101.七夕祭りに向けて! ②
「さあ、出店の準備よ!」
俺と火之浦先輩の七夕祭りの運営参加が決まった夜。
いつものファミレスで、青春同好会集合。
呼び出し人は、火之浦先輩。
さっきの言葉は、俺達が呼び出された理由だ。
「夏の祭りは暑いからいや」
「私のお仕事で出店がありますが、その手伝いですか~?」
「わ、私も凍里お姉ちゃんと一緒」
時刻は九時。
突然の集合に、集まる時間は遅くなった。
眠いのか、皆の反応は少し悪い。
「私達が、祭りの出店を、するの!」
「運営の手伝いはどうするんですか?」
ついさっき、初衣ねえ達と約束したばっかだけど。
「もちろん、手伝いもしっかりやるわ!」
「その上で出店もしたいと?」
「そうよ!」
「出店の内容は?」
「何も考えてないわ!」
とりあえず、屋台の出店ということだけは頭にあるみたい。
「じゃあ、内容を考えるわよ!」
「あれ、もうこの方向性ですか?」
「リーダーがこうなったら止められない。考えるしかない」
「ちなみに、私の仕事の方のお手伝いはどうですか~?」
新樹先輩が経営する、ファッションブランド『アマテラス』。
そういえば、体育祭でも出店してたよな。
「それはまた別でやるわ!」
やるんだ。
「でも、青春同好会として出店したいの!」
「なるほどです~」
「凍里お姉ちゃん、できるの?」
「…………」
「凄い言いにくそうな顔ですね」
すぐに口が開かない水無瀬先輩は珍しい。
「青春同好会で出店は無理」
数十秒後、水無瀬先輩が口を開いた。
俺もそれには同意見だ。
学園側、生徒会が俺達の活動を公式に認める訳がない。
「だから、するなら別の方法」
「青春同好会として出店できないなら、もう方法はないでしょ?」
「だから、御形はダメ」
「ほら! 凍里お姉ちゃんも同じこと思ってた!」
「土浦は黙ってろ」
それに多分、意味が違う。
「もっと考えないと、リーダーについていけなくなる」
「それは俺の仕事じゃないでしょう」
「青春同好会としてダメなら、別団体を偽ればいいわね!」
火之浦先輩がすかさず意見。
今までも何度か、この手を使ったことあったっけ?
桜の木を自作した時かな?
確かに、そのやり方しかないか。
「それもダメ」
「え、ダメなんですか?」
「どうして!」
「七夕祭りの出店の審査は厳しいと思うから」
と、水無瀬先輩の一言。
そして、土浦へ何やら指示を出し、土浦はタブレットを扱い始める。
「萌揺、見つけた?」
「ちょ、ちょっと待って……あ、あった!」
土浦のタブレットを受け取り、テーブルの真ん中へ。
全員がタブレットの画面に注目する。
「どうせリーダーは見てないだろうけど」
「なにこれ!」
「出店に関する資料」
「生徒会室で見ましたよね?」
「覚えてないわ!」
俺も詳しくは覚えてないけど。
でも、火之浦先輩はその資料があったことすら忘れていたらしい。
多分、出店という文字だけは覚えてたんだろう。
「ここ」
水無瀬先輩が指さしたのは、出店の基準。
どうやら、今回のイベント。
生徒主体というよりも、学園外の人達が主体になっているようだ。
出店の枠数はおおよそ決められている。
その中で優先されるのは、学園外からの出店希望者だ。
陽碧市で飲食店を経営している人達など。
「今までこういうイベントがあったかは分からないけど、生徒主体の団体の出店は厳しいと思う」
「陽碧市でお店を出している人達はかなり多いですからね~」
「出店だったら、飲食店以外もできますしね」
そもそも、生徒が出店できる枠が少ない。
その中で、青春同好会としてやるとなると。
やはり現実は厳しいか。
「他の団体の審査も入る以上、団体名だけで判断することはない」
「中身もしっかり吟味されるのか」
「御形の言う通り。多分、偽名でもバレる」
じゃあ、厳しいどころの話じゃない。
無理か。
「じゃ、じゃあ、陽乃女お姉ちゃんのところならいけるんじゃない?」
土浦のアイデア。
さっきも話題にあがったやつ。
「体育祭の時も出店できてたし!」
「可能性はある」
「……でも?」
「ほぼ無理」
「な、なんでえ!?」
「生徒会側も、そこまでしっかり考慮してると思う」
『アマテラス』の出店。
その条件に、青春同好会メンバーとの関わりがないことがありそう。
と、水無瀬先輩。
「体育祭の時も色々と聞かれたらしいですからね~」
体育祭の時も、そういうことがあったらしい。
「じゃ、じゃあ、無理じゃん……」
「なんでお前がそんな残念そうなんだ?」
「うるさい!」
土浦に思いっきり足を踏まれる。
「でも、大丈夫!」
そんな土浦の暗雲を晴らす、火之浦先輩の圧倒的自信。
「なんでそんな自信満々なんですか?」
「凍里が考えてくれているからよ!」
言うと思った。
「で、水無瀬先輩はどうなんですか?」
「案はあるよ」
即答。
凄いな、この人。
「下準備が凄く面倒だから、今すぐできるかどうかは言えない」
「下準備、ですか」
「そう、下準備」
「面白そうね!」
下準備、しか言ってないけど。
「私がメインでやるから、必要な時は呼ぶよ」
「あ、私も手伝いますよ~」
「そうだね。陽乃女は手伝ってほしいかも」
「わ、私は!?」
「萌揺はいらない」
『ガーン』ていう擬音が本当に聞こえてきそうだ。
それぐらい、落ち込んでいる。
土浦が必要ない、と。
となると、パソコンを使う作業ではないみたいだ。
「俺は?」
「私は!」
残されたのは、俺と火之浦先輩。
「二人は生徒会の手伝いがあるんでしょ」
「手伝いはみんな一緒にやるべきよ!」
「生徒会が許すわけないじゃん」
「ですね」
「私が説得してみせるわ!」
「で、御形はリーダーのお世話ね」
「いつもの役回りですね」
「私だけお留守番……」
七夕祭りの出店に関しては、水無瀬先輩が中心となって動いていく。
俺達、青春同好会。
七夕祭りに向けて、行動開始。




