20.初衣ねえ、滅茶苦茶怒ってます! ②
初衣ねえが喚き散らすこと、数分。
「あら、なにやらトラブルでも起こっているみたいね」
生徒会室に三人の委員長達が入ってくる。
武見空。
芽出結花里。
そして、小夜鳴るる。
「あら、昨日振りね。御形君。青春同好会は楽しい?」
「いえ、まだ入るとは決まってないので……」
「あら、そう? 御形君、あの子達とお似合いなんだけどね」
「るる! いっ君はぜっんぜんお似合いじゃないから!」
「ふふ。あらあら」
小夜鳴先輩はちょっと楽しそう。
「まったく。風紀委員の仕事を増やさないで欲しいものだがな」
武見先輩に嫌な顔を向けられる。
それはもう当人達に言ってあげてください。
「ご、御形さんのインタビュー記事を書きたい人が多くて、どうでしょうか?」
「……どうしてそんなことに」
「会長から放送で直接名指しで呼ばれていたのが、みんな気になっているみたいです。
それに見合う対価も支払うからって、結構皆さん本気なんですよ?
どうですか、受けてくれませんか?」
インタビュー。
本来は嬉しいことなんだろうけどな。
別に何かを成し遂げたわけじゃない。
ただ騒ぎに巻き込まれただけだ。
「これ以上人目に晒されるのは」
「なんだなんだ。鐘撞のお気に入りなのに、弱気だな。一年の頃のあいつなんか、いろんなことに何でもかんでも手を出していたけどな」
武見先輩がそんなことを言った。
初衣ねえの場合は、好感度稼ぎだったんだろうな。
生徒会長になるための。
俺にはそういう目的がない。
だから、そんなことをする必要はない。
「ほら、楽しそうなことをしているのもいいけど、体育祭の話も進めていかないとでしょ?」
「るる~。ちょっとは助けてくれたってもいいじゃなーい!」
「じゃあ、具体的にはどうすればいいの?」
「青春同好会に直談判しに行くから、あいつらの居場所を探して!」
「別に私高性能AIでもないから」
「でも、それっぽいことできるじゃん!」
引かないな~、初衣ねえ。
「おい、小夜鳴。鐘撞がこんな感じじゃ、会議も進まんぞ」
「私的には今の状況すんごく面白いから、そのままがいいんだけど」
「体育祭の会議が進まないのが問題だろ。実行委員の仕事もあるのに、これじゃ疲れちまう」
「どうせ初衣ちゃんがなんとかするわよ。彼女、やるべきことはしっかりやるし」
「その信頼はどこから来てるんだ?」
「実績よ。ね、掩ちゃん?」
「はい。ですが、今回は嫌なノイズがありますので」
「ふふ。そうね」
小夜鳴先輩と大導寺先輩の視線が同時に俺の方に向けられた。
「俺の問題ですか?」
「いえ、御形君の問題ではありませんよ、多分」
「詳しく言えば、生徒会と青春同好会の問題かしらね」
「俺にできることは?」
「いいえ、御形君は御形君の学園生活を楽しんでくれればいいわ。それがどの立場になろうとね」
「はあ」
「御形君。会長はこちらで何とかしますので、帰宅されて結構ですよ」
「初衣ねえ、暴れるかも……」
「こっちで取り押さえておくから。ほら、いきなさい」
小夜鳴先輩に背中を押されて、俺はそのまま生徒会室を後にする。
去り際、武見先輩から、
「風紀委員のお世話にはならないように」
と、忠告を受けた。
生徒会室の扉は閉められる。
生徒会室の中から、初衣ねえの叫び声が聞こえた。
だが、俺は無視してそのまま帰路についた。
話題の中心にいるはずなのに、蚊帳の外で物語を眺めている。
そんな奇妙な感覚。
「なんか寂しいな~」
存在感が、生徒会<委員会 の構図になってるなあ。
生徒会は裏方に回ることが多いから、しょうがないよね。
反省室送りを担う風紀委員が、やはり一番目立ちます。
ブクマ・リアクションなど。
読んでくださった皆様のおかげで、執筆頑張れます!
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