72 決戦? の、金曜日!
今日の私は装っていますよ。今までで一番フェミニンに見えているのではないでしょうか。
紺色のワンピースにアイボリーホワイトのドレープ襟ショールカラーのジャケットボレロを合わせています。ワンピースは……ノースリーブで、鎖骨が見えるもの……で、上半身は体にフィットしている感じ……です。腰から下はフレアーな感じで……えーと、透け感のある素材の……なんと言ったかしら? とにかく、それが何枚か重なっている……のだけど、足元に行くほど布が減っていくものでして……。膝の辺りから足が透けるのが恥ずかしい……。
……これは言っちゃ駄目よね。選んでくれた凛香さんや春菜さんに悪いもの。うん。
髪も編み込まれているし、お化粧も念入りにされましたよ、春菜さんに!
いやだってね、先週に今日のことを富永氏が話してしまったら、春菜さんが張り切ってしまったのよ。社長の妹で大株主の特権を使って、午後には本部長室にスタンバイして待っていたのですもの。断れないですよね。
……おっと、これは今は関係ないことでした。私は目の前に座る彼のことを見ました。
店員の方がそばに来て「ご注文は?」と聞かれて、「コーヒーを」と答えたけど、「アイスになさいますか、ホットになさいますか」の問いに答えようとしません。視線を私から外そうとしないので、私が「アイスで」と店員の方に言いました。そうしたら、なぜか咎めるような視線を向けてきたのです。……なんででしょう?
私は眉間にしわが寄りそうになるのをこらえて、ことさら殊勝な顔を作りました。彼のコーヒーが置かれて店員が下がってから、私は口を開きました。
「お呼び出しをしてしまい、すみませんでした」
ついでに頭も下げます。顔をあげると戸惑ったような表情の彼の顔が見えました。
「呼び出しだなんて、他人行儀な言い方をするなよ」
苦笑いを浮かべて言いましたけど、彼の頬は引きつっています。
……というか、他人ですよね、私達は。……こんなことを思っている時間がもったいないので、サクッと本題に入ってしまいましょう。
「そのことなのですが、私達の関係って、お付き合いをしていると言えるのでしょうか?」
「……えっ?」