4.カミサポと女神
少し遅い昼食を食べてから、皆で畑に行くことにした。
お父さんが魔法で水やりをし、お母さんと私は伸びてきた草取りをする。
そんな手分けして作業するこのひとときが心地良いなぁと思う。
町で購入してきたばかりの草刈り鎌を握って、サシュっと。
根っこが土に頑丈に絡んでいる草だけ選ぶ。
そうではない草は手でゆっくりと。根を切らないように引き抜かないといけない。
根っこを残すとまた生えてくるので慎重にしなくては。
不意に、うるさい鳴き声が聞こえてきたのでその音の主を探すと、どうやら近くを流れる川付近から聞こえてくるようだった。
何かが泳いでる、いや違うな。水浴びしてるのか。近づいていくと白いカラスと、黒い子猫がいた。
カーカー、ミーミー、鳴いてて迷惑だなぁ。非常に騒がしいです。
ひぃ~目が合った気がするけど、スルーしたい。
何だか間合いを詰めてきてるし。よし、逃げよう。
本能に従って、すぐ逃げなくては!
「ごめんお母さん、ちょっとお家に戻るね」
「気をつけて帰るのよ」
「分かってるから、大丈夫!」
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ダッシュで自宅へ逃走しながら、チラリ振り返るとやっぱり付いてきていた。
何本か植わってる林檎の木の陰に身を隠しながら移動して、コッチの様子を窺ってるから怖いよ~。
家まで付いてくるつもりだったら、どうしよう。
ペット希望っていう訳でもないとだろうけど、ウチは飼えないと思うし。
そんな感じでうだうだと思考を巡らせていたら、不意に気配が消えたので安心して家の中へ。
手を洗って自室に入ったら、例のアレとアレがいることに気付く。
先回りして屋内で待ってるとは背中がゾクリとした。
もちろん私は絶対に、お行儀の良い子たちね~!なんて言わないよ。
「カー、サポ、キタ」
「ミー、サポ、キタ」
まさか、カミサポって…。カーとミーのサポって意味だったのかしら。
神のサポートじゃなかったんだわ。は、恥ずかしすぎる。
勝手に思い込んでた私がワルいのか、しょぼーん。
カーとミーはそれぞれ開けっぱなしになってた窓の枠と机の上にいる。
「トリセツ、ワタスネ」
「ギフト、カラオケ、イミ、オシエル」
やっぱりトリが説明するから、トリセツとかいうオチじゃないかと疑心暗鬼になってきた。
でもここはしっかり聞かなくてはいけない。勇気を出して私!
「女神様は此方には来られないということですか?」
「アト、カオ、ダス、カモ?」
「カオ、ダス、ムリ、カモ」
「……」
え、よく分からない回答されたわ。
「カミサマ、ウソツキネー」
「カミサマ、バツガ、ワルイネ」
「カイゴウ、シテナイヨ」
「ケンカ、シテナイネ」
何か変だ、私の前世の最期には秘密が隠されてるらしい。
これは女神様を問いだたさなくてはならない案件ですよね、絶対に。
「アー、バラシタノ、バレタ」
「アー、バラシタノ、オコッテル」
「クルネ、ヤバイヨー」
「クルヨ、ヤバイネー」
全く危機感が感じられない会話だわ。
でも印象とは裏腹に、カーとミーが互いに視線を合わせる。そしておもむろにその場から逃げようとした。
その途端、空間を切り裂くように稲光っぽい何かがが走る。差し迫るような緊張感に息が詰まって咳き込んだ。
屋内に雷は発生しないから別物なのは分かってるけど、呆然と立ち尽くしてしまう。
はっと我に返るとカーとミーが発光物体的な何かに捕まっていた。
『余分なことをしゃべってないで、白、黒、ちゃんと仕事しなさい!』
えー。彼らの名前って、カーとミーじゃなかったの?
私、今日は冴えてるわって自分で自分を褒めてたのに。