81 告白 -初キス-
「おじいちゃん?」
「そうですよ。父より年上で、祖父母のほうにより年が近かったですからね。高校生の頃に『孫の嫁になるか』とからかわれたんですよ。聞いたら私より8歳も下でした。小学生の嫁にってバカにしてますよね。ああ、でもアレクには感謝ですね。そのおかげで数カ国語が話せるようになりましたもの」
なぜか目を見開く富永氏でした。そして、ふうーと長く息を吐き出したのよ。
「これで一つの疑問は解けたわけだけど……」
そう言って、横目で私のことを見る富永氏。流し目みたいで……なんだろう、今更ながらに色気を感じてドキリとしてしまった。
「根本的な疑問は残ったが、それはまたにしよう。それよりも」
言葉を切った富永氏の手が伸びてきて、私の髪に触れてきた。毛先をつまむと弄ぶように、触りだした。私を見る眼差しも甘いものが含まれている気がする?
「逸れた話を元に戻そうか」
「元って何ですか」
「やっと口説けるって話」
ニコリと富永氏は笑った。……いや、富永氏の口元だけ見るとニコリなんだけど……、目は甘さを含んでいるけど……、でも猛禽類の獲物を見定めたような雰囲気もあるというか……。
「えーと……」
「俺じゃ駄目か」
言い淀んでいる間に真剣な目で私のことを見つめてくる富永氏。私の心臓は先ほどから早鐘のようにドキドキとして、苦しいくらいになっている。
「あの……」
「俺の隣にいろよ」
喘ぐように声を出したけど、続けて言われた言葉に思考が停止した気がした。髪を弄んでいた指が、首に触れている。
「あ……」
「好きだよ、茉莉」
言葉と共に腕を引かれて、富永氏の胸に倒れこむようにして抱きしめられた。
私も
口をついて出そうになった言葉に、息が止まりそうになる。
優しい手つきで顎を持ち上げられて、視線が合う。顔が近づいてきて唇に唇が触れてすぐに離れた。
「早く……こういう風に触れたかった」
耳元で囁かれて……私はもう何も考えられなくなっていた。ただ、縋りつくように彼の服を握りしめた。耳には煩いくらいの心臓の音しか聞こえない。
何度も啄むような口づけをされた。「茉莉、茉莉」と、合間に彼のやさしい声が聞こえてくる。息苦しさに酸素を求めて口を開けたら、狙ったように唇で塞がれて彼の舌が口内に侵入してきた。
やっと唇が離れて、荒く息を吐く私の耳に、彼の声が聞こえてきた。
「茉莉、このまま一緒に暮らそう」
と。