違反。
無粋だから、声に出してツッコまないでおく。
「な、なによそれ!」
初衣ねえは国士無双を知らないみたいだ。
「会長。国士無双ですよ。役満です。負けです」
「何それ知らない!!」
「ふふーん! どうよ、これが青春同好会の実力よ!!」
「ねえ、そんなわけないわ! 絶対何かしたわ!!」
「そんなわけあるわけないじゃない! 文句を言う前に負けを認めなさい!」
イカサマしてる人が、偉そうだな~。
「るる! これ本当にダメなの?」
「そうね。役満を出されたら、負けね」
「ほら、保健委員長もそういってるけど? 負けを認める?」
「い、いやよ!」
「でも、麻雀は点数を競うゲームだから。生徒会側に点数がなくなったら負け」
「そ、そんな……るる、本当に負けなの?」
泣きっ面初衣ねえ。
「そうね、役満の点数だったら、有無を言わせずに負けね」
今回は牌を捨てた小夜鳴先輩が原因だ。
小夜鳴先輩が負けた原因ということになる。
のだが。
それにしては結構冷静だな。
「生徒会の負けになっちゃうけど、どうしようかしら」
「え、本当に負けなの?」
「そうよ、初衣ちゃん。役満っていうのは、そういう役なの」
「さあ、負けを認めなさい!」
「ええ、初衣ちゃん。負けを認めなければならないわ」
「そんな……」
「でも、その前に」
小夜鳴先輩は雀卓を指さした。
「一度、全員自分の捨てた牌を確認しましょうか?」
「え?」
「どういうこと、るる?」
プレイヤー。
そして、観戦している人。
全員の視線が捨てられた牌へと集中する。
俺も国士無双を作り上げた火之浦先輩の捨てた牌を確認した。
「麻雀にはフリテンというルールがあるわね」
水無瀬先輩が小さく声を漏らす。
「自分の捨てた牌で、ロンアガリができないっていうやつね。私が最後に切ったのは、『北』の牌。美琴ちゃんはその時にロンアガリをしたみたいだけど、美琴ちゃんちょっと前に『北』を捨ててるわ」
見る。
確かに火之浦先輩が捨てた牌の中に、『北』の牌があった。
が、俺は知っている。
火之浦先輩と水無瀬先輩が行った交換。
フリテンにならないように行われていたこと。
事実、俺が後ろで確認していた時。
北の牌はなかったはずだ。
「これで、フリテン。さっきの国士無双は無効よ。さあ、勝負は最初からね」
小夜鳴先輩はふっと笑った。
「いや、いい。勝負はまた今度」
水無瀬先輩は突然椅子から立ち上がる。
「あら、いいの? また国士無双でも作ればいいじゃない?」
「あなた、本当に嫌い」
スタスタ部屋の外へ行く水無瀬先輩。
俺達青春同好会メンバーは追いかける。
「そうそう、御形君?」
その途中、小夜鳴先輩から話しかけられる。
「後で凍里ちゃんに伝えておいてくれる?」
「何をですか?」
「勝負は一旦引き分け。体育祭でまた勝負しましょう、てね」
「……分かりました」
「ああ、楽しみにしてるって。しっかり伝えて頂戴ね」
「……ええ、どういう風に言っていたかまで、事細かに伝えます」
「ふふ、ありがと」
不敵な笑みをずっと浮かべていた小夜鳴先輩。
生徒会と青春同好会。
というより、水無瀬先輩と小夜鳴先輩。
二人の麻雀決闘は、一応引き分けで幕を閉じた。
フリテンイカサマ、一番好きです。
相手を上から下へ叩きつける感じが。
皆様も好きなゲームのイカサマはありますか?
コメントで教えてください!




