18.波に揺られて!
「お待たせ」
正門とは真逆の方向の海岸。
ボートを漕いで水無瀬先輩と新樹先輩がやってきた。
「あれ、萌揺は?」
「萌揺ちゃんは船酔いしたので、向こう岸に置いてきました~」
「だから、遅かったのね!」
「早く乗って」
ボートに乗り込む。
揺れる。
ボートの高さまで波が押し寄せて、中まで水がやってくる。
これ、定員大丈夫なの?
「さて、行きますよ~」
「ほら、御形。漕いで」
「ええ!?」
「力仕事は男の仕事」
水無瀬先輩にオールを渡される。
力仕事を任されてしまった。
新樹先輩と火之浦先輩は聞いたことのない歌を口ずさんでいる。
楽しそうだった。
「なんか災難だったね」
水無瀬先輩から一言。
「ま、そうですね」
一旦の肯定。
「でも、楽しそうだね」
また、一言。
「……そうですね」
そして、肯定。
「私達のリーダー、おもしろいでしょ?」
「ですね」
「これからも、リーダーをよろしく」
「……それは水無瀬先輩の役割でしょ?」
「そういう話じゃないよ」
どういう話?
と聞こうとしたら、水無瀬先輩は火之浦先輩の方へ顔を向けた。
「リーダー、御形はしっかり確保しとかないと逃げられるよ」
「それは心配ないわ! 伊久留は青春同好会のメンバーだものね!」
火之浦先輩の言葉に、他二人の顔が俺の方に向けられる。
何か言葉を求めているのか。
無言の圧力が俺に強く伸し掛かった。
「え、ああ……」
「ね、伊久留!」
そんな強い圧力を跳ね返してくれたのは、
火之浦先輩が呼ぶ、俺の名前。
「……そうですね。楽しいこと、したいですから」
「ほら、これで大丈夫でしょ!」
俺もまた、
火之浦先輩に惹かれてしまっていた。
今回のボートは、青春同好会繋がりで借りたものです。
実は青春同好会、意外と多くの繋がりを持ちます。
これもまた、火之浦美琴の魅力なんだと思います。
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