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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で雨にも風にも負けないことを誓います!

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103/106

103.ちょっとお洒落な喫茶店です!

『七夕祭に向けて、全員集合』


 朝起きると、水無瀬先輩からメッセージがきていた。

 加えて、とある場所を示す位置情報。

 

「大通りから少し離れた、裏路地にあるお店か」

「猫!」

「はい、離れないでくださいねー」


 猫を追ってどこかへ消えようとする火之浦先輩を抑える。

 市街地の大通り。

 その裏路地に入って、数分。

 三階建ての建物、その一階。

 少し古びた喫茶店。

 名前を、『喫茶レンテ』。


「この上の階はアパートになってるのか」

「毎朝コーヒー飲み放題ね!」

「お金を払えば、ですけどね」


 店の扉には、「CLOSED」の看板がぶら下げられている。

 窓から中を覗き込む。

 誰もいないようだ。

 

 俺と火之浦先輩が一番乗りみたいだ。


「水無瀬先輩が来ていないのは、意外だな」

「多分何か準備をしてるのよ!」

「準備か」

「楽しみですね~」

「わあ!?」

「陽乃女! おはよう!」


 突如、背後から新樹先輩。

 驚いて、滅茶苦茶大きな声を出してしまった。


「驚かさないでくださいよ! 店の人に迷惑じゃないですか!」

「大きな声を出したのは、御形君なので、御形君のせいだと思います~」

「伊久留、しっかりしなさい!」

「……水無瀬先輩、まだかな~」


 面倒くさいので、これ以上追及するのはやめよう。


「土浦は、一人で来るのかな」


 火之浦先輩と新樹先輩はここにいる。

 水無瀬先輩はここにはいないが、すでに自分の部屋からは出ているはず。

 

 土浦が一人でウロウロしているのは、あまり見たことがない。

 あいつ、自分の部屋から出られるのか?


「萌揺は大丈夫じゃないわ!」


 火之浦先輩は、自信満々にそう答えてくれた。


「呼びますか?」

「連れてくるのが手っ取り早いと思いますよ~、御形君が」

「え、俺が?」

「はい~」


 絶対無理。

 俺がインターホン鳴らしても、絶対出てくれない。


「とりあえず電話してみましょうよ」

「御形君が~」

「だから、俺じゃ無視されますって」


 なんで新樹先輩は俺にやらせたがるんだ。


「私が電話するわ!」


 で、火之浦先輩が電話。

 もちろん、スピーカーありだ。


『……おはよう』


 数コールで電話にでる土浦。

 絶対寝起きだと分かる声をしている。


「萌揺、メッセージ見た?」

『……なにそれしらない』

「今見ろ」

『……御形、うるさい』


 やはり俺だけ当たりが強い。

 寝起きのくせに。


『今見た……』

「じゃあ、すぐ来なさい!」

『迎えに来てよ……』

「しっかりしないとダメよ!」

『……御形のアホ』


 今のどこに、俺が貶される理由があったんだよ。


『んん……』

「なら、凍里ちゃんに迎えに行かせますよ~」

『……え?』

「じゃあ、連絡しておきますね~」

『ひ、陽乃女お姉……』


 切った。

 新樹先輩が、いきなり。


「なんか最後怯えた声が聞こえてきましたけど」

「大丈夫でしょ~」

「凍里はしっかりしてるから大丈夫よ!」

「……まあ、あいつのことだしいいか」


 土浦がどうなろうとしった話ではないしな。


 数分後、台車に乗せられた土浦とそれを引きずる水無瀬先輩到着。

 木の板に、四輪が付けられているだけの簡単な台車。

 土浦は体育座りで、顔を内側にうずめている。

 もう真っ赤っかの顔だ。


「なんかの罰ですか?」

「遅刻した罰」


 水無瀬先輩は少し呼吸が早くなっていた。


「無理してやらなくてもよかったと思うんですけど」

「恥ずかしがる萌揺は、ちょっと面白い、から」

「ええ……」


 土浦は新樹先輩に担がれて起こされた。

 直後、新樹先輩に抱き着いた。


「凍里お姉ちゃん、怖いぃッ!!!」

「よしよし~」


 まさかのギャン泣き。


「これって何なんですか?」

「よく遅刻する萌揺と凍里のお約束ね!」

「どんな約束ですか……」

「遅刻した方は絶対服従、という約束」

「土浦に圧倒的に不利な約束ですね」

「ちょ、ちょっと時間オーバーしただけなのに!」


 それを遅刻というんだよ。


「今日は人を待たせているから、遅刻は良くない」

「じゃあ、もうまずくないですか?」

「萌揺の遅刻は想定してる」


 どうやら、待ち人との集合時間とずらしているらしい。

 流石水無瀬先輩だった。

 今までの集合時間も、そんな感じなんだろうな。


「じゃ、入ろう」


 水無瀬先輩を先頭に。

 青春同好会は喫茶店に入店する。


「おはよう、水無瀬君。彼女達が君の言っていた人かな?」


 カウンターで、コーヒーカップを布で洗っているおじさん。

 ダンディな見た目で、蓄えた白の口ひげが特徴的な人。

 まさしく、喫茶店のマスター。

 そんなおじさんが、俺達全員の顔を見て軽く微笑んだ。


「私はこの喫茶店をしてる、山本と言います。まずはカウンター席に座ってもらおうかな」


 山本さんは、自分の目の前のカウンター席を指さした。

 

「コーヒーを飲めない人はいるかな?」

「一人、牛乳でお願いします」


 山本さんの計らいに、水無瀬先輩はすぐに答えを返す。


「誰ですか?」

「萌揺」

「今馬鹿にしたでしょ!」

「聞いただけです」


 俺達のしょうもない会話に、山本さんは笑ってくれた。


「話には聞いていたけど、面白い人達だね」

「ただの喧嘩ですけど」

「それも若い人達の特権、青春というやつだよ」

「青春!」

 

 山本さんの言葉に、火之浦先輩は反応する。


「青春同好会なんて、面白い同好会を作ったね」

「あなたもそう思うのね!」

「ふふ。水無瀬君から、今までの話はよく聞いたからね。君たちの話を聞いて、面白いと思わない人はいないんじゃないかな」

「本当ですか?」

「おや、君からそんな言葉を聞くなんて意外だよ。え、と、御形君だったかな?」

「え、どういう意味ですか?」

「君が一番この同好会にご執心に見えたからね」

「水無瀬先輩、何か余計なこと話しました?」

「なんで。ただしてきたことをそのまま伝えただけ」

「気にしないでくれ。ただの老人の戯言だ」


 と、全員分のコーヒー、と牛乳が各自に配られた。

 

「すぐに飲めるように、アイスにしておいたよ。どうぞ召し上がれ」

「ありがとう!」

「陽碧市で一番美味しいコーヒー」

「水無瀬君は口が上手いね」

「私は本当のことしか言わない」

「なんかすごく仲良いですね」


 水無瀬先輩は昔から、この喫茶店に通っているのだろうか。


「水無瀬君がここにやってきたのは、三日前だったかな?」

「そうだね」

「ほぼ初対面じゃないですか!」

「マスターは良い人だから」

「水無瀬君はとても良い子だからね」


 お互いがお互いに好印象みたいだ。

 

「凍里はとても凄いのよ!」


 そして、我らがリーダーも鼻が高そうだ。


「それで、この美味しいコーヒーが飲める喫茶店と七夕祭は関係があるんですか~」

「ある」

「そういうことね!」

「なるほどです~」


 水無瀬先輩の二言。

 火之浦先輩と新樹先輩は何かを理解したみたい。


「え、と……」


 俺はすぐには理解できずにいた。


「いつも飲んでる牛乳と違う……」


 土浦は貰った牛乳に興味を割かれていた。


「水無瀬君がね、七夕祭での出店を手伝ってくれると言ってくれたんだ」

「あー、そういう」

「そう。マスターは快く了承してくれた」

「水無瀬先輩が脅したんじゃないんですね。良かったです」

「はは、笑える冗談」

「つうッ!」


 水無瀬先輩に思い切り足を踏まれた。


「元々陽碧学園の行事にはよく参加していたんだ。ただ今回は出店側の規模が今までよりも大きいみたいだったからね。そんな時に水無瀬君が声をかけてくれたんだ」

「偶然ね」


 本当に?


「凍里は、とても運がいいわ!」


 火之浦先輩はまっすぐ水無瀬先輩を信じていた。


「で、七夕祭が始まるまでここで少し働かせてもらう」

「と、いうと?」

「七夕祭の出店で出すメニューを作れるようにならないといけない」

「もちろん、バイト代は出すから安心してほしい」

「やりたい!」

「面白そうですよね~」


 火之浦先輩はそういうと思ったけど。

 新樹先輩が面白そうというのは、意外だった。

 この人、個人事業してるし。


「萌揺ももちろん参加、強制」

「わ、私接客業なんて無理だよ!?」

「萌揺! これを機に、克服よ!」

「い、い、いい、嫌!」


 土浦、ちょっと考えたが、結局嫌みたいだった。


「少し前にバイトをしていた二人に手伝いをお願いしてたんだけど、彼女達も忙しいみたいでね。水無瀬君の助け舟は本当に嬉しかったよ。しかも、今は五人だからね」

「その二人はもうバイトはしてないんですか?」

「そう。留学に言ってたんだよ、二人とも。そのためのお金を稼いでいたみたいなんだ」


 留学?

 二人?


「あれ、どっかで聞いたような気がするけど……」

「個性的だし、陽碧学園でも結構有名だと思うんだけどね。面白い子達だったよ」


 頭の片隅に引っかかった何かを思い出す。

 なんか、こう、最近そんな二人と出会ったような……。


「お、噂をすればだね」


 山本さんの一声の直後、閉店中のはずの扉が開いた。


「マスター! 今日も手伝いが必要か!」

「ご機嫌麗しゅう。今日もコーヒーをいただきに上がりました」

「あ」


 頭の片隅に残っていた何かが、スッと取れた。


 双子の猪飼姉妹。

 独特な衣装を身に纏う、中二病続行中の二人。


「久しぶりね!」

「げッ!?!?」

「ど、どうして汚らわしい人達がこの神聖な場所にいるのですか!」


 今回は二人だけの登場。

 初衣ねえや大導寺先輩のように、止めてくれる人はいない。


「ぷ。来ると思った」


 きっと、偶然なんて嘘っぱち。


 水無瀬先輩はきっと、この状況になることを分かっていたんだ。

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