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5.女神とトリセツ

眩しい光が段々輝度を落とし、ようやく目を開けていても辛くなくなる。発光体の正体は想像通りだった。

やっと見ることができた女神様の姿は、透明感あふれる慈愛に満ちた面差しで思わず息をのむ。

しかしここで怯んでいては真実にたどり着けないと、勇気を振り絞って尋ねた。


「白黒さんたちのお話について伺いたいです。前世で私は──」

そこまで言ったところで、言葉をかぶせて彼女は語り始めた。


「色々とごめんなさいね。謝って済む問題ではないと分かってます。以前にお話ししたことは全てウソといっても差し支えないものでした。私のせいで貴女の命が消えることになったのは紛れもない事実です。それにも拘らず、女神としての威厳を保ちたいなどど考えてしまい、浅はかにも虚偽の理由をでっち上げました。」

「……」

「あの日、所用で地球神の所を訪ねると留守で…。ついイライラした私はその場にあった石を蹴り飛ばしていました。その石が地球世界を覗き見るための泉、通称【物見の泉】に落ち、落下してるうちに大気圏で隕石と化して貴女のいたカラオケ店に直撃したのです」

「ヤツアタリ、ヒドイナ」

「ウソツキ、ヒドイネ」


聞かない方がよかったかも。でも私にとってハッキリと真実を知って区切りをつけ、立ち止まらずに進むことも必要なのだろう。

うやむやにしていたらモヤモヤするだけだし。

さぁもう、おしまい。これで、前世に関わる話は打ち切りにしよう。長々と引きずることない。


「そうですかー、分かりました。もうこのことについてお気になさらないでください。アレは天災だったと思うことにします」

「え?」

たぶん、私に責められると思ってたんだろうな。


「では次にギフトについての説明をお願いします」


暫し逡巡した女神様は何かを吹っ切るように言葉を選ぶ。


「…はい。貴女に授けた“カミサポート”と“イセカイカラオケ”についてお話ししますね。カミサポートは、貴女がこの世界で困った時に私がサポートするつもりで贈りました。邪魔になるかもしれませんが、私の代わりに白と黒をここに置いてもらってサポート体制を整えられたらと思ってます。」

「では、イセカイカラオケについては?」

「そちらは貴女の心残りだったカラオケを思う存分楽しんでいただくために、地球神と共同で贈らせていただきましたギフトとなります。まずこのギフトの特徴はカラオケを思う存分楽しめる環境を整備するという点です。それに付随してカラオケ召喚で、コンテナがやってきます。建物の中に各社の通信カラオケを設置した状態でこちらに召喚というカタチです。」

「コンテナだと防音設備はなさそうですよね」

「ええ。なので、防音遮音の魔法を覚えてもらいます。それと召喚したカラオケコンテナはこの世界では目立つので、隠蔽の魔法も必要ですね。」


そういえばカラオケするのにお金がいるのでは?

勝手に召喚した場合、どうやってコンテナ持ち主へ使用料を支払うのかしら。

それに異世界でもカラオケするなら、著作権が気になる。

…ジャス〇ックだったっけ、どうするのかなぁ。昔、歌で聞いたことがある気がする。『~護ろう著作権』って。


「コンテナ使用料につきましては初回1ヶ月はお試し期間として、無料となってます。使用方法につきましては取扱説明書を作りましたので詳細はそちらを確認して下さい。電気の代わりのエネルギーとして魔石を使います。勿論あちらの神と協力して上手く変換できるようにしたものです。」


ものすごいキラキラ笑顔をいただきました。もしかしてこのギフト“イセカイカラオケ”って神々の一大プロジェクトと化しているいるのではないだろうか?背中にタラリと汗が流れた気がした。


「ここからのお話は重要なことなので、覚えておいてくださいね。神サービスが終了した1ヶ月後からは使用料が発生します。その使用料に著作権料が含まれます。こちらは地球神の協力の下、しかるべき所へ支払った金額が届けられます。ただ問題はこちらの世界の貨幣で支払えないことです。そのため解決策として異世界専用両替機をいつでも召喚できるようにします。一応、コンテナカラオケ使用料は1時間800円になります。諸経費がかかるので割高になってしまい申し訳ないです。」


女神様そして地球神様には色々と便宜を図ってもらったんだなぁ。しみじみと有り難みをかみしめた。


「あっ、言い忘れてましたが、カラオケは採点機能を利用してくださいね。召喚されたカラオケを使用して、出た得点は常に加算されます。なおかつ自動でポイント化され、このイセカラギフトカードに記録されていくのです。カラオケコンテナの入り口にはカードリーダーを備えますので、カードをスキャンして張り切って歌ってください」


ポイントを円に変換してくれるのか~、優しい気配りに泣きそうになる。そうか、日本でいた頃に親しんだ制度を取り入れてくれてるんだな。

でも待って…私、採点機能を一度も使ったことがなかったんだったわ。カラオケが好きだったけど、自分の歌った歌が点数化されるのが怖くて避けてた。

どうやってするのかやり方が分からない。アワアワと焦り始めた私を見て女神様は合点がいったようで、


「分かりやすい貴女専用のイセカイカラオケリモコンも特注で作成してますので安心してください」

「アンシン、マカセロー」

「アンシン、ガンバレー」


白、黒のビミョーな声援に頬が引きつった。

取りあえず頑張ろうと心の中で意気込む。

そんな心境が伝わったのかにっこりと微笑まれた。


「それでは取りあえずトリセツをお渡ししますので一読ください。分からない箇所があれば白か黒にでも。では、また来ますね」


そう告げて女神様はお帰りになったのでした。


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