49 月曜日は……普通に始まる?
「おはようございます、本部長」
「おはよう、大石君」
今朝も一分の隙も無い着こなしの富永氏。……そういえばこの人って独り暮らしなのだから、洗濯なんかも自分でしているのよね。……あれ? アイロンはないと言っていたけど、ワイシャツは……って、そうよ。きっとクリーニングに出しているのよね。だから、毎日パリッとしているんだわ。
そんなことを考えていたら、この2週間毎日行われていた、恒例の壁ドンと顎クイをされてしまった。……もう、これっていらない行動ですよね?
なのに、富永氏はしげしげと私の顔を眺めて言った。
「これじゃあ、駄目だな」
「えー、駄目なんですか。春菜さんに教わったように、メリハリのあるナチュラルメイクにしてきたのに」
自分ではうまくできたと思ったのに、駄目だしされて少しムッとした。なのに。
「今までに比べてダントツに可愛すぎる。これじゃあ、3か月待たなくても、変化に気づかれてしまうだろう」
……ということは、もう印象が変わるということですね。確かにそれはまずいかも。特に課の女性たちは、私のことを変にライバル視しているもの。さりげなく私のことを見て、鼻で笑っているのは知っている。ここで、女性たちに気づかれて、あいつにまで伝わってしまうのは面白くない。
「そうですね。私も迂闊でした。今までのメイクに戻します」
肩を落としてそう言ったら、もう一度顎に手が掛かった。
「大石が可愛いのは俺がわかっているからな」
目を合わせて言われたけど……目じりに笑いしわが出来ていますよ。社交辞令だってわかっているけど……。
社交辞令でも、やはり可愛いと言われるのは嬉しいな。やはり私はチョロいのかもしれない。