22.御形伊久留は、青春同好会の一員なのか?
途中でギブアップして、新樹先輩と交代しました。
「御形君はだらしないですね~」
というわけで、青春同好会一同ファミレスに到着というわけだ。
「さあ、まずは食べるものを選びましょう!」
各々メニュー表とにらめっこを始める。
俺は夕食は家で食べたい派だ。
ファミレスで頼むのはドリンクバーぐらいでいい。
ほかのメンバーはあーだこーだ言い合いっている。
頼むものを決めることだけなのに。
なんだか楽しそうであった。
「じゃあ、じゃんけんよ!」
唐突に始まる、じゃんけん大会。
「ドリンクバー、誰がやるかじゃんけん!」
恒例行事なのか。
他のメンバーのやる気は満々であった。
「「「「 じゃーんけーん 」」」」
負けた。
全員分のドリンクを配分までしっかりメモ。
ドリンクバーのコーナーへ向かう。
丁寧にお盆に置いて、テーブル席まで持っていく。
「さあ、今日何やるか決めましょうか!」
ようやく、青春同好会の会議が始まる。
「と、その前にちょっといいか」
火之浦先輩の熱意を遮るように。
俺はコップを持っていない方の手を挙げた。
「俺、まだ青春同好会に正式に入っているわけではないよな?」
火之浦先輩の表情が、一気に曇った。
「あの時、ボートの上で青春同好会の一員だって言ったじゃない!」
「い、いやあ、そう言ったかなぁ……」
「言ったわよ!」
「でも、リーダー。別にその時の音声録音してたわけじゃないでしょ?」
「してないわ!」
「じゃあ、まだ正式に、なんて本人の口から言われたら反論できない」
「そもそも、同好会ってどうしたらメンバーになるんですか?」
部活だったら、入部届を出す。
なんて話だと思うけど。
「同好会は、学校側から認可されていない組織だから、やり方は同好会それぞれ」
「よくあるのは、代表者が作った書類に名前を書く、とかですかね~」
「同好会内でメンバーをある程度管理できればいいから。
学校側からの支援がないだけで、結構大きめの活動をしている同好会だってある。
そういう人達は人数管理きちんとしてる」
「青春同好会は?」
「私たちがそんな真面目な同好会だと思う?」
思わない。
「失礼ね! どの同好会よりも真面目に活動しているわ!」
「そもそも、同好会創設したのは萌揺以外の三人。
萌揺も創設当時からの仲だから、御形みたいなちゃんとした新人は初めて。
そもそもそういう相手の対応について何も決めてないから」
「結構穴だらけじゃないですか?」
「リーダーの新人勧誘が成功するなんて可能性、まったく考えてなかったから」
「本当にイレギュラーなんですね、御形君は~」
なんか褒められているのか貶されているのか分からん。
それに、青春同好会がやっていた勧誘方法は成功していない。
たまたま生徒会に突撃してきた青春同好会と鉢合わせてしまった。
そこから流れでこうなってるだけ。
「でも、御形、青春同好会に入るんでしょ?」
「え?」
「今全員の前で言えば、もう同好会の一員」
「いいですね~、男手が増えるとやれることが増えますから~」
「んん……」
別に青春同好会に入ることはやぶさかではない。
でも、初衣ねえのことを考えると、ちょっとだけ躊躇してしまう。
「どうしてそこで言い淀むのよ!」
「強制はいけないから、御形の意思は尊重する」
「でも、美琴ちゃんが諦めるとは思えませんけどね~」
「わ、私はこいつが同好会に入るのはんた…ぶぼぉ!」
「萌揺は少し黙ってて」
土浦は水無瀬先輩から口を封じられた。
「生徒会長のことでしょ」
「まあ、そうですね」
俺が青春同好会に入ると、初衣ねえに迷惑が掛かる。
さっきから気になっていたことはそれだ。
「ま、何考えているか大体わかるから、私は口出ししない」
水無瀬先輩は、俺の意思を尊重してくれていた。
「私はどうでもいいので~」
新樹先輩は、特に関心もないらしい。
「んー! んんー!!」
土浦は、何を口にしているかどうかは分からない。
が、多分俺が同好会に入ることに反対している。
「駄目よ! 伊久留は青春同好会のメンバーなんだから」
火之浦先輩だけ。
俺を青春同好会の一員にしたいみたいだった。
「いい、伊久留? 私はあなたの意見を聞いているの!」
「俺の?」
「こういう問題があるとか、こういう病気があるとか、人にはそれぞれ個人的な事情があるのも百も承知! でもね、伊久留。それでも私はあなたの意見を聞いているの!」
「……はあ」
「青春同好会に入るために何か問題があるというのなら、私達が全力でその問題を解決してあげるわ! 例え、解決不可能な問題であってもね!」
フン、と鼻息を荒くする。
自慢げな笑みをこちらに向けてきた。
頼もしい人だな、と思う。
水無瀬先輩が。
新樹先輩が。
青春同好会の一員になった理由。
楽しいと思えることを一緒にしよう。
もし楽しくないことがあるなら、一緒に解決してあげる。
そんな頼もしすぎる言葉を言ってくれる火之浦先輩。
俺と同じで、そんな先輩に惚れてしまったのだろう。
「じゃあ、伊久留も青春同好会の一員ということでいいわね!」
「……よろしくお願いします」
火之浦先輩の姿に、俺は堕とされてしまったのだった。
「どうせもう逃げられないから、堪忍したほうがいい」
「ようこそ、青春同好会へ~」
「んんんん!!!!!!」
一名、猛烈に反対しているようだが。
正式に、俺は青春同好会の一員になったらしい。
「とりあえず、また生徒会室に忍び込みたいわね!」
早速だ。
生徒会と敵対する未来が待っている。
初衣ねえの負担になってしまうなこれは。
「はあ、はあ……結局、お姉ちゃん達は私の意見は無視!?」
ようやく解放された土浦。
今まで見たことがないぐらい顔を赤くしていた。
「萌揺、うるさいから」
「き、気絶しそうだったんだから!」
「はいはい」
「うう~、ねえねえ美琴お姉ちゃん!」
「萌揺はとりあえず勉強をしなさい!」
「い、いやだ~」
全く、騒がしい連中だこと。
<青春同好会のじゃんけん強さランキング>
1.水無瀬凍里
仕草や今までの傾向を読んで、勝つ。
心理戦もできる。
2.火之浦美琴
普通に強い。勝負の女神に愛されている。
3.新樹陽乃女
普通。可もなく、不可もなく。
4.土浦萌揺
弱い。後出汁でも負ける。
5.御形伊久留
青春同好会相手のみ、不思議な力で負ける。
やはり主人公が一番弱いね。




