62 寝て起きたら……抱きしめられて……-膝枕&後ろから抱え込み-
意識が覚醒して思ったこと。あれ? 私は横を向いて寝ているんだ、と。
それから、枕が固い。目を開けずに枕をさわさわと触ってみた。
ん? 今、この枕は動かなかったかしら?
目を開けて見えたものに「はえっ?」と声が出た。
「ああ、起きたか」
聞こえてきた声に、急速に意識が覚醒して私は頭をあげた。
「&#$@(いーやー)!」
言葉にならない叫びをあげましたよー!
Q で、なんで私は富永氏に抱え込まれているのでしょう?
A それは逃げようとしたから……
だって、膝枕ですよ、膝枕! 富永氏にさせてしまったんですよ。誰だって恐れ多くて逃げますよね。
立つことが出来なくて這って逃げようとしたら、「こら、どこに行くんだ」と、後ろから言われました。
「ごめんなさい。出来心だったんですー!(意味不明)」
私の叫び声に富永氏は「プッ」と噴き出し、「ほら、いいから落ち着け」と引っ張られ、気がつくとソファーの前で床に直に座った、富永氏の足の間に座らせられてしまいました。で、逃げられないように後ろから抱きしめるようにされているんです。
「なんでこの体勢なんですか?」
「大石は、顔を合わせた状態で話が出来るか?」
逆に問いかけられました。しばらく考えて……首を振りましたとも。顔を見て話しなんてできません。そうしたら「クックッ」という笑い声が聞こえてきました。
「そうだろ、そうだろ。だからな、この状態で話をしような」
いや、それも、心臓がバクバクいっているから、マジで勘弁してほしいんですけどー。
でも、心の中でいくら叫んでも、富永氏が気づいてくれるわけはないのでした。もちろん察することが出来たら、エスパーかよ! って、思っちゃいますよね。
お腹に回っていた左手が離れ、宥めるように髪を撫でてきた。
「だけど、逃げないというのなら、横に並んで座って話をしようか」
「えっと、なんで、横?」
「顔を見ないため」
疑問を口にしたら、簡潔に返されました。なのに――。
「それとも膝抱っこをしてやろうか」
「結構です!」
叫んで答えたら、富永氏に大笑いされました。「すげー、勢い」ってね。子供扱いして揶揄うのは、いい加減にしてください!