7 恋人だと思っていたのは私だけ
ほとんどの女子が潰れたようで、二次会には男性ばかりだった。……というか私以外、全員男性だった。なんで私まで二次会に連れてこられたのだろう。
これはまたもや富永氏のせい。ダイニングバーを出たら、腕をがっちりホールドされたのよ。これで逃げられなくなりましたとさ。
人数も10名程度になり、お洒落なバーに移動しましたよ。何人かはおっかなびっくりお店に入りましたね。
私? もちろんこういうお店に、入ったことがありますとも。伊達に社長秘書をしていませんからね。
でも、実はさっきから少しソワソワしているんだよね。ここに入った時に、うちの会社の他の部署の人たちがいるのを、見つけたから。向こうは私達に気がつかなかったみたいなんだけどね。
トイレに行くついでに挨拶をしようかどうしようかと思ったけど、やはり気恥ずかしさから、そのままスルーしてトイレに行ったのよ。
何が気恥ずかしいって、その中に……彼氏がいるのですもの。会社内ではわからないようにしているけど、そろそろお付き合いを始めて4カ月になるのよ。
なのに、トイレを出た私は、彼らの会話を聞くことになってしまったの。
「それでー、あのお局と付き合ってどうよ」
「あー、それがさ、つまんなくてさー」
「つまらないって、マグロか?」
「いや、それ以前。固すぎて手も出したくない」
「ギャハハ」
「そんじゃ、どうすんの、お前」
「面倒臭いから、そろそろ別れようかと思う」
「おいおい。賭けはどうすんだよ」
「えーと、何だっけ?」
「付き合うだけならサルでもできんだろ。してこそ成立だって言っただろ」
「ちぇー、気が乗らねえけど、一発ブッこんでみるか」
「ギャハハ」
下品な笑い声が耳にいつまでも残ったのでした。