導き(34)
晴れわたる青空の下、ランドール城の遥か上空に七つの人影が浮かんでいた。地上からは微かな点にしか見えぬほどの高さで、彼らは空中に立っているかのように佇んでいた。
その中には先ほどアルスと対面していたシュミルの姿もあった。
彼女の表情には少し疲れが見えるが、それ以上に複雑な思いが浮かんでいた。
彼女から見て左斜め前にいる若者が口を開いた。
短く刈られた鮮やかな赤銅色の髪と深紅の瞳が目を惹く、見る者に快活な印象を与えそうな男子であったが、その見た目とは裏腹にその声には皮肉な調子が混じっていた。
「どうでした、感動の対面は?」
彼は顎を僅かに引き、眉を片方上げながら、上目遣いでシュミルを見ていた。その眼差しには軽蔑の色が滲み、まるで高みから見下ろすかのような態度が感じられた。
シュミルは少年の視線を避けるように顔をそらし、いらだちを隠せない様子で返答した。
「はいはい、期待通りにはいかなかったわよ。これで満足?」
そこへ彼女の正面に立つ、片手に小鳥を乗せた成年が介入した。
月光を思わせる光を放つ銀色の髪に目を奪われがちだが、鋭さの中に穏やかさが感じられる眼差しが見る者に親しみやすさを与えるだろう。
彼はその雰囲気がそのまま感じられる穏やかな声でたしなめた。
「ユーカク、そこまでにしておけ」
ユーカクと呼ばれた少年は不満そうな表情を浮かべたが、それ以上の言葉は発しなかった。
すると、彼女からみてユーカクのさらに左隣、ユーカクよりもやや小柄な少年が冷静な声で状況を分析し始めた。
秋の森で見つかる熟した栗の実を思わせる深い茶色の髪、それが柔らかく、少し乱れた巻き毛が顔を覆うように垂れている様と、澄んだ琥珀色の大きな瞳が、少年の幼い雰囲気を強調している。
だが、その眼差しは物思いに耽るような憂いを含み、内省的な性質を感じさせるものだった。
「会えばわかるとか、見ればわかるとか、そういう何の根拠もない方法で解決はしなかったということですね」
一見ただの事実の指摘だが、そこに含まれた皮肉にシュミルは顔をしかめ、ふてくされたように返した。
「そうよ、悪い?」
成年は再び仲裁に入るように、穏やかな口調で言った。
「事態が悪化したわけではないので別によいでしょう。オナガも少し言い過ぎだ」
その場の緊張を和らげるかのように、シュミルの右斜め後ろ、彼女と顔立ちはそっくりな女性が声を上げた。彼女の髪と瞳の色は青く、それが彼女との唯一の違いだった。
「それより実際に会った時の様子を教えてあげないと」
シュミルは深呼吸をして、先ほどのアルスとの対面を思い出しながら話し始めた。
「こんな感じだったわ」
彼女の言葉に、他の六人は真剣な表情で耳を傾けた。シュミルは、アルスの反応、彼の疑問、そして自分が与えた情報について詳細に説明していったのだった。




