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第7話:魔法の書

 意識は朧。

 体は錆び付いた機械のようにぎこちないが、それでも動く。確かに動いている。


 赤に近いオレンジ一色の視界を変えるため、ゆっくりと瞼を開き世界を確認する。

 シミだらけの天井、小汚い布団、小さな空間、手の下にある魔法の書。

 やはりもう、こっちが()()のようだ。


 私は無意識にホッとした後、手の下にあった魔法の書を自分の寝相の良さに感謝しながら開く。

 すると白紙であった1ページ目には何やら目次のようなものが記されていた。

 どうやら睡眠中でも魔法に気づくことができるらしい。今思えば少しその瞬間を味わってみたかったと少し後悔。


 目次には、「魔法について」の下にずらっと魔法の名であろうカタカナが記されており、それは5ページまで続いていた。

 ファイア、サンダー、俺が食らったハクスもあるな。


 あぁ、あぁ。

 手が震える。


 心臓が胸部を突き破りそうなほど、強く、跳ね上がる。

 魔法、魔法なのだ。

 私もついに魔法を使える時が来たのだ。


 あぁ、おそろしい。しかし、口角が上がるのを止められない。

 とんでもない世界に来てしまったものだ。あぁ! なんということだろうか!


 いかんな。はしゃぐ姿はまるでジャリだ。落ち着こう。

 胸に手を当て、深呼吸をする。うずうずする肩はどうしようもないのでそのまま。

 私はまたページをめくると、まだ目次は続いていたのだが、片側のページの異変に気付いた。


 黒一色の背景に白い文字で「特殊・危険魔法について」と書かれていた。

 これではまるで、最初の方に記されているファイアだとかサンダーが危険ではないと言った書き方だが、突っ込まないでおこう。

 なるほどやはり魔法もいろんな意味でアブナイものがあるのだろう。

 しかし、このままいろんな魔法を確認していてはいつまでたっても「魔法について」を見ることができない。後で見ることにしよう。


 私は黒いページをめくり、ようやっと「魔法について」にたどり着いた。



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 「魔法について」


 ようこそ 魔法の世界へ


 この文字が読めているということは、あなたはすでに最初の魔法が使えるようになっています。

 魔法は使い方によってはとても危険なものになりますが、用途を守れば人生をとても豊かなものにしてくれます。

 人の心を忘れず、正しい使い方を心がけましょう。


 あなたがもし悪い使い方を覚え人を傷つけるようなことがあれば、それは必ず自分の元に帰ってくるということを忘れないでください。


 以上を踏まえた上で次のページへ進んでください。

 次のページでは「魔法の発動」、そして「魔法のレベル」について説明します。


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 意外とポップな感じで説明していた。もう少し厳格に、神聖なものかと思ったのだが、そうでもないようだ。

 なんというか、……交通安全のパンフレットというか、運転免許を取る際の説明っぽい。


 まぁ、こうであったのなら魔法にもとっつきやすくなるものだろうし、若者にとってはいいのかもしれない。

 少し拍子ぬけだが、読むのが苦手な私であってもなんとか読むことはできそうだ。


 しかし、ページをめくると期待を裏切るように文字と数字の羅列。

 気が滅入るが、これはきっと基本なのだ。しっかり読むことにしよう。



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 ー魔法の発動について


 このページでは魔法の発動について説明します。


 まず魔法を発動させる際、その魔法の名前を宣言します。

 これはどれほどの魔法使いになったとしても変わりはありません。どんな魔法でも魔法名を口で唱えなければ発動しません。

 術式組込型、魔法陣等例外は存在しますが人が魔法を発動させる際、声を発することで魔法が発動します。因みに声量は関係ありません。


 魔法は基本、手のひらから発動することができます。


 例えば最初の魔法であるファイアを発動させる場合、出したい方向へ手のひらを向けると魔法はその方向に発動します。

 練習を重ねれば、瞬時に思う方向へと魔法を発動させることができるので、魔法の発動に慣れるようしっかり練習しましょう。

 逆に練習をしていない場合は、あらぬ方向に魔法を発動することがあるので焦って慣れぬ魔法を発動しないようにしましょう。


 また魔法によっては特定の箇所からのみ発動するもの、特定の人体を必要としないものもあります。その箇所についてはそれぞれの魔法ページに記載されてあります。


 ー魔法のレベルについて


 次に、魔法のレベルについて説明します。


 魔法名を唱えた際、特定の箇所から魔法が発動します。

 この時点では魔法と元となるもののみ発動するので、とても小規模です。


 この魔法の元をより大きくするものが「レベル」です。レベルを示すには魔法数字を使用します。


 魔法数字とは、魔法のレベルのみに対応した数字を表します。

 魔法名の後に魔法数字をを付け加え発動すると、そのレベルの魔法が発動されます。

 レベルをあげるごとに必要な魔力は増えていきます。

 大きな数字になりますと例えレベルの差が1しかない場合でも、必要な魔力は大幅に異なります。 


 まずは1〜10の魔法数字を覚えましょう。魔法数字は以下の通りです。


 1 → オン  2 → トウ 3 → スル 4 → フォウ 5 → フィブ

 6 → イクス 7 → セブ 8 → エト 9 → ニン 10 → テン 


 例えば3レベルのファイアを発動させたい場合、「ファイア・スル」と詠唱します。


 では次に二桁レベルの魔法数字の説明を行います。

 まず二桁目を指定し、その次に一桁目を付け足します。


 十の位はこのように表します。


 11 → テ・オン 12 → テ・トウ 13 → テ・スル…


 上記に記されているように二桁目が「1」の場合、一桁目の前に「テ・」を付け足します。


 20以降の二桁目の言葉は2〜9の頭文字となります。

 次にそれぞれの二桁の数字を記します。(Xは一桁目)


 2X → ト・〇〇 3X → ス・〇〇 4X → フォ・〇〇 5X → フィ・〇〇

 6X → イ・〇〇 7X → セ・〇〇 8X → エ・〇〇  9X → ニ・〇〇


 以上が二桁の魔法数字の説明となります。


 では次に三桁レベルの魔法数字の説明を行います。

 三桁レベルになると、とても人間一人のみでは発動することがほぼ不可能となります。


 設置型魔石、集合式魔法等での使用がほとんどとなります。


 魔法数字は最初の二つの数字しか表すことができません。

 ですので三桁からは一桁目の数字が強制的に「0」になります。

 同じように四桁になると一桁目と二桁目の数字が「0」になります。


 百の位はこのように表します。


 100 → ハン 110 → ハン・オン 120 → ハン・トウ 130 → ハン・スル…


 上記に記されているように三桁目が「1」の場合、二桁目の前に「ハン」を付け足します。

 100の場合は「ハン」のみとなります。


 次にそれぞれの三桁の数字を記します。(Xは二桁目)


 2X0 → ト・ハン・〇〇 3X0 → ス・ハン・〇〇 4X0 → フォ・ハン・〇〇 5X0 → フィ・ハン・〇〇

 6X0 → イ・ハン・〇〇 7X0 → セ・ハン・〇〇 8X0 → エ・ハン・〇〇  9X0 → ニ・ハン・〇〇


 以上が三桁の魔法数字の説明となります。

 四桁以降は別書に記されておりますので、そちらを参考にしてください。

 

 魔法数字は魔法を扱う上で不可欠の存在です。しっかりと覚えましょう。

 次のページでは「魔力」、そしてこの「魔法の書」について説明します。


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 急に勉強臭くなりやがった、非常に面倒くさい。次のページに行くことがとても億劫だ。

 しかし、しかし、……魔法が、使いたい。でも面倒くさい。


 いや、ここで挫けてはだめだ。最悪俺の食い扶持になるかもしれんのだ。真面目に行こうじゃないか。

 恐る恐るページをめくる。先ほどではないが、また文字の羅列。


 私は一旦魔法の書を閉じ、タバコに火をつける。


 あぁ、もうだるい。

 先程魔法の書を開いた時の童心はいずこへ。私ももう若くないということか。

 いやこの気怠さは、寝起きに大量の情報を頭にぶち込んだからだろう。歳のせいなどでは決してない。

 

 タバコで少し脳がシャキッとした(気がした)ところで、もう一度魔法の書を開く。

 ちらと視界に入った「アルベリ」だとか「ルーシェ」だとかそういった名前からは想像できぬ魔法一覧に誘惑されそうになりながらも、「魔力」のページを何とか開く。



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 ー魔力について


 魔法を発動させるには魔力が必要です。

 呪文を唱えても、発動できるだけの魔力がなければ発動しません。

 それでも無理に発動しようとすると、自分の体力を魔力に変え発動する場合があります。

 そうなりますと、身体に重大な被害が出ることがあるので、無理な魔法の発動は控えましょう。

 因みに発動に必要な魔力は各魔法のページに魔法の元、レベルに応じて記載されております。

 

 魔力に関しましては、適切な鍛錬により持ち前の魔力を増幅することができます。

 しかし、過度な鍛錬は体に大きな負担をかけますので、自分の体と向き合いながら鍛錬を行いましょう。

 簡単な方法としては、長時間の瞑想、精神統一がありますが、詳しくは別書に記されておりますので、そちらを参考にしてください。


 魔力は体力と一緒で睡眠や休息で回復しますが、体力よりも回復が遅いです。

 しかし、魔力は「魔石」によって回復することができます。

 「魔石」とは魔力を宿した鉱物のことです。限りはありますが、魔石を強く握ると、魔力が時間をかけて回復します。

 魔石の質が良ければ良い程蓄えられている魔力は多いのですが、その分高価なものとなります。


 持ち前の魔力が増えるたびに、使える魔法が増えていきます。

 基準としては一度発動しても2割ほど魔力が残る場合、魔法を唱えるのに十分な魔力を備えていると書が判断し、魔法の書に記されます。


 また自分の魔法の書に記されていない魔法を唱えることは理論上可能ですが、魔力が足りていない場合が多く危険ですので絶対にやめましょう。

 自分が知らない魔法を見たときは、その魔法が書に記されるよう焦らずにしっかりと魔力の鍛錬を行いましょう。 


 詳しくは次のページの「魔法の書について」に記されています。


 ー魔法の書について

 

 このページでは、あなたが今手にしている「魔法の書」について説明します。


 この魔法の書には「魔法能力発揮」の他に、「持ち主の使える魔法を自動記載する」魔法がかかっています。

 今あなたがこれを読んでいるということは、まだ魔法について触れたばかりでしょう。

 ですので記載されている魔法も「ファイア」のみとなっているかと思いますが、気にすることはありません。

 持ち前の魔力が増えれば増えるほど魔法は自動で記載されます。

 逆に言うのなら記載されていない魔法は発動するにはまだ魔力が十分にないということになります。(目次にも記載されません)

 

 因みに持ち主の手から離れますと、魔法の書は白紙に戻ります。

 しかしあなたはすでに魔力を発揮されておりますので、次この魔法の書を手にすると文字はすぐにでも浮かび上がりますのでご安心ください。


 また他の人が手にしている間のみ、その人の使える魔法を閲覧することが可能です。


 魔法の書に新たな魔法が記載されるタイミングは、あなたがその魔法を扱うに値する魔力を保有した時です。

 知らせ等ございませんので、日々魔法の書を確認するようにしましょう。


 以上で「魔法について」項目を終了します。

 次のページから各魔法の説明に入ります。


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 うーむ。何とか読み終わった。読み終わったは読み終わったのだが、これがどれほど頭に入っているか問われた場合、私はとても困ってしまう。

 いやそれにしてもいかんな。たかだか最初の数ページ読んだくらいで疲れてしまう。もう先ほどの魔法数字も曖昧だ。

 確か1がオンで2が、……トウか。自分は思ったよりも物が読めんようだ。

 

 これは少し、気合を入れての勉強が必要だ。

 まぁ魔法が使えるのだ、多少の時間を費やすくらいなんということはない。

 

 先ほどつけていたタバコは、気づけば火が消えていた。

 地面に落ちた灰を踏み崩し、とりあえず私は本を閉じ、もう一度タバコに火をつける。

 寝起きの頭をもう少しだけシャキッとさせなくては勉強なんてやっていられない。

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