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閑話 分からない思惑

 彼女の顔が見えなくなって少し残念に思ったが、それよりもと思う。


 昨日は母たちに連れられて彼女が出掛けたら、待っていたように父に彼女との様子を聞かれた。「別に何もない」と答えたら、また「不甲斐ない」だのと言ってきた。そして、不機嫌にむっつりと黙り込んでしまった。


 金曜だってそうだった。俺で遊んでいるように見せかけて、彼女の様子をみんな(・・・)が伺っていた。


 本当になんなんだ。


 彼女に何かあるのかと父に訊いててみれば、しっかりと躱されてしまった。逆に「嫌がられるようなことをして嫌われるなよ」などと、言いやがった。


 そのくせ、いま彼女が電話で話しているあれ(・・)のことは、「さっさと排除しろ!」だと。


 本当に意味が解らん。


 だがあれの情報は教えてくれた。営業4課のホープだそうだ。4課で一番成績がいいらしい。だけど、それを上が正当に評価していないと思っている節があるらしい。だから、社長秘書をしている彼女に目をつけたようだ。彼女から付き合っている彼がすごいと、社長に話すことを期待していたようだ。


 だけどな、営業4課にいる時点で、あれの能力は想像がつく。うちは課ごとに扱う商品が違う。そして1課2課が扱う商品のほうが、専門知識がいるものだ。だからといって3課から5課が扱うものが、劣っているわけではない。こちらも我が社の主力商品であるのだ。


 彼女が社長の前で奴のことを話さなかったのは、奴が付き合っていることを隠したいと言ったからだ。なのに、彼女が奴のことを社長に話す気配がないと見て、付き合うのではなかったと思ったようだ。話すなと言われたら、彼女が話すわけはないだろうに。


 賭けも同僚をわざと巻き込む形にして、しぶしぶ付き合うことにしたように見せたそうだ。


 彼女は奴に「ここだけの話」と、内緒話をするように、俺のことを告げている。俺が3カ月だけ営業2課の課長をしていることは、会社で噂になっている。そのあとどこに移動になるのかは、流れていない。それを、彼女が話している。というか、現在の実情を話させているのだ。


 彼女は本部長(・・・)付きとして俺と共に異動をし、課長の仕事との調整で忙しいと、彼女に奴に話すように指示をしておいた。あと、さりげなく俺を褒めて奴との違いを、比較するような発言をするようにとも言っておいた。自尊心のかたまりなら、出来る奴と比較させられるのは、屈辱以外のなにものでもないだろう。


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