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30話 変転
霧雨の中を歩いている。
濡れてはならないものを庇い、濡れながら歩いている。
結局、何も変わらなかったのだ。
「出ていけ」という言葉も、
驚いたような表情も、
脳裏に張り付いて剥がれない。
とにかく、謝らなければ。
何にという問いの、答えを探して歩く。
後ろから足音がするたびに、背筋が凍りつく。
恐怖が追い付いてこないことを知り、安堵する。
無意味なことを何度も繰り返す。
濡れた衣服が、身体に張り付いている。
身体の芯が凍りつくのは、雨のせいだろうか。
このまま歩いて、辿り着けるのだろうか。
もし、辿り着けないのなら、
いてもいなくても、変わらないのなら、
いっそのこと、
この雨に溶けて、消えてしまえれば。