67 困惑の誘いメール
「えっ?」
水曜日の夕方、本部長室で仕事をしていた私は、メッセージの着信音に気がついて、携帯を開いてみた。書かれていた内容に困惑の声が出たのよ。
「どうかしたのか」
デスクで進行表を見ていた富永氏が、顔をあげて聞いてきた。私は今言うべきかどうかを考えて、口籠った。
今日は富永氏が本部長となってひと月が経った日だ。関係各所に挨拶を終え、本格的に動き出したところだった。と言っても、相変わらず営業2課の課長と兼任なので、こちらの仕事はそれほど多くないし、重要といえるものは少なかった。
それが月曜に創立50周年パーティーの責任者を、富永氏が引き継ぐことを伝えられたのよ。その引き継ぎでこの3日バタバタとしていたのね。会場など関係各所へ、責任者が変わることの連絡&あいさつ。それに駆けずり回りましたとも。
先ほど本部長室に戻ってきて、9月の末に行われるパーティーまでの、タイムスケジュール表の確認に入ったところだった。そこに来たメールだ。時間としては終業時間を過ぎているし、たまに連絡が早いからと室長からメッセージが届くことがあるから、メッセージの確認は容認されていたのよ。
「大石、もしかしてあいつからか」
私の表情から察したのか、富永氏が聞いてきた。そう、あの日から10日ぶりのメッセージだった。
「えーと……はい」
歯切れ悪く答えたら、富永氏は眉を寄せてそばに来た。
「見せろ」
了承する前に、携帯を取り上げられた。内容を見た富永氏は、少し目を瞠るようにして私のことを見てきた。
「大石の誕生日?」
「えーと、そう、なんです」
苦笑いを浮かべて答えた、私。彼からのメッセージを要約すると、『もうすぐ誕生日だろう。お祝いを二人だけでしよう』ということでした。なんで要約かは、察してください。




