閑話 パーティー会場にて
今日俺が出席することになったパーティーは、俺が小さな頃から親交がある方の誕生日パーティーだった。もともとは親父たちだけが出席するはずだったが、彼の方に久しぶりに顔を見たいと言われて、急遽決まったものだった。
会場に着いて今日の主役や知人に挨拶をすませると、俺たちを見つけた社長や母たちが寄ってきた。こういう場なのに、早く顛末を聞きたいようだ。
簡単にうまく言ったと伝えたのに、もっと詳しくと言われてしまった。気がつくとマイクを渡されて、余興の一つとして、ゲス男のたくらみから可憐な乙女を助けて奪い去ってくるまでを、話すことになってしまった。
余計な脚色はしていないはずなのに、話を聞いたご婦人方の視線に熱いものが混ざっていた。
「いいわ~。酷い男から助け出すなんて~」
「本当ですわね。克明さん、アクションはありませんでしたの」
「皆さん、何を期待しているのかはわかりませんが、幸いにも舌戦だけで済みましたよ」
彼女はみんなから注目されて、俺の隣で恥ずかしそうにしていた。そこに飲み物のトレイを持ったスタッフがそばに来た。そして、集まった人達に新しく飲み物が配られた。
「卑劣な男からお姫様を救い出したヒーローに!」
「「カンパーイ」」
悪ノリが過ぎると思ったけど、こういう話には縁のない方々だ。それに、俺も煩わしい奴から彼女を奪えたことが嬉しくて、素直に称賛を受けて置くことにした。この時、グラスを勢いよく掲げたご婦人のグラスの中身が、彼女のドレスにかかってしまった。
「まあ、どうしましょう」
「あっ、大丈夫です。色がついていない飲み物ですから」
「いいえ、いけないわ。そうね」
「お客様、どうぞこちらのほうへ」
ご婦人が会場を見回すと、気がついたスタッフがそばに来て、彼女を連れて部屋から出て行った。そうしたら、なぜかすぐにスクリーンが用意された。
「それでは皆様、只今のお話を実際に見てみましょう!」
スクリーンに映し出されたのは、見覚えのある喫茶店。様々な角度から撮られた映像が映し出されていく。……って、おい。何台カメラを仕掛けたって? というかここで流すなんて聞いてないぞ!
親父たちを睨みつけても、みんなの視線はスクリーンへと向いている。
そして……最後の彼女の台詞を聞いて、親父たちもこらえきれずに噴き出していたのだった。