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20,苦手だろうがやる時はやる

※ちょっとグロい?表現が出てきます。虫系苦手な方は、「餌?」の後から***まで、飛ばしてください^^;

 昼になり、馬車は街道脇のポッカリ開いた場所で馬車を止めた。

 街道沿いにはこうしたポイントが幾つもあり、旅人の休憩ポイントとなっているらしい。


 冒険者らしい幾つかの集団が、既に焚火を囲んでいるのが見える。


「先に川に行きましょう。上手く釣れたら昼飯に魚が食べられますよ」


「頑張ります!」


 ハーツはファウリを連れて、川の畔へやってきた。


「釣り竿は自分で用意するんですよね?」


「といっても、木の枝に糸を括りつけるだけなんですが」


 ファウリはきょろきょろ見渡すと、自分の背丈ほどの木の枝を一本引きずってきた。

 慣れた手つきで枝を落とす。小さく、えい、えいと掛け声をかけているのが可愛らしい。


「出来ました!」


 ドヤっと胸を張るファウリに、ハーツは笑いながら「良くできました」と頭を撫でる。


 川べりに並んで座り、ファウリは枝の先に釣り用の糸を括りつけ、同じように糸の先に針を括りつけた。


「出来ました!」


「残念、餌がないです」


「餌?」


 きょとん、とファウリが首を傾げる。


「餌がないと、魚が食いつきませんね。ちょっと待ってください」


 ハーツは少し森に分け入ると、しゃがんで地面を掘っている。

 やがて手に何かを持って来た。


「何ですか?」


「これです」


 ぱ、っと手を開いたハーツの手の中には、丸々と太ったミミズがいた。

 ウネウネと絡まり合う数匹のミミズはグロテスクだ。


 ひぇ、っとファウリが硬直する。


「これをこうして……」


 ハーツは一匹ミミズを摘まむと、針の先にミミズを刺した。


「はい、これで完成です。さ、ファウリ様もやってみて?」


 にこにことミミズを差し出すハーツの笑みはわざとらしい。

 絶対にわざとだ。


 だが、これにめげるファウリでは無かった。


「……やります!」

 

 え。やるの?

 呆気にとられるハーツを他所に、一度ぎゅっと目を閉じたファウリは、スンっと表情を消し、死んだような目でヒョィ、とミミズを摘まみ、すぅ、はぁ、と息を整え、針にぐっとミミズを押し付けた。


 流石に気持ちが悪いのか、段々顔が遠のいていく。顔を背け、片目だけ薄く開け、必死に耐える。

 いーー、というように口が横に広がった。


「で……でき、ました」


 気持ち悪さと恐怖からか、顔色が悪い。手もぷるぷると震えている。


「……す……凄いです。頑張りました。えらいです」


 ハーツは思わずパチパチと小さく拍手をし、ファウリの勇気を称賛した。


***


「あぁ~~……」


 魚は、聖女効果なのか寄ってくる。

 寄っては来るが、餌には中々食いつかない。

 食いついた、と思ったら、引くのが早すぎたのか、餌だけ取られてしまった。


「難しいですね」


 ひぇぇ、っと相変わらずビビりながら、ファウリが針に餌を付ける。


「そうですね、中々釣れないのが楽しいんですが。しっかり餌に食いつくのを待ってから引いて下さい」


「やってみます」


 えい、っと竿を振り、針の先をガン見する。


 透き通った川の水は、浮きなど無くとも、針に近づく魚の姿も良く見える。


 「ぁ……」


 一匹の魚が、つんつんとファウリの餌に近づいてきた。つんつんと餌をついばんでいるようだ。


「まだですよ。まだ我慢。我慢です」


 小声でハーツがファウリに声を掛ける。ファウリは返事を声には出さず、こくこくと頷いた。


 やがて、魚が餌に食いつき、逃げようと暴れ出す。


「今です!」


「てやっ!」


 ファウリがぐぃーっと竿を引くと、ぽぉんっと糸に引かれ、魚が宙を舞う。

 ぽすんと地面に落ちれば、ビチビチと跳ねた。


「やった、やりましたぁー!」


「やりましたね!!」


***


 馬車を止めていたポイントへと戻ってくると、カラフルにペイントされた馬車の前に、五人程の男女が焚火を囲んでいた。賑やかな笑い声が響いて来る。


「――おや」


「やぁ」


 ファウリ達に気が付いた大きな腹をした男が、ファウリ達へ視線を向ける。

 ハーツが気さくな感じで片手をあげ、男の方に近づいて行った。

 ファウリもそれに倣う。


「どちらから?」


「王都からです。これからティアナグ=ノールに向かうところで。そちらは?」


「ははは、我々はこれから王都に向かうところです」


「宜しければご一緒させて頂いても?」


「ええ、構いませんよ」


聞けば、彼らは旅の芸人一座らしい。


「私は一座の団長、マイヤーです。こっちは息子のトォニィ、楽師です。こちらの美女はトォニィの嫁のジゼラ、舞姫です。それから長女の歌姫のメリッサ、次男の軽業師のショーン」


 家族だった。


「俺はハーツ。彼女はファウリ。ティアナグ=ノールに親戚が居てね。会いに行くところなんだ」


 そういう設定らしい。


 会釈をしたり、ちょんとスカートを摘まみ腰を落とす彼らに、ファウリもペコリと頭を下げた。


「ファウリです。お邪魔します」


ご閲覧・ブクマ・いいね、評価、有難うございます!


次は20時くらい、更新予定です!


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