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48 帰り際の……デコチュウ -デコチュウ-

 もう一度富永氏の部屋に戻り、服を片付けた。……おかしいな。一昨日にはシンプルな部屋だったはずが、なんで生活感が出てきたんだろう?


 今度こそ帰ろうと思ったのに、富永氏に止められた。理由は……これからの予定を立てるためだったのよね。


 基本平日は今まで通りに過ごす。週末は滝浪邸に行って、春菜さんに指導をしてもらう。あとはここに持ってきた服をどう活用するか……。


「あのスーツは秘書として夜の会合に付き合う時に合いそうだと思わないか」

「でも、社長についていた時は、あまり夜の会合に行くことはありませんでしたけど」

「……親父たちめ」


 何故か富永氏は呻き声をだした。別におかしいことでは無いよね。私の立場は社長秘書の中でも4番目で、下っ端だったもの。よく付き添ったのは海外の方がいらっしゃった時だったから、他の会社の方には秘書というより通訳だと思われていたのかもしれない。


 それを富永氏に説明したら、頭に手が伸びてきて撫でられた。……解せぬ。


 それから富永氏から厳命されたことが一つ。彼から誘われても、しばらくは誘いに乗るなということ。私もあんなことを知った後だから、しばらくは彼の顔を見たくないので、頷きましたよ。


 夕方になってしまった。「夕食を……」と言いかけた富永氏のことを睨みつけてしまった。富永氏は「あっ」と小さく言ってから「悪い」と言ってきた。


 タクシーを呼んでくれたので、下へと降りた。春菜さんの作ったパンもお土産にもらいました。「パンをくれるのですよね」と言った時の、富永氏の顔は見ものでした。それから私の好きなコーンパンを多めに袋に入れてから「ありがとう」と言ったのよ。……本当に気づいてなかったのね。


 タクシーがマンション前に止まり、私はエントランスを出てタクシーに近づいた。荷物を先に中にいれて振り返った。


「えーと、一応言っておきますね。お世話になりました」

「一応かよ。まあ、その、いろいろ悪かった」


 私がタクシーに乗り込んで座ったら、富永氏が体を中にいれてきた。顔が近づいてたなー、と思ったら、額に柔らかいものが触れて離れて行った。


「向陽町に向かってください」


 富永氏はそういうと、タクシーの外へと出た。ドアが閉まり、タクシーは走りだした。私は茫然と呟いた。


「えーと、今のは……」


 デコチュウ? 


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