102.オンラインの口喧嘩です!
「よし、レベルアップっと」
夜。
自分の部屋で静かにスマホゲーム。
ミナモトノカミ。
なんだかんだ、続けているこのゲーム。
レベルは10を超えて、12。
初心者の域は脱したのかな、という印象。
ちなみに、我らがチーム「ブルースプリング」。
リーダーの火之浦先輩。
毎日しっかりやり込んでいる。
土浦は当たり前のように、やり込みにやり込みを重ねている。
水無瀬先輩と新樹先輩。
二人は必要最低限のことしかやってないみたいだった。
でも、新樹先輩の装備の見た目、豪華になっていた。
あれは課金装備だ、絶対。
「でも、通常装備ってあまりかっこよくないよな」
少しぐらいなら課金してもいいんじゃないか。
そう思えてしまうほど、見た目がチープな装備ばかりだ。
「課金、するかあ?」
お小遣いはそれなりにある。
少しぐらいの課金は問題ない。
でも、今後ずっとやることもないゲームに使うべきか。
悩む。
「ん?」
課金するかで悩んでいる最中。
俺個人にメッセージが送られてくる。
『だっさ』
送り主、【モエ-kyun!】。
土浦だ。
「失礼な奴だな、全く」
さっきまで、俺以外のメンバーは誰もログインしていなかったのに。
あいつ、ログインしてすぐメッセージ送ってきてる。
「通話アプリもあるのに、わざわざメッセージで送ってこんなっつの」
『もう少し見た目も考えた方がいいよw』
「うっざ!」
メニューのフレンド欄を見る。
ログイン中のフレンドは、どの場所にいるか確認できる。
「よし、俺がいける場所だ」
このゲームでは、各拠点になる場所へ簡単にワープできる。
一度そこへ行かないといけない縛りはある。
今回土浦は、俺がすでに向かっていた場所にいた。
考える間もなく、そこへ瞬間移動。
『なんで来るのよ』
到着した数秒後、土浦からメッセージ。
ワープ地点に土浦はいた。
豪華で端麗な装備を身に纏う、聖騎士っぽいプレイヤー。
こいつも、課金してるのか?
「課金、してるのか、と……」
ちなみに、スマホの画面が小さくて文字を打つのは難しい。
土浦は数秒でメッセージを飛ばしていたけど。
普通なら数十秒はかかる。
『課金じゃない。イベントの装備』
「そんなイベントあるのか……?」
このゲームでは、イベントがよく開催される。
初心者向けだったり、玄人向けだったり。
レベルで門前払いを食らうこともあったりする。
一応、ゲーム開始からお知らせ欄は見てはいるけど。
もしかしたら、俺が参加できないイベントのものなのかも。
「あいつ、レベルどんどん上がってるな……」
俺が始めた時は、20ぐらいだったけど。
今の土浦は32。
レベルは高くなればなるほど、必要経験値は上昇していく。
今の俺でさえ、レベル一つあげるのに結構苦労している。
なのに、なんで俺より伸び幅があるんだよ。
『その装備、攻略サイトのやつなんだろうけど、ダサいし弱いからやめた方がいいよ』
だとさ。
俺の装備は攻略サイトのものをそのまま使っている。
あいつ、攻略サイトの装備も把握しているのか?
『このゲームの仕組み複雑だから、攻略サイトも信用できない』
あれ?
ちゃんとアドバイスしてくれるんだ。
そこまで言うなら、どんな装備がいいかまで教えてほしい。
少し頼んでみようかな。
『これ以上教える気はないから』
「……メッセージ早いし、思考を先読みするのはやめろよ」
俺が頼もうとメッセージを送る途中だった。
まるで物語を進めるためのNPCみたいだ。
「手伝ってくれたっていいのにな」
フレンド欄のチーム申請。
俺が所属している『ブルースプリング』はパーティ。
他のゲームで言うギルドやクランがこれに当たる。
チームは、その場にいるプレイヤーと即席で組めるもの。
パーティ内でチームを組むと色々利点があったりするが。
まずはとりあえず申請をしてみる。
速攻拒否。
『手伝ってくれよ』
メッセージで頼んでみる。
『お姉ちゃん達以外を手伝うのは嫌』
このやろう。
一応俺達同じパーティ仲間じゃないか。
俺が強くなれば、先輩達の役割になれるのに。
『少しぐらい、手伝ってくれ』
『嫌』
『お願いします』
『嫌w』
なんで笑うんだよ。
『じゃあ、土下座モーションして』
モーション。
喜怒哀楽をプレイヤーが身体で表現する機能。
土下座モーションなんて作るなよ、制作。
メニューのモーション欄。
本当にあった、土下座。
『馬鹿みたい』
豪華絢爛な聖騎士に跪く、小汚い戦士の図の完成だった。
『でも、手伝わない』
だと思ったわ。
『ほんと、ひでえやつ』
『お姉ちゃん達を守れもしない人から言われたくない』
『先輩達とは違って優しくない人から言われたくない』
『私より反省室言ってる人から言われたくない』
『どうせすぐ疲れて捕まるような人から言われたくない』
なんて、口喧嘩が五分ぐらいは続いた気がする。
おかげで、俺もメッセージの早打ちになれてきた。
「何してんの?」
「伊久留が土下座してるわ!」
「スクショ撮っておきましょ~」
その口喧嘩の最中、なんと青春同好会全員が同時にログイン。
豪華絢爛な聖騎士に跪く、小汚い戦士。
先輩達に、俺達二人の滑稽な姿を見られてしまった。
「萌揺って、そういう趣味あったんだ」
「凍里お姉ちゃん、誤解だって!!!」




