84 気まずい日曜日
日曜日の朝です。リビングで富永氏と向かい合っていますけど、すんごく気まずいです。
今朝も富永氏はかいがいしく私のお世話をしてくれました。もう、熱は下がったから大丈夫だと言っても、そばから離れようとしないんですよ。朝食の支度や片づけを、私が手を出そうとしてもやらせてくれないんです。
「病み上がりなんだからおとなしくしていろ」と、言ってね。
片付けが終わってソファーに並んで座り……いや、私が楽なようにもたれかからせてくれて、優しく髪を撫でられていたんです。気持ちよさに目を閉じてされるがままになっていたけど、はたっと気がつきました。
金曜に、私は富永氏に告白されたことに!
流される感じでことに及びかけて、そのまま返事をしてないですよね。あろうことか、拒絶の言葉を言って、ギャン泣きをしてしまった……のよね。
なので、ちゃんと話をしようとソファーではなく、テーブルに向かい合って座ったのですけど、これもなかなか富永氏が納得してくれなかった。「ソファーでも話が出来る」だの、「隣り合って座っていたっていいだろう」だの。
やっとテーブルを挟んで向かいあったのですけど、何から話そうかと考えていたら、富永氏のほうから訊いてきました。
「それで、茉莉が会社にとっての重要人物だって、思い至ったのか」
「違います。……なんでそうなるんですか」
富永氏はニヤリと笑ってから、何でもないように続けた。
「それは、いきなり告白を無かったことにされたり、断られるのを防ぐためだな」
「えっ、と……」
私は言葉に詰まってしまった。告白をなかったことにする気はないけど、お断りをしようかどうしようかは、迷っていたから。
でも、断ると考えただけで、ジワリと涙が浮かんできた。
「おい」
富永氏は驚いたような顔をして、椅子を蹴倒して立ち上がった。テーブルを回って、そばにこようとしている。
「来ないでください」
私は両手を顔の前にあげて、ストップとジェスチャーをした。富永氏は険しい顔で立ち止まった。私はぎこちない笑顔を浮かべて、富永氏に言った。
「座ってください。お話をしておきたいことがあるのです」