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15話 不和
「ごめんなさい」と、
謝ると、先生は驚いた表情を見せた。
ひどい罪悪感に、打ちのめされている。
ぼう、という瓦斯を燃やす音だけが、
空気を揺らしていた。
ストーブの発する熱が、凍ったような身体を溶かしていく。
狼狽えることも、
こちらを構うこともしない先生の態度が、
ひどくありがたかった。
ずっとここに居たい。
帰りたくない。
やがて扉は開かれ、
迎えが来たことを告げられる。
先生に手を引かれ、つめたい廊下を歩く。
行きたくない。
行きたくない。
また、あんな思いをするのか。
下駄箱が並ぶ薄汚れた昇降口に、
コンクリートの校舎が口を開けたような空間に、
ずぶ濡れの男が立っている。