6 歓迎会にて
会場は驚いたことに少し高級な居酒屋。居酒屋ではなくてダイニングバーだったかしら。それとも、ダイニングキッチンだったかも。もう、腕をホールドされて連れてこられたから、お店の名前もちゃんと見ることが出来なかったのよ。
で、予測通りに富永氏は女性たちに取り囲まれた。どうやら社内に富永氏の噂が回ったらしくて、うちの課以外の独身女性も多数参加している。
富永氏のプロフィールは次のとおり。年齢は34歳。誕生月は9月。身長は182センチ、体重、スリーサイズは……どうでもいいか。あと、必要なのは独身だということだろう。
出世頭と目されているからか、女性たちのアピールがすごい。富永氏が不機嫌そうでも、近寄っていく根性は称賛ものだろう。
私は女性たちとは離れた隅の席で、一人料理に舌鼓を打っていた。せっかくお金を払っているのに、食べないのはもったいないものねー。
手持ちぶさたなのか、何人かの男性が話しかけてきたけど、適当に答えてあしらっておいた。……ではなく、料理がおいしいと彼らと盛り上がった。この店を選んだ幹事、グッジョブ!
時折、恨めしそうな視線が富永氏から送られてくるけど、私は知りません。
そのうちに富永氏に相手にされないことがわかった女性の何人かが、私の周りに陣取った。そして、私に了承を得ずに勝手にお酒を頼んでくれる。
……まあ、いいんだけどね。お酒を飲むのは嫌いじゃないから。
というかさ、私と同じペースで飲んでいた何人かの女子は、お開きの時には潰れてしまった。どうやら私を潰したかったみたいだ。
残った女子達、化け物を見るような目で見ないでくれないかな。あなたたちが弱いだけでしょう。