表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/216

81 告白 -初キス-

「おじいちゃん?」

「そうですよ。父より年上で、祖父母のほうにより年が近かったですからね。高校生の頃に『孫の嫁になるか』とからかわれたんですよ。聞いたら私より8歳も下でした。小学生の嫁にってバカにしてますよね。ああ、でもアレクには感謝ですね。そのおかげで数カ国語が話せるようになりましたもの」


 なぜか目を見開く富永氏でした。そして、ふうーと長く息を吐き出したのよ。


「これで一つの疑問は解けたわけだけど……」


 そう言って、横目で私のことを見る富永氏。流し目みたいで……なんだろう、今更ながらに色気を感じてドキリとしてしまった。


「根本的な疑問は残ったが、それはまたにしよう。それよりも」


 言葉を切った富永氏の手が伸びてきて、私の髪に触れてきた。毛先をつまむと弄ぶように、触りだした。私を見る眼差しも甘いものが含まれている気がする?


「逸れた話を元に戻そうか」

「元って何ですか」

「やっと口説けるって話」


 ニコリと富永氏は笑った。……いや、富永氏の口元だけ見るとニコリなんだけど……、目は甘さを含んでいるけど……、でも猛禽類の獲物を見定めたような雰囲気もあるというか……。


「えーと……」

「俺じゃ駄目か」


 言い淀んでいる間に真剣な目で私のことを見つめてくる富永氏。私の心臓は先ほどから早鐘のようにドキドキとして、苦しいくらいになっている。


「あの……」

「俺の隣にいろよ」


 喘ぐように声を出したけど、続けて言われた言葉に思考が停止した気がした。髪を弄んでいた指が、首に触れている。


「あ……」

「好きだよ、茉莉」


 言葉と共に腕を引かれて、富永氏の胸に倒れこむようにして抱きしめられた。


 私も


 口をついて出そうになった言葉に、息が止まりそうになる。


 優しい手つきで顎を持ち上げられて、視線が合う。顔が近づいてきて唇に唇が触れてすぐに離れた。


「早く……こういう風に触れたかった」


 耳元で囁かれて……私はもう何も考えられなくなっていた。ただ、縋りつくように彼の服を握りしめた。耳には煩いくらいの心臓の音しか聞こえない。


 何度も啄むような口づけをされた。「茉莉、茉莉」と、合間に彼のやさしい声が聞こえてくる。息苦しさに酸素を求めて口を開けたら、狙ったように唇で塞がれて彼の舌が口内に侵入してきた。


 やっと唇が離れて、荒く息を吐く私の耳に、彼の声が聞こえてきた。


「茉莉、このまま一緒に暮らそう」


 と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] おおっ! ついにやりましたか! なし崩し的な感じがしないでもありませんが、やったもん勝ちですよね! やったぜ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ