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45話 決壊
妹が笑顔で手を振っている。
クレヨンで汚れたページが見える。
破れたページを持ちながら手を振っている。
脳が動揺に支配され、判断は沈黙する。
そして、声を荒げていることに気付く。
我に帰るも、もう遅く、
悲鳴のような泣声が、狭い空間に反響した。
動揺が、
恐怖が、
後悔が、
罪悪感が、
心臓を握り締める。
ピンと張った緊張の糸は切れ、
咎める両親の声が頭蓋を満たすも、
凍てついたように口が動かない。
混沌に潰された心は、身体を、
霧雨の中へと進ませた。