26.げ、現行犯逮捕です!
土浦から情報を逐一貰う。
水無瀬先輩と新樹先輩が逃走経路を確保。
俺と火之浦先輩が生徒会室に近づいていく。
風紀委員の巡回ルート。
風紀委員の待機ポイント。
その他捕獲されそうな要素
それらをできる限り避けながら進んでいった。
生徒会室の前に簡単にたどり着く。
あとはマスターキーで生徒会室の扉を開くだけ。
「マスターキーの複製なんて、凄いことをやってのけますね」
背後から、聞いたことのある声がした。
「ど、どうも……」
「小夜鳴るるじゃない!」
「や。今日も元気ね、リーダーさん」
保健委員長、小夜鳴るるの姿があった。
どうして目の前に小夜鳴先輩がいるのか。
「なんてことを考えているのでしょう?」
クスクス笑う。
その姿。
まさに、敵の女幹部みたいだ。
いや、敵は俺達青春同好会の方か。
あっちは正義の味方だわ。
「まだ侵入してないわよ!」
「そうね。今日はまだ不法侵入してないわね」
「それって、まだ無実ってことですか?」
「そうね、確かにそうなるわ」
「じゃあ、今回は失敗ね! 伊久留、帰りましょう!」
「で、今回は別件なんだけどね」
小夜鳴先輩はそう言って、スマホを取り出して電話を始める。
「武見君。待機している風紀委員をこちらへ」
「まだ未遂ですよ?」
「別件よ」
数十秒で風紀委員の腕章をつけた生徒がやってきた。
風紀委員だ。
「昨日、かしら。風紀委員があることを発見したの?」
「あること?」
「何かしら?」
昨日か、昨日。
そういえば、屋上に侵入したな。
楽しかった。
「ちょっと待て、小夜鳴」
「あれ、武見君来たんだ」
「御形は知らないことばかりだろうから、少しレクチャーしてやろうかとな」
ちょっと遅れて、武見先輩も現着。
「反省室に入るための条件をここでしっかり教えておこう」
「あ、はい」
入るためって、反省室なんかに入りたがる奴なんていないだろ。
「私がやるから大丈夫よ!」
「反省室は風紀委員が管理している。反省内容については、生徒会と一緒に考えるのだが」
「火之浦先輩は無視なんですね……」
「校則違反だったり他人に迷惑をかけていたり、そういった情報を風紀委員が手に入れた時点で対象は反省室行きが確定する。もちろん証拠は揃える。証拠がなければ、それもできない」
「じゃあ、密室殺人は反省室行きじゃないということですか?」
「その例えはどうかと思うが、それで合ってる。うん、あってる、よな?」
「今度やりましょう、密室殺人!」
「……君のリーダー、本当に大丈夫なのか?」
「いや、俺より武見先輩の方が付き合い長いですって」
「んん、そして同じ罪、というか、えと、同じ内容で反省室対象になる猶予は一日だけだ。一日というと曖昧だから、24時間だな。風紀委員が情報と証拠を入手してから、になるかな。そして今現在風紀委員が手に入れている情報というのが、これだな」
武見先輩はポケットからスマホを取り出す。
画面には、一枚の写真を表示されている。
「昨日、見回り最後の風紀委員から連絡があってな。屋上の鍵が閉まっていなかったらしい。ちょっと調べさせてもらった。で、みつけたのがこれだな」
その写真に写っていたのは、二人。
何やらしゃがんで扉を開けようとしているように見える。
扉のドアノブを二人で何か弄っているようだが。
そういえばここの写真はどこなんだろう?
教室の扉は横開きタイプだから、ドアノブはなかったように思えるが。
ん?
「私達ね!」
「ですね」
その写真は、俺と火之浦先輩だ。
昨日、屋上の扉を開けようとしているところの写真。
「屋上は先生の許可がないと立ち入ることはできない。鍵は厳重に保管されている。先生達に確認を取ったが、鍵を盗まれた形跡はないそうだ。では、どうやってこの扉を開けることができるのか」
「去年の生徒会は学園内での奉仕活動で清掃を行ったことがあるそうよ。その時使われたのがマスターキー。使用していたのは、当時の生徒会長。で、その時の参加者名簿に火之浦美琴という名前があったのよ、不思議ねー」
「監視カメラの向きで顔は見えないが、屋上の鍵を使用せずに屋上に入れるやつの目星はつけれた。あとは色々と調べれば、この屋上不法侵入の犯人が絞られるんだ」
「風紀委員ってすごいんですね……」
「そうだ。だから、もうこれ以上騒ぎを起こすなよ」
ポン、と肩を叩かれた。
「屋上への不法侵入で、反省室行きだ。馬鹿二人」
生徒会相手は、色々と青春しやすいですね。
リアクションが、少しずつ増えています。
とてもありがたい、感謝感謝です。
今後とも、反応をいただけると幸いです。




