プロローグ
争いが繰り返されるこの世では、三つに分かれた天王帝国てんおうていこく、竜英国りゅうえいこく、獣領国けものりょうこくが人種差別で長年争ってきた。
天王帝国は人間、竜英国は竜の力を体に宿した者達が集まり、複雑に血が混ざった種族は獣領国と分けた。
この世界では、様々な人種と魔術が存在し、魔法は昔から善悪に関係なく人の心を惑わす技だと言われていた。
人間とは何か。
そう質問されたら貴方は何と答えますか?
私には、時として悪魔にもなり、時として天使にも見える。
これは全てを失った私、ミズハ・ローウィンの率直的な意見だ。
濁った空に、大地はより不気味さが増して、残酷な景色が広がっていた。
「ーー分かってた。この世界は非道だと。」
死体で溢れかえった荒地で、天王帝国の軍服をまとった私はそう吐き捨てた。
冷めた瞳が空の色を写し、刻々と歪んでいく。
握っている白い一本の刀からは、もう何人斬ったのかも分からない程、血で汚れていた。
地面にポタリと落ちる混ざった血は後を絶たないのだ。
どんなに綺麗ごとを並べても、この世界では弱者が述べる言葉に過ぎなかったのだ。
私は深く思い知った。あの女が言った通りだ。素直に受け入れた方が良かったのだ。
今思えば全て見透かされていたのかも知れない。
この世界に可能性を求める愚かさをーー。