2.女神の神殿へ
ふかふかなお布団の感触と、甘い優しい香りに包まれてる。
柔らかな日差しが身体にあたって幸せな気持ちがわき出てくるなぁ。
このままずっと惰眠をむさぼっていたい。すぅすぅ~。うみゅ~。
「ルナちゃん、起きて! 神殿に行く時間よ~」
「うぅ~ん。もうちょっと…」
バサリとお布団をはぎ取られて身震いがした。
そうだ!昨日、お母さんに言われてた気がする。
『明日は神殿に行って、神様に祈りを捧げる儀式をする』って。
ところで『頑張って祈るとご褒美に神様から素敵なギフトを頂ける』って話を昔から聞くけど、ホントなのかな? 怪しさ満載なんですが…。
誕生日に神殿で祈るって何だかフラグが立ちそう。
ん?フラグって何だろう。 まぁ、いいか。
私の名前はルナ。
両親は元冒険者で今は農家。そんな2人の娘として生まれたの。
そして今日は誕生日で、10才になりました。パチパチパチ。
自分でテンション上げてみたけど、実のところ神殿に行くのは楽しみでいて怖いです。
どんなギフトをいただけるのか。ものすごく変なものだったらどうしよう。
これは本当に悩ましい問題です。
良いものがほしいなんてあつかましいことを考えてるとは思うけどね。
普段着の服よりもワンランク上のオシャレな服を着て、大きな姿見の前でくるり。
に、似合わない気がする。お母さんに相談した方がいいかなぁ。
「お母さん、この服はどうかな?」
「あら、素敵ね~。ルナに似合ってるわよ」
取りあえず合格点をもらえて、ホッとする。
神殿は少し離れたムティールアナという町にあるので、馬車で移動することに。
手早くお母さんの用意した朝食を食べなくちゃ。焦っちゃうです。
自家製パンをもぐもぐ。野菜たっぷりのスープといっしょにゴックン。
さぁ、これから出発。ドキドキが止まらないです。
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道中何ごともなく、ムティールアナの町に着いた。
雲ひとつない青空が広がっていて、ピーという野鳥のさえずりが聞こえた。
町の入り口には木製の門があって、槍を持った人が立っていた。
門番さんなのだろう。お父さんが彼に話しかける。
「神殿へ祝福儀式をしにきたのですが…」
「身分証はありますか? 例えば、冒険者カードとかです。
なければ犯罪歴確認しなくてはいけないので、ここに手をかざしてください」
元とはいえ、まだ冒険者資格があるらしく、両親は冒険者カードを見せていた。
私はというと、冒険者カードを持っていないため、確認作業が必要になる。
正直面倒だななんて思ってしまう。犯罪者を町に入れないための作業に不満を持つなんてダメだな。のんびりしてたら門番さんの仕事の邪魔しちゃうことになる。
ふー、心を落ち着けて深呼吸し、確認用の魔道具に手を伸ばす。
「こんな感じでいいですか?」
魔道具は、レンガを横に2つ並べたくらいの大きさかな?
いや、大人の手のひらより大きいサイズの黒い石版みたいな物で、手をかざすと青く光った。
もし悪いことをしてる人だと、赤く光るんだって。
どういう仕組みなんだろうか。分解して詳細に調べてみたいなぁ。ダメだろうけど。
「あーはい、娘さんも大丈夫ですね。では入町料として1人銀貨1枚必要です」
想像以上の出費だなぁと思いながら、お父さんに促されて門番さんに銀貨を3枚渡した。
そしてゆっくりと町の中に進み、神殿を目指していく。
広場を通り抜けて進んだ先に、つるバラが壁をおおうように生えてる建物が見えてきた。
厳かな雰囲気に圧倒されながら、建物の横にあった馬繋場に馬車を預ける。
外にいた修道女の方に儀式を受けに来たと伝えると、神殿内に案内してくれた。
この世界では貨幣価値は大体、日本円に換算すると
銅貨:100円
銀貨:1000円
金貨:1万円
白金貨:10万円
と、なっています。